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令和ギャル、転生だかタイムリープだかして伯爵令嬢だか極妻だかになって大正時代を無双する……とかしないとか(実録!知らんけど)  作者: 真夜航洋
第1章 凛音

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第8話 「陰謀を暴け」


「おい。憲兵」


 振り返った憲兵たちが一斉に身構える。

 星児に続いて、人質を取った天童組組員たちがゾロゾロと現れた。


「おまえらの中に、こいつら上原組と通じてる奴がいるな?」


 突然の質問にきょとんとする者、腰の軍刀に手をやる者、顔をそらす者がいる。

 星児は目ざとく見つけ、顔をそらした憲兵に歩み寄る。


「拳銃を抜け」

「……」

「抜かなきゃ、こいつを殺す」


 ドスを上原の喉に食い込ませる。

 憲兵は反射的に拳銃を構えた。


「武器を捨てろ!」

「交換だ」

「何?」

「おまえがその拳銃を下に置いたら、俺たちは全員武器を捨てて人質を放してやる。いいな?てめえら」


 星児の宣言に江田島たちが頷く。


「不安なら、弾倉を抜いてもいいぜ」

「……」


 躊躇する憲兵に、背後から西園寺が命じる。


「言われた通りにしろ。こんな所で、民間人に死傷者を出すわけにはいかん」


 上司に命じられ、憲兵は弾倉を抜き取ってから拳銃を地面に置いた。

 星児がドスを放り投げ、上原を解放する。

 他の組員たちもそれに倣った。




 野次馬たちが集まり始めている。

 それを押しのけて、凛音が前に出る。


(どうしたどうした?あーしの体、何がしたいの?あれ?)


 令和ギャルの意識が宙に浮く。

 幽体離脱だ。


(あれあれ?)


 鳥が見るような俯瞰の景色。

 いままで自分の体だった凛音が、客観的に見えている。

 彼女と星児の距離は100メートルもない。


「だんなさ…」

「止まれ!この先は、立ち入りを禁ずる!」


 制服警官達に行く手を阻まれた。

 追いついた小梅が、凛音をうしろに引っ張っている。





 拳銃を拾い上げて、星児がまじまじと見る。


「南部式乙、か。こいつから発射された弾丸を、俺は持っている」


 胸ポケットから弾丸を取り出した。


「これは三日前、俺を撃った銃弾だ。摘出手術したものを記念に取っておいた」

「本官の拳銃は無関係だ。くだらない難癖をつけるな。ヤクザ風情が!」

「旋条痕」

「?」

「銃弾を回転しながら発射させるために、銃身内部は螺旋状に削られている。その形状は銃器によって異なり、『銃の指紋』とも呼ばれている」


 西園寺が興味深そうに聞いている。


「この弾丸に付いた旋条痕は、こいつの拳銃のものと一致するはずだ。おい。そこの下士官」


 星児が西園寺の前に、拳銃と弾丸を放り投げた。


「陸軍兵器局に調べさせろ。俺の言ったことが事実かどうかをな」

「軍人でも一部の者しか知らぬ旋条痕のことを、民間人が知っているとは驚きだ。では、私が預かろう。事実なら、それ相応の対応をせねばならんな」


 そう言って拾い上げたとき、件の憲兵が西園寺の前に駆け寄って土下座した。


「中尉殿。あの男を撃ったのは本官ではありません。自分は拳銃を一日貸しただけなんです」

「貴様の言う、ヤクザ風情にか?刀は武士の魂、銃は軍人の魂だ。貴様は、魂を下賤の者に貸したというのだな?」

「申し訳…」

「このクズを連行しろ。軍法会議にかける」


 他の憲兵たちが引きずって行くのを見送ってから、西園寺は馬に跨った。


「おい、ヤクザ者。本来なら貴様らもまとめて逮捕するところだが、今日は目をつむってやる。他言無用が条件だ。できるな?」

「ああ、そういうことか。民間人の葬式に下士官が来るなんておかしいと思ったぜ。三日前の発砲事件に憲兵が関わっている…そう疑ったから、あんたもここに来たんだろ?」

「……軍事機密だ」

「あんたに手柄をくれてやった。これは、俺の貸しってことでいいな?」

「ふざけるな。こちらの貸しだ」

「じゃあ、お互いにそう思っておこうぜ。またな。中尉」

「また会うことなどない!」


 フンと鼻を鳴らしてから、西園寺はあぶみを蹴った。

 軍人一行は天童邸を後にした。


「さてと。今度はおめえら上原組の落とし前だ。俺らはヤクザだ。抗争するのも殴り込みかけるのも仕事のうちだ。そこはどうでもいい。だが…」


 星児が上原の喉を、わし掴みにする。


「俺の嫁はトウシロだ。ついこの間まで女学生だった小娘だ。それを的にかけるのは、渡世の道に外れると思うが……お歴々、どう思う?」


 問いかけられた吉岡組長と増田親分が答える。


「仁義にもとる。任侠道に背くわな」

「外道の所業だな」


 この時代のヤクザは、何よりも仁義を重んじる。

 もはや上原に逃げ道はなかった。


「いつまでも茶番に付き合ってられるか。煮るなり焼くなり好きにしやがれ!」


 開き直った上原が、星児の手を払いのけてその場にしゃがみ込んだ。


「じじいなんか煮ても、出汁も取れやしねえ。あんたは極道を引退しろ」

「……」

「縄張りのことは俺に任せて、な」


 ぞっとした。

 上原自身が星児に対し、心の中でつぶやいた言葉だったからだ。

 だが上原も極道だ。

 おくびにも出さず、悪態をつく。


「お、怖気づきやがったのか?なんで俺を殺さねえ?」

「あんたには、まだ聞きてえことがあるからな」


 今回の画は、上原組だけで描ける画ではない。

 上原のケツを掻き(後押しして)、憲兵を紹介した権力者がいる。


(上原組の上部組織・朔月会でも無理だ。もっと上、例えば…華族の人間とか、だな)


「親分。ひとが見てやす。戻りやしょう。おい、おめえらも引き揚げろ!」


 江田島の合図で、天童組組員たちが屋敷に戻り始める。

 星児も踵を返す。


「待って。旦那様!」


 その声に星児が振り返る。

 だがそこにいたのは、ハンチング帽とロイド眼鏡の人間。

 一瞬、眼鏡の奥の眼と合った。

 だが変装した凛音に気づくことはなく、すぐに屋敷に向かって歩き出した。

 そのうしろ姿には、赤い血の跡。

 さっき脅しのために切った上原の血だ。


(待って!いかないで!いかないで。いや。いやあああ……)


 凛音の叫びは声にはならず、その場で卒倒し小梅の腕の中で意識を失った。


(あれ?あれあれ?)


 令和ギャルの魂のようなものが、凛音の体の中に吸い込まれていく。


(何これ?出たり入ったり。便秘のウ○コじゃないんだからあ!)




「よし。撮れた。撮れたぞ」


 旅館の二階では、本城が小躍りしている。

 星児が上原たちを確保して憲兵たちに迫っていく写真だ。


(おとなしく隠れてなさいと言ったのに、あのお嬢様は…)


 霧子が階下の状況を確認する。

 小梅が凛音を背負って、旅館に帰ってくるのが見える。


(また、心臓発作ですか。やれやれ…おや?) 


 車のエンジン音がする。

 上原を乗せてきた、あのT型フォードだ。

 走り去っていく車の後部座席に、見覚えのある後姿があった。


(あれは、奥様?)


 清流院麗華のゴージャスなシニヨンが、雑踏の中に消えていった。






つづく



凛音「次回からは女の子キャラ小説になるよ。楽しみ~~」

霧子「早くも路線変更ですか。終わったな」

小梅「メイドカフェが舞台になりますだ。わだすのメイド服姿、お楽しみに~ですだ」

凛音・霧子「終わったな」

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