表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
令和ギャル、転生だかタイムリープだかして伯爵令嬢だか極妻だかになって大正時代を無双する……とかしないとか  作者: 真夜航洋
第2章 天星

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

26/33

第26話 「告白」


 令和なら「チューゥ。チューウ」とはやし立てられていただろう。


 居合わせた女性達の期待の眼が、星児に注がれる。


(すげえ威圧感だ。ヤクザに取り囲まれるよりこええ!…ん?)


 今か今かと待ちわびる群衆の中に、江田島の姿もあった。

 瞬きするまいと拳を握りしめている。


(なんでおめえが一番ワクワクしてんだよ!)


 悪い流れを断ち切らねばならない。


「できるわけねえだろ。そんなこと」

「あら、なぜですの?このままでは、姫は永遠に眠り続けますわよ。王子」

「俺は王子じゃねえし、凛音も姫じゃねえ。心臓発作じゃねえんだったら、余計な事せずに安静にしてやった方がいいに決まってんだろ」


(しまった。バレたか)

 よしこが舌打ちする。


(よし。ここだ)


 一時は期待したが、さすがにホンモノの凛音に申し訳ない気がしていた。

 悪ノリの嵐が止んだところで、凛音が目を覚ます。


「う。うう~ん」

「お嬢様が」

「ひい様!」

「……あ、星児さん。みなさまも。わたくし、いったいどうしてしまったのかしら?」


 星児が駆け寄り、手を握る。


「凛音。大丈夫か?」

「ええ。ほんの少しめまいがしただけですわ。星児さんがいらっしゃるということは…ああ、そう、お見合いでしたわね。また、記憶が乱れてましてよ。おほほ」


 星児の手前、本来の凛音っぽい芝居をした。

 不本意だが、権俵よしこと叔母を参考にしている。

 いつもと違う言動に、女性達が不審がる。


(ひい様が華族みてえに…あ、華族ですだ)

(バカが治ってる?あ、いいことですわね)

(あれ?どっちだっけ?)


 令和で言うところの、キャラがブレブレだ。


(だがここは、こっちのキャラで罷り通る!)


 凛音がすっくと立ちあがる。


「さあ。それではわたくしと天童星児さんのお見合いを始めますわよ。霧子さん」

「あ、はい」

「約束通り、みなさまにはお帰り頂いて、ここはふたりだけにさせていただきます!」


 断固とした態度で霧子を睨む。


「ええ、そうでした。さあ、みなさん。宿舎に帰りますよ」

「ええ~」

「先生。もう少し」

「お見合いは、当人だけでするものです。行きますよ」


 不承不承に女中たちが帰り始める。

 よしこや江田島も追い出されていく。

 

「リンちゃん。わたくしは仲人だし、残っても…」

「若い二人だけのお時間ですわ。叔、母、さ、ま」

「ん~ん。でもでも…」

「あとで、ちゃんと報告しますから!」

「しゅん」




 ほかに誰もいなくなったカフェ。

 あらためて、ふたりが向き合う。


「あの……清流院凛音、と申します。よろしくお願いします」

「あ、ああ。天童星児だ。ずいぶん長いこと待たせてしまった。すまん」


 本当に律儀なようだ。

 ヤクザの組長が深く頭を下げる。

 

「あの。本日はお日柄も良く」

「うん。五月晴れ、だったな」


 そこで途絶えた。

 

「あの。縁談を進める前に、聞いていただきたいことがあるんです」

「…」

「きっと、こいつは頭がおかしくなったのか、とか、笑えない冗談だ、とか思うと思うんすけど。話しておかないと、あーしの、その、ギャル道がすたるんです!」

「ぎゃる道?」


 


 前世でギャルを始めたのは、近所に住む美咲という年上のお姉さんの影響だった。

 美咲はつねづね言っていた。


「いい?ギャルっつーのはさ、愛にだけは忠実なんだ。そこだけは譲っちゃダメなんだよ」

「愛にチュージツって…ミサキ姐さん、マジっすか?超重いんすけど」

「重いさ。愛は地球より時間より重いんだよ」

「…」

「親がうぜえのは、あーしらが親の愛を見過ごしてるからだ。彼氏が浮気すんのは愛が足りないからだ。どっちも、てめえの承認欲求に負けてっからだ」


 彼氏のことはわからないが、自分は母子家庭だ。

 シングルマザーの母を尊敬も愛してもいる。

 ただときどき、うざくなる。

 「うぜ。死ね、ババア」と言ってしまった日、姐さんに相談をした。


「ギャルは、愛にだけは嘘ついちゃダメなんだよ」




 さっき上空から見ててわかった。

 凛音と目の前の男の人は愛し合っている。

 そのひとに嘘はつけない。

 あーしは、ギャルだから。


 ミサキ姐さん。

 言うよ。

 

「あーし、清流院凛音じゃないんす。見た目は凛音だけど、中身は違う人間なんす」


 唖然としている。

 当然だ。


「最初から話しますね。あーしは…あ、あーしってのは私って意味っす。あーしは今から100年後の令和って時代でギャルってのやらせてもらってて、名前はサーセン、匿名でオネシャス」


 頭を下げる。


「何を謝ってんのかわかんねえが……続けてくれ」

「あざっす。そこで、自分なりに頑張ってたんすけど、いろいろあって、崖から飛び降りまして、そんでまあ、死んじゃったんす」

「……」

「ところがっす。目を覚ましたら、この清流院凛音になってったんす。正確には凛音の体に魂だけが乗り移ってたっつーか、こういうの大正の人にはハテナでしょーけど、令和の小説とかアニメじゃ転生つって……」

「もういい!」


 星児が話を遮った。

 頭を抱えている。

 当然だ。

 怒らせてしまったかもしれない。

 これも当然だ。


 さっきまで再会の熱い抱擁を交わした女が、急に訳の分からないことをまくし立てているのだから。


 あれは何だったんだ?

 俺はおちょくられていたのか?

 そんな風に思ったかもしれない。

 このひとを傷つけたかもしれない。


(嘘をつくことは簡単なのに、つかないことがこんなに難しいって……)


「あ、つまりその…この縁談はなかったことに…」

「いつだ?」

「はい?」

「崖から飛び降りたのは。令和何年何月何日だ?」

「え?ああ、4年4月4日っす。4並びなんで覚えてるっす」


 星児が大きくため息をつく。


「やっぱりそうか。あのときの…」

「はい?」

「俺も……転生者なんだよ」


 はい~~~???





つづく




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ