第104話 チェックイン
店の中は多くの客がおり、商品を見ていた。
しかも、その商品も多く、様々なものが売られている。
「すごいわね……」
「ああ」
俺とアンジェラが感心していると、若い女性の店員が近づいてきた。
「いらっしゃいませ。どのようなものをお探しですか?」
若い女性の店員が聞いてくる。
「ミルオンの町で魔道具屋をやっているエリックだ。商会長さんはおられるかな? 一応、約束はしている」
「エリック様とアンジェラ様ですね。話は聞いております。少々、お待ちください」
店員は一礼し、奥に戻っていく。
「徹底しているわね。エリックだけじゃなく、名乗ってない私も知ってた」
あらかじめ、特徴を伝えていたんだろうな。
まあ、アンジェラって特徴がわかりやすいし。
俺達がそのまま待っていると、奥からランドルさんが笑顔でやってきた。
「おー、エリックさんに奥様。お久しぶりです」
「久しぶり」
「どうもー」
俺とアンジェラも挨拶を返す。
「よく来てくださいました。今か今かと待っておりましたぞ」
オーバーだなぁ……
それくらいやらないとここまで店を大きくできないのかな?
「さっき着いたんだ。それで話をしたいんだが、着いたばかりだし、道中は野営だったから俺達はともかく、一緒に来た娘とその友人達が疲れている。話は後日、ゆっくりしたいと思っている」
そう言って、窓の外の3人を皆が見るが、元気いっぱいにはしゃいでいるウチの子がいた。
「ははは。もちろんですよ。ここまでお疲れ様でした。宿屋はお決まりですかな?」
「いや、ランドルさんを頼りたい。俺がここにいたのは10年以上前だし、そもそも宿屋を知らない」
住んでいれば宿屋に泊まることなんてないし。
「でしたら西の通りにある【蒼瑠璃の宿】がおすすめですね。ウチが懇意にしている宿屋ですし、私の紹介と言えば割引も利きます」
「西か……」
ランドルさんにもらった地図を見る。
「ここですね」
ランドルさんが指差して教えてくれる。
場所は中央の公園寄りでここからは近い。
「馬は大丈夫か?」
「もちろんですよ。預かってくれますし、ちゃんと世話もしてくれます」
ならいいか。
「じゃあ、ここに行ってみる。それで話なんだが、いつがいい? こっちは観光なり、知人に会う用事があるが、別に日程が決まっているわけではない。忙しいランドルさんの都合に合わせよう」
「そうですね……でしたら3日後はどうでしょう? その日ならいつでも構いません」
3日後か……問題ないな。
「じゃあ、3日後の昼過ぎにここに来る」
「わかりました。それではお待ちしております」
「ああ。宿屋を紹介してくれてありがとう」
「どうもー」
アンジェラと共に頭を下げる。
「いえいえ、当然のことですよ。王都を楽しんでください」
ランドルさんが頭を下げ返したので店を出た。
「あ、終わったー?」
ラシェルを撫でていたメアリーが聞いてくる。
「ああ。話は後日で先に宿屋を聞いてきた。こっちだ」
そう言って、西の通りに向かって歩いていく。
「宿屋、宿屋ー」
「ベッドだ……」
「お風呂だ……」
はしゃいでいるが、やはり疲れが大きいな。
「宿の部屋だが、どうする?」
西の通りに入ると、アンジェラに聞いてみる。
「私はエリックと一緒でいいけど……」
アンジェラが振り向いて、3人を見た。
「私ら、3人でいいよね?」
「うん。普通に考えたらそう」
「出してもらうわけだしね。それに知らない土地だから3人の方が安心」
3人は同部屋で良さそうだ。
だったら借りる部屋は2部屋だな。
「エリック……【蒼瑠璃の宿】だっけ?」
アンジェラが聞いてくる。
「そうだが?」
「あそこ……」
アンジェラが前方を指差す。
そこには5階建ての真っ白い建物があり、【蒼瑠璃の宿】と書かれた看板がかかっていた。
そして、外観からでもわかる高級感がある。
「国内最大手の商会が懇意にしている宿屋か」
「安いわけないわよね……どうする?」
引き返したい……引き返したいが……
「いや、ここでいいだろ。ランドルさんの紹介だし、せっかく王都に来たんだから贅沢でもしようじゃないか。この前の水筒マネーもあるし、慰安旅行だ」
「そうね……じゃあ、そうしましょう」
アンジェラが頷いた。
「慰安旅行だって」
「新婚旅行だよね」
「違う部屋で良かった」
ガキ共は黙ってろ。
「いいから入るぞ」
俺達は宿屋に入る。
中は大理石のように輝く床であり、いくつもの調度品が並んでいる豪華なエントランスだった。
奥には高級そうな木材で作られた受付があり、3人の若い女性が並んでいる。
さらにはその隣に階段があり、赤いカーペットが敷かれていた。
「プリンセスメアリー……ふふっ」
皆が圧倒されているが、元上級の子だけいつも通りだ。
「静かにしてろよ」
そう言って、受付に向かった。
「いらっしゃいませ。蒼瑠璃の宿にようこそ」
受付にいる若い店員がにっこりと笑う。
「ああ。スピアリング商会のランドルさんに紹介されたんだが、2部屋借りたい」
「スピアリング商会のランドル様ですね。何泊でしょう?」
あー、どうしよ。
「具体的な日数はまだ決めていないんだが、最低でも2週間はいると思う」
「かしこまりました。部屋はどのように分けられますか? 当宿では1人部屋から5人部屋まであります」
「2人と3人で頼む。それと外に馬がいるんだが、それも預かってほしい」
「かしこまりました。1泊1万ミルドになりますので2部屋で14日ですと、28万ミルドになります」
高い……高いんだが、この宿の質から考えたら1万ミルドは安くね?
「あのー、つかぬことを聞くが、割引がなかったらいくらだ?」
「1泊5万ミルドです」
高っか……
ウチの町の宿だったらその十分の一だぞ。
「わかった。14日で頼む」
財布から28万ミルドを出し、カウンターに置く。
「朝食、夕食は部屋にお持ちしてもいいですし、あちらのレストランでも食べられます」
店員が右の奥にある重厚な扉を指差す。
中は見えないが、外から見ても絶対にそこらへんにあるレストランとは違う雰囲気がある。
「部屋でいいか?」
振り向いて、4人に聞くと、4人共頷いた。
場違い感がすごいからだろう。
俺も同じ気持ちだ。
「部屋で食べる」
「かしこまりました。部屋にあるベルを鳴らしたら係の者が参りますのでそこで用件を伝えてください。食事の時もですが、些細なことでも構いません。もちろん、飲み物等もご用意させていただきます」
要はルームサービスか。
「追加で金がかかるパターンか?」
「いえ、普通はかかりますが、ランドル様のご紹介ですので費用は一切かかりません」
すげー……
「わかった。ただ、こいつらが酒を頼んだら拒否してくれ」
後ろの3人を指差す。
「飲まないっての」
「怖いしね」
「お酒はちょっと……」
良いことだ。
「ふふっ、承知しました。お食事をご一緒される時はどちらかの部屋にお持ちすることもできますので適宜、係の者に申してください」
うーん……
「ちょっと待ってな……お前ら、王都でのルールを決めておく」
振り向いて、3人に告げる。
「ルール?」
「ああ。前にも言ったが、外に出る際は絶対に3人で行動すること。それと基本的に夕食は一緒に食べる。ただ、お前らだけで出る時もあるだろうし、その逆もある。その際はちゃんと事前に言え。あと、必ず、1日1回は顔を見せろ。お前らのやることにいちいち口は挟まないが、俺は神父さんとバリーから娘を預かっている身だからちゃんと報告しろ」
大事なことだ。
「りょ」
「わかりました」
「そうします」
3人が頷いたので受付の方を向く。
「すまんが、誰かが1人で外に出たら報告してくれ」
「かしこまりました。それではこちらが鍵になります。2階の8号室と9号室です」
店員がカウンターに2つの鍵を置いた。
「ほら、メアリー」
メアリーに9号室の鍵を渡す。
「どもー」
「それではごゆるりとお過ごしください」
店員がそう言って頭を下げたので近くの階段を上った。
すると、やはりレッドカーペットが敷かれた廊下があり、部屋を探していく。
「あ、あった。8号室ね」
「9号室も発見」
どうやら対面の部屋のようだ。
「じゃあ、解散な。後はお前達の好きにするといい。ただ、さっきの約束は守れよ」
「わかってるってー」
まあ、大丈夫か。
「夕食はどうする? 外に出るのか?」
「いや、さすがに今日は部屋でゆっくりする」
「そうします」
「今日は外に出る元気はないです」
まあ、そうか。
「じゃあ、一緒に食べよう。18時くらいにお前らの部屋に行くからな」
「りょ」
メアリーが敬礼し、カトリーナとシャーリーも頷く。
「よし。じゃあ、解散な。まあ、休め」
そう言うと、3人が鍵を開け、テンション高めに部屋の中に入っていったので俺とアンジェラも自分達の部屋に入った。
お読み頂き、ありがとうございます。
この作品を『おもしろかった!』、『続きが気になる!』と思ってくださった方はブックマーク登録や↓の『☆☆☆☆☆』を『★★★★★』に評価して下さると執筆の励みになります。
よろしくお願いします!




