第017話 順調
町中を歩いていると、当たり前だが、ひそひそされることもない。
むしろ、知り合いばかりなので向こうから声をかけてくるくらいだ。
俺は顔馴染みに挨拶をしながらギルドにやってくると、中に入る。
すると、やはり仕事に行かないガキ共がたむろっていた。
「あーん? 誰かと思ったら魔道具屋のエリックじゃねーか」
どうやらジェイク坊やは今日も休みらしい。
「あ、ホントだ。エリックだ」
「おっさーん、アンジェラを返せー」
「メアリーが毎日、毎日、朝早くからうるせーから何とかしてくれ」
悪ガキ共が楽しそうに笑っている。
「お前ら、仕事しろ」
「出たよ……」
「してるつーの」
「英気を養っているんだ」
そうか?
いつもいる気がするんだが……
「ジェイク、ちょっといいか?」
昨日の今日だが、ジェイクのもとに向かった。
「何だよ? 説教ならごめんだぜ。俺は昨日、働いたんだ」
嘘つけ。
「そんなことはどうでもいい。それよりもメアリーはどうだ?」
「メアリー? 声がでかくてうるせーよ。文句を言っても、けらけら笑うだけだしよー。何だ、あれ?」
ジェイクが呆れかえっている。
「それはいつものことだ。そうじゃなくて冒険者としてだ」
「実際に見たわけじゃないが、良いんじゃねーのか? 魔物だってちゃんとやってたみたいだし。それに魔法が使えるんだろ? じゃあ、大丈夫だろ」
適当だな。
「お前、冒険者として先輩だろ。ちゃんと見ておけ」
「親父うぜー……そんなに心配なら首輪でもつけて家に置いとけ」
「逃げるだけだ」
「犬みてーだな……」
実際、ほぼ犬だ。
「いいから見ておけ。いいな?」
「こえーから睨むなよ……まあ、メアリーに限らず、冒険者は協力するもんだからそりゃ見るが、あんたから無茶な行動をするなって言っておけよ。勝手に奥に行かれたら知らねーぞ」
「そこはちゃんと言ってある。頼むぞ」
ジェイクの肩をポンポンと叩くと、受付に向かう。
「過保護だなー」
「エリックが冒険者になれよー」
「なってもアンジェラと組むだけだろ」
「わははー」
うるせーガキ共だ。
昼間から飲むんじゃねーよ。
ひどいもんだと思いながら受付のヴィオラのもとに向かう。
「こんにちは、エリックさん。今日も森ですか?」
俺はフルフェイス・マスクマンじゃねーよ。
「森なんか行くか。依頼だ、依頼」
「おや? そうですか。何でしょう?」
その笑みがムカつく。
「Dランク以上の魔石を30だ。1週間以内な」
「1週間……大丈夫だと思いますが、急ですね」
「アーヴィンから軍の仕事をもらったんだ。そこに暇そうにしている奴らがいるから働かせろ」
親指で後ろを指差す。
「あんたが行けばいいだろー」
「というか、娘に行かしたらタダじゃね?」
「アンジェラもいるだろ」
働かない奴らだわ。
「大丈夫ですよ。彼らもちゃんと働きますから」
ヴィオラが苦笑いを浮かべる。
「頼むわ。いくらだ?」
「3万ミルドですね」
そんなもんかと思いながら依頼料を支払った。
「確かに。では、集まりましたら連絡します」
「どうも。それでウチの娘はどうだ?」
「よくやっていますよ。皆さん、ああ言ってましたが、元気で明るいので雰囲気が良くなりますね」
明るさがウチの子の最大の長所だからな。
「ふーん……そうかい。カトリーナやシャーリーに迷惑をかけてないか?」
「仲良くやってますよ。まあ、あの子は誰とでも仲良くなれますから大丈夫です。それよりもアンジェラさんに働いてほしいですね」
「真面目に働いているぞ。今も昼食を作っている」
「ついに奥さんになりましたか? 貴重な魔法使いなんですけどねー」
魔法使いの数が少ないのは確かだ。
優秀な奴は都会に行くし、そもそも冒険者である必要がない。
「ウチは魔道具屋だからな。魔法使いがありがたいのはこっちも同じなんだよ」
「まあ、エリックさんのお店が潰れたら町の死活問題ですけどね」
この町には魔道具屋がウチしかないからな。
「そういうことだ。じゃあ、頼んだぞ」
「わかりました」
用件が済んだのでジェイクの頭を叩き、ギルドを出た。
そして、家に帰ると、3人で昼食を食べる。
「メアリー、ジェフ爺さんは何て?」
「ったく……急に言いおってからに……もっと早く言わんかい。これだから若い者は……だってー」
おー、ちょっと似てたぞ。
「依頼は受けてくれるわけだな?」
「うん。届いたら持ってくるってさ」
よしよし順調だぞ。
「お前は明日はどうするんだ?」
「森に行くー。もうちょっと浅いところで慣れてから徐々に奥に行く感じかな?」
堅実だな。
問題はなさそうだ。
「午後からは遊びに行っていいぞ」
「手伝うよー。お店も大事だもん」
そうかい……
何気ない一言にちょっと来るものがあったが、平静を装った。
そして、午後からも3人で仕事をしていく。
「多分、魔石が先に来ると思うが、アンジェラはそっちの加工を優先的に頼む」
「わかったー。部品は店長がやる感じ?」
俺とアンジェラは持ち運び用コンロ作成の相談をしていた。
「ちょっと細かくてな。手伝ってもらうことになるかもしれんが、基本的には俺がやろうと思っている」
「実際のところ、納期は大丈夫なの? アーヴィンさんは30に届かなくてもいいって言ってたけど」
「多少、残業になるが、問題ないと思う。こういうのはちゃんと納品して、次に繋げるのが大事なんだ」
それが信用っていうものだし、これまでもそういうのは守ってきた。
「残業か……私もやるよ」
「いや、アンジェラは普通に帰っていいぞ」
「そういうわけにもいかないでしょ。私、副店長。バイトや手伝いじゃないんだよ?」
まあ、そうだけど……
「帰りが遅くなることもあるぞ?」
「家、すぐそこじゃん。別にいいし、最悪は泊まるよ」
さすがに帰らすし、俺もそこまで残業する気はないが……
「わかった。頼むわ」
「私はー?」
メアリーが聞いてくる。
「お前は冒険者をしとけ。魔石の依頼を出しているから頑張って採ってきてくれ」
「よーし、頑張るぞー」
頑張ってくれ。
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