第012話 一安心かな
俺達は奇異な目で見られながらもギルドにやってきた。
「では、行くか」
「私は恥ずかしいから外で待ってるかんね」
まあ、前回は道案内でアンジェラに来てもらったという設定だし、二度目は一人でいいか。
「わかった。依頼を受けたらすぐに戻る」
「早いのはゴブリン、スライム、コボルトの討伐か、薬草の採取だから」
「助言に感謝する」
「キャラ変のスイッチが入ったし……」
呆れているアンジェラをこの場に残し、ギルドに入る。
すると、この前と同様にわいわいと騒がしいギルド内がピタッと止まったが、すぐにざわざわとさっきとは違う感じで騒ぎ出した。
どうでもいいから仕事をしろよなと思いながら受付のヴィオラのもとに向かう。
「やあ。ごきげんよう」
「ご、ごきげんよう……」
ごきげんようはやりすぎだったかな?
「今日は仕事に来た」
「森ですか?」
「そうだ」
「でしょうねー……」
ヴィオラが苦笑いを浮かべる。
「何が『でしょうね』かはわからないが、私も生活費を稼がないといけないのでね」
「そうですか。何の依頼を受けますか?」
「一応確認なんだが、どういう依頼があるんだ?」
「森の浅いところでしたら魔物の討伐、獣を狩ってくる、薬草や木の実なんかの採取ですね」
なるほど。
獣を狩るには時間がかかるし、アンジェラが言った通りが良いだろうな。
「では、魔物でも狩ってくるかな」
「かしこまりました。討伐証明は持って帰ってくださいね」
ゴブリンは耳、スライムは核、コボルトは牙だったな。
冒険者じゃない俺でもそれくらいは知っている。
「わかった。薬草も見つけたら採取してこよう」
「お願いします。それではお気を付けて」
ヴィオラが笑顔で手を振ってきたのでこちらも手を上げ、ギルドを出る。
すると、アンジェラが暇そうに柱に背を預けて待っていた。
「依頼を受けてきた」
「魔物討伐?」
アンジェラが柱から離れる。
「ああ。それと見つかったら薬草採取だな。行こうか」
「はいはい。あーあ、エリックと行きたかったわ」
そりゃ悪かった。
どうやらアンジェラは本当についてきて欲しかったようだ。
「今度、行く時はついていくよ」
言い訳じゃないが、心配は心配だったし、近接戦闘のセンスがゼロであるアンジェラのことを考えたらついていこうかなと思わないでもなかった。
ただ、やはり同世代の子達と行くだろうし、邪魔になると思ったんだ。
「約束ね。それよりもヴィオラはどうだった?」
「最初のコンタクトが尾を引いているな。声を変えたというのにエリックと決めつけていた」
フルフェイス・マスクマンなのに。
「まあ、それはねー……」
「しかし、悪ガキ共はギルドでたむろって何してんだ? 仕事に行かないのか?」
「あそこにいる連中は休み。やることもないし、ギルドはお酒も提供しているから良いたまり場なんだよね」
ふむ……そういえば、ギルドは悪ガキを管理するためとも聞いたことがあるな。
迷惑になりそうなところで集まられるより、目の届くところで騒がしているって感じか。
「ギルドも考えているわけか。アンジェラ、メアリーに酒を飲むには早いぞって言っておいてくれ」
この国は別に飲酒の年齢制限はない。
ただ、なんとなく独り立ちして大人になってからという風潮だ。
「言っておく。まあ、飲まないと思うけどね。カトリーナとシャーリーは真面目だし」
確かにあの2人が飲むとは思えんな。
なら大丈夫か。
一安心すると、門を抜け、町を出る。
なお、門を抜ける際にやはり門番のウィニーにガン見されたが、スルーしておいた。
「さて、先日と同じところで確認するか」
「それが楽でしょうね。そのマスクは涼しくなったらしいけど、服や外套は大丈夫なの? 暑そうだけど」
「そっちもちゃんと涼しくなるようにしている」
そういうエンチャントと呼ばれる付与魔法があるのだ。
「便利なのがあるのね」
「王都なんかの大きい町ではそういうエンチャントが施された服や鎧も売ってるぞ。お前の服にも付与してやろうか? これから暑くなるだろうし」
一応、そういうのも含めて魔道具店なのだ。
あまりそっちの需要はないけど。
「それはありがたいわね。私、暑いのが嫌いだし」
寒いのもだろ。
ちょっと前まで家に送っていく時は寒い、寒いと言っていた。
スリットから風が入って、足が寒いだろと思っていた。
「冬になったら寒さ予防もしてやるよ」
「それはいい」
なんで?
「いらんのか?」
「大丈夫」
そうなの?
あれだけ寒い寒いって言ってたのに。
「まあいいか。じゃあ、森に行こう」
俺達は歩いていき、森までやってくると、先日伐採したところから森の中に入った。
そして、奥までやってくると、遠見の魔法で3人を探す。
「いた。あそこ」
あ、ホントだ。
「しゃがんで何をしているんだ?」
3人が3人とも街道と森の境あたりで腰を下ろしている。
「多分、薬草の採取ね。3人でしゃがんだらダメって教えておくわ」
見張りがいないな。
「危ねーなー」
「この辺りなら危険な魔物は出ないし、あれでも十分に対処できると思うけどね。ただ、こういうのは最初からしっかりしておかないと、後で凡ミスしちゃうの」
それはわかる。
きちんと癖をつけておかないといけないし、見張りという行為に慣れておかないといけないのだ。
「あのメンツだと、斥候係はメアリーだろ」
カトリーナは鈍そうだし、後衛だ。
シャーリーはアタッカー。
役割的にはメアリーがやらないといけない。
そういう役割分担をするのがパーティーだ。
「そうね。メアリーはいつでも対処できるっていう自信があるんだと思う」
昨日の動きを見ればわかるが……
「先輩が教えてやってくれ」
「ええ……来たわね」
「そうだな」
街道でしゃがんでいる3人の後ろの森からゴブリンが1匹近づいていた。
「今日も援護?」
「危なくなったらな。どういう対処をするのか見たい」
一応、ナイフを取り出し、いつでも放てるようにする。
そして、見守っていたのだが、ゴブリンが森から出てこようとした辺りでメアリーが立ち上がった。
すると、すぐにシャーリーが立ち上がり、振り向きざまに剣を振る。
「すごっ」
「瞬殺か」
シャーリーの剣を受けたゴブリンは真っ二つになり、倒れた。
力、技術、どれも悪くない。
「あの細腕でよくできるもんねー」
アンジェラが腕を曲げて力こぶを作ろうとする。
しかし、ぷにぷにでしかない。
アンジェラは本当に非力だし、どこを触ってもぷにぷにしている。
まあ、魔法特化の魔法使いはそんなもんだ。
「強化魔法だな。それもかなり上手い」
魔法使いじゃない者でも大概の人間は魔力を持っている。
戦士なんかはその魔力を力に変え、戦うのだ。
「強い?」
「騎士を目指しているだけのことはある。現状、あの2人よりも数枚上手だな」
アーヴィンが教えただけのことはある。
「へー……良い子が入ってくれたじゃん」
「そうだな」
3人は笑顔でハイタッチし、討伐証明と魔石の採取をしている。
仲も良さそうだし、問題ないだろう。
「じゃあ、これで安心だね。私らも適当に魔物でも狩って、帰ろうよ」
「そうするか……」
俺達は森の奥に向かうことにした。
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