第019話 苦悩
魔石が予想より早めに届いたのでアンジェラと共に加工をしていく。
そして、さらに3日が経ったのだが、部品はまだ届いていなかった。
「遅くね?」
「いや、1週間で頼んでいるんだからまだ1日ある」
遅いってことはない。
「でも、あの爺さんが早めって言ったら早めに来るっしょ」
ぶつぶつ言う偏屈の爺さんだが、仕事は完璧だし、いつも早めに持ってきてくれるのは確かだ。
「昨日、雨が降っただろ。雨宿りでもしてるんじゃないか?」
「するかな……」
「まあ、焦るなって。こっちの時間はある」
冒険者のガキ共が早めに魔石を納品してくれたおかげで魔石の加工の方はかなり進んでいる。
これなら多少、部品が遅れても十分に取り戻せる。
「まあねー……」
俺達は黙々と作業をしていき、昼食を食べる。
そして、午後からも仕事をしていくと、客が来た。
「邪魔するぞ」
来たのはジェフ爺さんだ。
「何だ? 爺さんが来たのか? 腰は大丈夫かよ」
いつもは息子のキースが来るのに。
「たまには歩かんとな。それと納品に来たんじゃない」
んー?
「注文か? それとも修理?」
「いや、違う。すまんが、頼まれていた部品が遅れそうなんじゃ」
あー、それか。
「まあ、他所の町からの輸送になるから仕方がないことではあるが、珍しいな。どうしたんだ?」
「他に注文があるし、キースに使いを頼んだんだが、帰ってこん」
それでジェフ爺さんが直々に来たのか。
「王都か?」
「ああ。片道2日じゃし、遅くとも昨日には帰ってくるはずなんじゃがな」
「昨日の雨か?」
「その可能性もある。多少の雨なら問題ないが、道がぬかるんだりすると、車輪をとられるからの」
うーん……
「冒険者ギルドか軍に捜索隊を頼んだ方が良くないか? 脅すわけじゃないが、この前、熊が出たらしいぞ」
キースは商人だから熊に遭遇したら大ピンチだ。
「わかっておる。これからギルドに向かうところじゃ。その前にお前に一言言っておこうと思ってな」
ウチは通り道だもんな。
「まあ、わかった。ウチは問題ないから早くギルドに行ってくれ。あ、送っていこうか?」
「いらんわ。また何かあったら連絡する。ではな」
ジェフ爺さんはそう言って、店を出ていった。
「キースさん、大丈夫かな?」
アンジェラが心配そうな顔で聞いてくる。
「大丈夫だろ。あそこの店が遅れるのが珍しいだけで遅れるなんてしょちゅうだ」
基本、皆、ルーズだからな。
ウチだって、適当な時間に開店し、適当な時間に店を閉める。
「まあねー……でも、どうする? 部品が来ないと作業ができないじゃん」
「それは仕方がない。アーヴィンには事情を説明するさ。まあ、単純に遅れているだけですぐに町に着いてもおかしくないから魔石の方を終わらせよう。今日で終わるだろ」
「そだね。ウチらはウチらの仕事をしよう」
俺達は仕事を再開し、魔石を加工していく。
そして、夕方にはメアリーも帰ってきて、魔石の加工が終わったので店を閉めた。
翌日、この日も朝からアンジェラと開店準備をする。
すると、勢いよく住居スペースの扉が開き、冒険者服に着替えたメアリーが出てきた。
「いえーい! 伝説を作るプリンセス・メアリーちゃんが今日も冒険に行ってきまーす!」
だっせー……
「メアリー、悪いことは言わないから他所でプリンセス・メアリーはやめとけ」
「ふっ……」
アンジェラに鼻で笑われた。
意図はわかる。
「なーに言ってんのさ、エリック。冒険者っていうのは有名になると、二つ名が付くの。でも、それは他人が決めるものだから不本意になる可能性が高いわけよ」
黒影団も死神って呼ばれてたな。
確かに不本意だった。
何しろ、敵だけじゃなく、味方からもそう呼ばれていたから。
「ふーん……それで?」
「そこで自分から名乗り、浸透させることにより、思い通りの二つ名が付くわけよ」
言いたいことはわかる。
特別暗部部隊を黒影団って名前に変えたのは俺だし。
なお、皆が苦笑いを浮かべていた。
「それでプリンセス・メアリーか?」
「そう! 可愛さとかっこよさが融合したエレガントで品のある名前」
お前に品がねーよ、貴族令嬢。
「やめとけ」
「そうよ。やめときなさい」
アンジェラも止める。
「えー、なんでー? アンジェラちゃんもおっぱいギャルって二つ名が付いたら嫌でしょ」
ひっど。
せめてセクシーにしとけ。
「付かないから安心して。もし、付いたとしても即引退だから」
俺もそれだったら引退すると思う。
「メアリー、その辺は仲間と相談しな。きっと良い名前を思いつくと思う」
カトリーナとシャーリーだったらプリンセス・メアリーよりましなのを思いつくだろう。
「あんたは快活少女よ」
それだ。
「嫌ー。それならおっぱいギャルの方が良い」
無理言うな。
お前、ないじゃん。
「メアリー、あのな……」
「ひっどい目で見んなー! 今に見てろー! セクシーメアリーになるからー!」
アホが走って、出かけていった。
「ならないと思うぞ……」
お前、10歳の頃から毎日、牛乳を飲んでいるけど、縦にも横にも成長しないだろ。
「プリンセス・メアリー、か……親子ねぇ……」
アンジェラがカウンターに肘をつきながら笑う。
「フルフェイス・マスクマンとプリンセス・メアリーはどっちが良いと思う?」
そう聞くと、アンジェラが険しい顔になった
「どっち……?」
え? そんなに悩む?
絶対にフルフェイス・マスクマンだろ。
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