第015話 大人
メアリー達に見つからないように森を抜け、町に戻ると、ギルドまでやってきた。
「アンジェラ、後は報告だけだから先に帰っててくれ」
「うん。わかった」
アンジェラはかなり機嫌が良いようで笑顔で帰っていった。
多分、今日はクッキーを焼くと思われる。
このままだと太りそうだし、やはり運動をしないとなと思いつつ、ギルドに入る。
すると、やはり騒がしかった悪ガキ共が静かになる。
このままだったらいつも通りなのだが、1人の男がこちらを見ながら立ち上がった。
そいつは周りのガキ共よりも一回りも二回りにも大きい。
ガキ大将だったジェイクだ。
朝にはいなかったが、どうやらこいつも今日は休みのようだ。
「おい、てめー、何者だ?」
昔は俺よりも小さかったジェイクが睨みながら見下ろしてくる。
「フルフェイス・マスクマンだ」
「舐めてんのか? ここはてめーみたいな怪しい野郎がいていい町じゃないんだ」
おねしょをして笑われていたジェイク坊やが立派になってまあ……
「ただの旅人だよ。格好については申し訳ない。顔が傷だらけだし、火傷も負っていてね。そっちの方が不審者だからこうしているんだ」
「嘘くせーな。王都辺りの犯罪者が流れてきたんだろ」
うーん、俺もそう思う。
「まあまあ、落ち着きなさい。長居する気はないんだ」
そう言って、ジェイクの肩を抑える。
「触んじゃ――ッ!」
ジェイクが怒って押そうとするが、押し負けて椅子に座らされた。
「ケンカは良くない」
「てめっ! くっ!」
ジェイクが立ち上がろうとするが、人差し指で頭を抑えられ、立ち上がることができない。
「そんなことよりも森で熊に襲われた。熊が人を襲うことなんか滅多にない。誰かが襲われ、逃げたんだろうが、それを報告していない者がいる」
「何ぃ?」
ジェイクが周りを睨むと、服屋の息子のトビーがそっと目を逸らした。
「トビー!」
ジェイクがトビーを睨む。
「いや、違うんだって。これから報告しようと思ったんだ」
「お前なぁ……」
「マズいだろ。アーヴィンの野郎にキレられるぞ」
トビーの言い訳を聞いた周りのガキ共が呆れた。
「トビー! 来い!」
ジェイクが俺への興味をなくしたので受付のヴィオラのもとに行く。
「フルフェイスさん、ケンカはやめてくださいね」
ヴィオラが呆れる。
「ケンカなんて起きない。それよりもさっき言った通り、熊が出たぞ」
「ええ。聞きました。トビー君はあとでギルマスから指導ですね。その熊はどうしました?」
「倒した」
「そうですか……フルフェイスさんって強かったんですね」
この言い方からして、やはりエリックと決めつけているな。
「私も旅をする冒険者だ。あの程度はな」
「はいはい。それでお仕事の方は?」
「これだな」
魔石と討伐証明、さらには束になった薬草を受付に置く。
「薬草はアンジェラさんか……」
何故わかる?
「いや、私だぞ」
「この結び方はアンジェラさん……いや、まあいいです。えーっと、合計で7500ミルドになりますけど、魔石はどうします? そちらで使っても良いですけど」
魔石は魔道具作りでも使うのだ。
「いや、売却で。魔石を持っていても使い道がないからな」
魔石なんか仕入れればいいだけだ。
「そうですか。では、7500ミルドになります」
ヴィオラが7500ミルドをカウンターに置く。
「どうも。では、私はこれで失礼する」
「お疲れ様です。また、報告感謝いたします」
ヴィオラが礼を言ってきたので手を上げると、ギルドを出る。
そして、裏道に入ると、転移を使い、家のリビングに飛んだ。
「ふう……」
腕輪のスイッチを押し、元の姿に戻ると、店の方に行く。
すると、先に帰っていたアンジェラが帳簿を確認していた。
「帰ったぞー」
「おかえり。どうだった?」
「7500ミルドになったわ。ボーナスでやる」
アンジェラに今日の成果を渡す。
「どうも。これで良いお肉でも買って、メアリーの冒険者祝いでもしましょうか」
そういやそういうのをしてなかったな。
こっちはワインまでもらったっていうのに。
「そうしてくれ。ギルドでジェイクの奴に絡まれたぞ」
「あのバカ……いや、どっちもどっちか」
変な格好をした不審者で悪いな。
「まあ、たいしたことじゃなかったな。それと熊の方はトビーだった」
「お説教ね」
「らしいぞ。しかし、皆、大きくなったなー……」
あのガキンチョだったジェイクもヴィオラも大人になっている。
俺も30歳になるわけだわ。
「そりゃそうでしょ。エリックがこの町に来てから10年だし、メアリーが成長したように子供も大人になるわよ」
「いつまでも子供な感じがする」
「どこぞのおっさんみたいなことを言わないでよ」
どこぞのおっさんと書いてアーヴィンと読むな。
「時が経つのが早いってだけだろうな」
「そういうもんじゃないの? ウチの両親も言ってたわ。でも、夢見る女の子もちょー良い女になるわけ」
ちょー良い女と書いて私。
「まあな……しかし、ジェイクに背を抜かれたのはムカつくわ」
ジェイク坊やめ。
「本音はそこなわけね……」
そこ以外にない。
その後、俺も作業を始め、2人で仕事をこなしていく。
そして、この日も客の対応をしながら魔道具を作っていった。
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