第103話 人が多いのは好きじゃない……
門をくぐると、多くの人が歩いており、賑わっている。
それに店が多いし、露天商も多い。
俺がここに来たのは10年以上前だが、見覚えのある建物もあり、どこか懐かしかった。
「すごい人の数ね……」
「それに建物が密集していますね」
「私ら、変じゃない?」
ミルオンの町生まれの3人が王都の都会さに圧倒されている。
「こんなんじゃね? というか、町の外側だからまだまだだと思うけど」
「あんた、ここの出身だっけ?」
アンジェラがメアリーに聞く。
「え? あ、うん」
メアリーは王都じゃなくて、帝都だな。
「今、田舎者呼ばわりされた気がするわ」
「ちょっと感じましたね」
「メアリーもミルオンの町の方が長いのにね」
3人の反応にさすがのメアリーも困った顔で見上げ、助けを求めてくる。
「ミルオンの町はそんなに田舎じゃねーよ」
「王都生まれは余裕ね」
俺がいたのはスラムだぞ。
「そんなことより飯にしようぜ」
「そうそう! パスタ屋、パスタ屋……」
メアリーがきょろきょろと辺りを見渡す。
「あそこじゃない?」
「あ、ホントだ」
カトリーナが指差した先にはパスタ屋があった。
というか、行ったことはないが、俺がいた時からある店だ。
「行くか」
俺達はパスタ屋までやってくると、ラシェルを店の前に置き、中に入る。
店はいくつかのテーブル席とカウンター席があるが、空いていた。
というか、壁にかけられた時計を見ると、もう14時前だった。
「いらっしゃいませー。何名様ですか?」
若いウェイトレスがやってきて、笑顔で聞いてくる。
「5人だ。それと外に馬を止めたが、いいか?」
そう言うと、ウェイトレスが窓から外を覗く。
「おー……白馬です。かっこいい! あ、馬は構いませんよ。それと5名様でしたらテーブル席にどうぞー」
明るい子だなと思いつつ、空いているテーブルに座った。
俺とアンジェラが並んで座り、メアリー達が対面に座る形だ。
そして、5人でメニューを見る。
「お水をどうぞー。何にします?」
ウェイトレスが人数分の水をテーブルに置き、聞いてくる。
「私、魚介のパスタ!」
「私も」
「私もそれでお願いします」
「じゃあ、私も」
「魚介のパスタを5つ頼む」
全員が同じものを頼んだ。
それもそのはずであり、海が遠いミルオンの町では川で獲れる川魚をたまに食べるくらいで滅多に魚介は食べられないのだ。
「少々お待ちくださーい」
ウェイトレスが厨房の方に向かった。
そして、しばらく待っていると、ウェイトレスが人数分のパスタを持ってきたので皆で食べだす。
魚介のパスタはエビや貝がふんだんに使われているし、にんにくが効いたソースと相まって非常に美味しい。
「おー、美味しい!」
「昔、冷凍の貝を食べましたが、全然違うね」
「ウチは肉ばっかりだからなぁ……」
子供達も美味しそうに食べている。
「美味しいわね……前にキースさんが王都に着いたらまず魚介のパスタを食べるって言ったけど、これじゃないかしら?」
そういえば、以前、そういうことを聞いたな。
「門に近いし、そうかもな」
ミルオンの町から来る場合、この南門から入るのだ。
俺達は腹が減っていたこともあり、あっという間にパスタを平らげると、店を出た。
なお、さすがにここは俺が払ってやった。
「エリックさん、ありがとうございます」
「ご馳走様でした」
カトリーナとシャーリーが礼を言ってくる。
「気にするな。それよりもスピアリング商会に行こう」
そう言って、紙を取り出す。
ランドルさんの手紙に同封されていた地図だ。
これを見ると、町の中央付近に店があるらしい。
俺達はラシェルを引き、通りを進んでいく。
人が多いが、さすがに大きな馬を引いているので皆が避けてくれた。
「色々売ってるねー」
「メアリーちゃん、買うものを厳選しないとお金がすぐになくなっちゃうよ」
「メアリー、帰りの荷物が増えすぎるのもどうかと思うよ」
カトリーナとシャーリーがメアリーを制する。
「わかってるってー……あ! あの木彫り可愛い!」
器用なんだから木を切ってきて、自分で彫ればいいだろ。
帰りの荷物が心配だなと思いながらあちこちに興味を惹かれるメアリーを連れ、町の中央にやってきた。
中央は公園になっており、芝生が綺麗だし、噴水もあり、虹を作っている。
そして、多くの人が休憩したり、待ち合わせをしており、屋台なんかもある。
「また多いわねー……」
アンジェラが広場を見て、目を細める。
「よく待ち合わせに使われるところだな。メアリー、カトリーナ、シャーリー、もし、はぐれるようなことがあればここを待ち合わせ場所にしろ」
「わかった!」
「そうします」
「とはいえ、すごい人ですね……」
まあ、多いな。
「王都だからな。えーっと、スピアリング商会は……」
「エリック、あれじゃない?」
アンジェラが左の方を指差すと、3階建ての建物が見え、看板に【スピアリング商会】と書いてあった。
「でかいな……」
3階建てなうえに面積も相当だ。
「大手さんの本店だしね」
「そりゃ水筒も売れるわけだ」
わかっていたことだが、ウチと比べたらダメだな。
ここまで差があると嫉妬すら湧かない。
「行きましょう」
俺達は店の前までやってくると、立ち止まる。
「メアリー、カトリーナ、シャーリー。ラシェルと一緒にちょっと待っててくれ」
「わかったー」
メアリーがそう返し、3人共頷いたのでアンジェラと二人で店に入った。
お読み頂き、ありがとうございます。
この作品を『おもしろかった!』、『続きが気になる!』と思ってくださった方はブックマーク登録や↓の『☆☆☆☆☆』を『★★★★★』に評価して下さると執筆の励みになります。
よろしくお願いします!




