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元暗部の英雄、再び暗躍する ~娘のために正体を隠して無双していたら有名になっちゃいました~  作者: 出雲大吉
第1章

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第011話 真・フルフェイス・マスクマン


 翌朝、メアリーを起こし、準備をさせる。

 そして、朝食を食べると、メアリーが今日も元気に出かけていった。


 メアリーを見送り、開店準備をしていると、アンジェラがやってきた。


「おはー。朝は激つらだけど、店のために看板娘のアンちゃんが出勤したよー」


 今日もチャラチャラしたアンちゃんがギャルっぽいポーズを決める。


「おはよう。看板娘のアンちゃん、ちょっと見てほしいものがあるから来てくれ」

「何、何ー? フルフェイス・マスクマンじゃなくて、サプライズのプレゼントであることを祈るよー」


 すまんな……


「フルーツ、いる?」

「もらう」


 俺はアンジェラを連れてリビングにやってくると、冷蔵庫に入れておいたリンゴを取り出した。


「ほら」


 リンゴをテーブルに置くと、アンジェラがリンゴを食べだす。


「どうもー。ほへで見へたいものっへ?」

「食べながらしゃべるんじゃない」

「…………ごくん。で? 何を見せてくんの?」


 アンジェラが頬杖をつきながら聞いてくる。


「これを見てくれ」


 アンジェラに右腕に付けた腕輪を見せた。


「なんか黒いね。シルバーの方が良くね? てんちょー、黒好きだよねー」


 確かに好きなような気もする。

 黒影団にいたからだろうか?


「色はどうでもいいんだ。ここにスイッチがある。これを押すと……」


 スイッチを押すと、視界が狭まる。

 というよりも、一瞬にして、フルフェイスのヘルメットを被り、服も黒くなって、さらには黒マントを羽織っているのだ。

 そう……いきなりダークヒーローが登場したのだ。


「は? 人が変わった? 店長?」

「いや、私はフルフェイス・マスクマンだ」

「あれ? 声も店長じゃない……転移で別人と入れ替えた?」


 ふっふっふ。

 長年の付き合いであるアンジェラでもこれなら完璧だな。


「いや、俺だってば」


 ヘルメットを脱ぐ。


「あ、店長……どうなってんの? 急に姿が変わったし、声も違ってたじゃん」


 アンジェラが首を傾げた。


「この前の変装で課題だったのを見直し、改造してみたんだ。暑かったから冷却装置を付けたし、声でバレそうだったからボイスチェンジャーも付けた。あと、マントの下が普通だったからそれも直した」


 ちゃんと黒い服を着ている。


「ノリノリでワロタ」


 改造してて楽しかったのは事実だ。


「凝り性なんだよ」


 どうしても細部が気になってしまうのだ。

 多分、職業病。


「それはわかるけど、やりすぎっしょ。特にその早着替え装置は何?」

「着替えが嵩張るし、着替えているところを見られたらマズいと思ったからだな」


 特に家で着替えていて、メアリーに見つかったら元も子もない。


「いや、動機じゃなくて、仕組み。どうなってんの?」

「転移を応用した感じだな」


 服を転移させたのだ。

 元々着ていた服は空間魔法の中。


「無駄な技術の応用だなぁ……他にすごいもんが作れそうなのに」


 それは昨日の夜に思わないでもなかった。

 でも、仕方がない。

 発明とはインスピレーションであり、いつ思いつくのかはわからないのだ。


「というわけで、これでフルフェイス・マスクマンがエリック・ローウェルとは結び付かないはずだ」

「……そだね。今日はそれで行くわけ?」

「ああ。早速だが、ギルドに行こう。午前中の内に確認しておきたい」


 そう言って、ヘルメットを被る。


「ギルドにも行くの? 確認だけだし、勝手に行けば良くない?」

「いや、路銀が尽きたから冒険者になったという設定なのに仕事をしないのは良くない。適当に仕事をしておく」


 ゴブリンを2、3匹狩ればいいだろ。

 3秒で終わる。


「なんか徐々に後戻りできなくなりそうな気がするんだけど……」

「大丈夫だ。ちょっと確認して、大丈夫そうなら知らず知らずのうちにフルフェイス・マスクマンは次の町に移動するだろう」


 そして、人知れず人を救うんだ……


「なんかヒーローみたいに言ってるけど、やってることは15歳の女の子を付け回している変質者だからね」


 大丈夫。

 自覚はある。


「ちょっと見るだけだ。俺はシャーリーの実力を知らないからな」


 強いとは聞いているが……


「はいはい。じゃあ、ぱぱっと行って、ぱぱっと帰ろう……ったく、仕事があるんだから」


 できた従業員だ。


 俺達は店を出ると、町中を歩いていく。

 やはり町の人達から奇異な目で見られたりしたし、ひそひそされているのがわかった。


「てんちょー……ひそひそがやべーって」


 アンジェラが声を落として、周囲の様子を教えてくれる。


「すぐに馴染むから大丈夫だ」

「馴染むかな……? せめてもうちょっと目立たない兜だったらなー……」

「安心しろ。人は慣れる生き物なんだ」


 俺だって今の生活を10年前には想像できなかった。

 そして、ウチの子が生活に慣れた最たる者だ。


「慣れたくねー……」


 どうもアンジェラには不評だな。

 普段はあまり否定的なことを言う子じゃないんだが……

 そんなにダサいんだろうか?


「最初にこれを選択したんだから仕方がないだろ」

「普通に覗きに行けばいいのに。店長ならメアリーに見つからずに覗けるっしょ」


 いやー、それがそうでもない。


「メアリーは変なところで勘が良かったり、鋭かったりするからな……」


 良く言えば感覚派の天才肌。


「あー……まあ、そういうところはあるねー。冒険者としては良いことなんだけどさ」


 そういう勘は大事だからな。

 俺もそういうのを持っているが、もし、持っていなかったら戦争で生き残ることはできなかったかもしれない。


「アンジェラは持っているか?」

「冒険の方ではないね」

「違うのではあるのか?」


 魔法?


「見る目はあったかな? 今、絶賛、失敗かもーって思わないでもないけど」


 それはすまんな。


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