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令和ギャル、転生だかタイムリープだかして伯爵令嬢だか極妻だかになって大正時代を無双する……とかしないとか  作者: 真夜航洋
第3章 生々流転

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第36話 「報告」



「だからさあ。いちゃいちゃしようぜ。いいだろ?」

「やっぱ、社会不適合者だよね?あのさあ。ここ、あーしの店だっつーの」


 見合いの翌週の土曜日。

 閉店後のカフェ清流の客席で、星児は凛音と今後について話し合う。

 ふたりのひそひそ話に、全従業員が聞き耳を立てている。


「なんでだよ?ふたりをときどき会わせよう、って言ったのはきみだぞ」

「星児と凛音、のふたりをね。」

「つっても、星児はあれっきり出て来ねえんだよ。こうなりゃ俺ときみがいちゃいちゃして、嫉妬心をあおっておびき寄せるしかねえと思うんだがな」

「だとしても、ここでできるわけないっしょ!」

「それもそうだな。じゃあ、やはりあそこしかねえか。もう仕事は終わったんだろ?行くぞ」


 星児が凛音の手首をつかんで立ち上がる。


「すまんが、婚約者を借りていくぞ。おつかれ~」


 凛音の脳裏に、きらびやかな装飾のホテルの画が浮かぶ。


(ま、万が一、鬼ユリが鬼のような百合だったら、どうしよう?)


 星児に引っ張られて、顔を赤らめながら店を後にした。


「き、聞いた?いちゃいちゃですってよ。これからおふたり、いちゃいちゃするのよ!」

「きゃああ。恥ずかしい!」


 店員たちが大騒ぎしている。


(あれ?いちゃいちゃ、ってこの時代でも言うんだ)*江戸時代から使われていたようです


 路上には、自動車が停まっていた。


「え。車?買ったの?」

「いや、星児のだ。免許証もある。こういう時のためにも、今後必要になりそうだから練習した。乗れ」


 助手席に乗る。

 星児がエンジンをかける。

 すぐに発進した。

 

「大丈夫?車運転しながらHするとか、野蛮過ぎじゃ…」

「いいかげんにしろ!俺は女だって言ってんだろ」

「鬼みたいな百合…」

「ハード・レズでもねえわ!」

「でもさっき、いちゃいちゃって」

「従業員達がどこまで聞き耳を立ててるか、試しただけだ。俺たちの会話は、人には聞かせられないからな。今後は車の中だけで話す。いいな?相棒」

「へいへい」


 凛音は、星児のバディ提案に乗り気ではない。


(あーしの前世はJKで地下アイドルだし。刑事みたいなことできんて)


「これから仲人に正式な報告をしに行く。数日前にアポはとってある」

「仲人って雅叔母様のこと?翌日あーしから『お付き合いすることになりました』って報告したよ」

「二人揃って会食の席で報告するのが正式なんだよ、縁談ってのは」

「小百合ちゃん、見合いしたことあんの?」


「……ある。刑事部長の甥っ子の警察庁キャリアとな。俺は警視庁のエースだから、ある意味政略結婚的な縁談だった」

「え?振袖とか着たの?」

「着るか、んなもん。普段着で行ってやったわ。それに何かと東大出をちらつかせてきやがったから、警棒でぶん殴ってやった」

「なんで見合いに警棒?じゃあ、当然断られ…」

「気に入られた。うっとりした目で『そういうとこがいい』って、すり寄って来た」

「どⅯの東大出官僚?」

「ふたりで部長に報告に行って『こんな変態と付き合ってられるか』つって、ノシ付けて返してやったぜ。わはは」

(令和の警察は大丈夫なのか?)




「着いたぞ」

「え?ちょ、ちょっとちょっと。やっぱ、ラブホじゃん!」

「ああ。確かに、ぽいな」

 

 雅の嫁ぎ先である四菱財閥岩村邸は、豪華絢爛な宮殿のような建物だった。


(これが、本来の華族?)





 屋敷の中も、やはり宮殿だった。

 赤いじゅうたん、シャンデリア、彫刻、宝塚の舞台にあるような大げさな階段。

 その階段の上から、ドレス姿の貴婦人が降りてくる。

 雅だ。


「あらあ。お若いお二人、いらっしゃい。もう若くないオバサンのお迎えでごめんあそばせ」

(ぬ。出たな、ダル絡み。まだスネてんのかよ)


 見合いの席から雅を追い出すとき、凛音が言った「あとは若い二人だけで」という言葉。


 店内でもときおり「リンちゃん。わたくし、もう若くないの?ねえねえ」としつこかった。

 適当にあしらっていると、「若い子はしっかりお働きあそべ。わたくしはオバサンだから休んでるんだもんねえ」とふてくされていた。


「お久しぶりです。雅さん。とんでもありませんよ。いつまでもお若くてお美しい」


 そう言って、星児が手の甲にキスをする。

 騎士ナイト妃殿下プリンセスにするように堂に入っている。


「まあ、嬉しい」

「降りて来られるとき、新劇のニュースタアかと見紛うような瑞々しさでしたよ」

「みずみずしい?いやん、星児くんたら。女学生じゃないんだから。おほほ。さあ、晩餐室に参りましょう!」


 機嫌を取り戻したようだ。

 ほっとした凛音が星児に耳打ちする。


「小百合ちゃんさあ、令和に戻ったら宝塚に入れば?男役で」

「ああ。女性警官達からもよく言われたな。俺のファンクラブもあったみたいだ。ま、俺は女性には優しいからな」

(やっぱ百合要素あんじゃねえか。油断しないようにしよ)


「そう言えば、久しぶりって。叔母様と会ったことあんの?」

「俺はねえが、星児は子供の頃から知ってたらしい」





つづく



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