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令和ギャル、転生だかタイムリープだかして伯爵令嬢だか極妻だかになって大正時代を無双する……とかしないとか(実録!知らんけど)  作者: 真夜航洋
第2章 天星

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第20話 「リターンマッチ」


「へえ。それで、その小僧はどうしたんですかい?」

「給金と生活費はこっちで払う、と言って厩舎に預けた。そんなわけだから、請求書が来たら払ってやってくれ」


 組に戻った星児は、江田島にいきさつを説明しておいた。


(それにしても、犬や猫拾うみてえに馬と子どもを拾って来るとは……)


 確かに子供の頃の星児は、よく捨て犬を拾ってきて飼っていた。


(変わんねえな。やっぱ、優しい人だ。いや、優しすぎる)


 子分に自分を撃たせた上原を、情報だけとって帰してやった。

 松平も人質に取っただけで、名古屋に戻した。

 お人好しとも言えるほどだ。


(組長たる者、他の組に恐れられる冷酷さも必要なんだがな)


「ああ。それと例の見合いの件だが……受けてみようと思う」

「縁談のやり直し、をですかい?ではやはり、お嬢と結婚を?」

「いや。逆だ。この際はっきりと縁を切る」

「……」

「考えてもみろ。あの娘を、凛音を俺は死なせかけたんだぞ。やはり華族の娘を嫁にするのは無理がある。耐えられるはずがねえ!」


 まるで自分に言い聞かせているようだ。

 やはり、優しい人だ。

 あんなに惚れていた女を。

 いや、だからこそ、か。


「それに俺には、やらなきゃならねえことがある。野望、と言ってもいい」

「親分の野望、てのは?」

「決まってんだろ。大川辰吉の首を獲って、大吉一家をぶっ潰すことだ」


 二年前に決闘で敗れて死んだ、父親の仇討ち。 

 復讐。


「だが、今の天童組じゃ無理だ。大吉一家にゃ敵わねえ。組を太くするためには、修羅の道を突き進んでいくしかねえ」


(葬式の件といい、朔月会への殴り込みといい、ここんとこ人が変わったように戦闘的になったなあ、覚悟の表れだったわけか)


「そんな道に、あいつを引きずり込むわけにゃいかねえんだよ」


 だから、別れを告げる。

 優しさと冷酷さは表裏一体なのだ。





「だいたいのことはわかりましたわ。清流院凛音さん」


 芥川が帰った後もよしこは客席に居座って、自分で作ったコーヒーを飲んでいる。

 ピンチを救ってくれたよしこに、凛音はこれまでのことをかいつまんで話した。


 祝言を挙げたこと。

 その席でヤクザに襲撃されたこと。

 そこで記憶喪失になったこと。

 そして今では、縁談は白紙に戻っているということ。


「ただそうなると、わたくしの知りたいことは伺えそうもありませんわね」


 無駄なことをした、と言わんばかりにため息をつく。


「ん?私に何か聞きたかったの?よっちゃん」

「下々のような呼ばれ方は心外ですわ」

「じゃ、ごんちゃん」

「苗字はもっと嫌。よっちゃんでいいわ」

「よっちゃん。私にわかることなら教えるよ」

「べ、別にたいしたことではありませんわ……その、夫婦生活……」


 柄にもなく乙女のように顔を赤らめて俯いている。


「夫婦生活?の、何?」

「その、夜の……」


(夜の営み?こいつ、ワイ談聞きたいんだ。テクとか知りたいんだ)


 ただ、前世でもJKの興味は概ねそのへんだから当然か、とも思う。


「……夜の装いは、その、どのようなものをお召しになるのか、と」

「なんだ。服の話か」

「ごめんあそべ。もう結構ですわ。そのようなはしたない……」

「この時代だから、寝間着じゃない?ただ、すぐに前を開けるように帯は緩めとく、とか?(知らんけど)」


「いやあああ。おやめになって。だめ。いけませんわ」


 周りが驚くほど恥ずかしがって、耳を塞いでいる。


(聞きたいんじゃなかったの?めんどくせえ子だな。それに、純情なんだかエロいんだかわからん)


「まあ。楽しそうに、何のお話をなさっているのかしら?」


 雅が近づいくる。


(あ。めんどくさいのが増えた)

「あら。リンちゃんのお友達?ご機嫌よう」


 よしこがすっくと立ちあがり、袴の裾をつまんで会釈する。


「権俵伯爵家の次女・よしこでございます。奥様も、ご機嫌麗しゅう」

(華族言葉で立ち直った。パブロフのやつだ)


「権俵家の娘さんなのね?宅の四菱銀行とは長いお付き合いをして頂いてますわね。お父上はご息災かしら?」

「はい、つつがなく。お察しいたしますに、石崎宗太郎さまの奥様でいらっしゃいますね?」

「どうぞ、よろしく。よしこさん。少しだけ、お邪魔してよろしいかしら?」

「お席を外させていただきます。どうぞ、ごゆっくり」


 よしこが外した席に、雅がすべり込む。


「叔母様って、華族なんですね」

「今さら何言ってんの。そんなことより、お返事が来たわよ」

「返事?」

「ああんもう。星児さんに決まっているでしょう。お見合いのやり直し、英語で『リターンマッチ』ですわ!」

(お見合いって決闘なの?)


 中座しかけたよしこの足がピタリと止まる。

 耳がピンと立っているのがわかる。


(盗み聞きは、はしたなくねえのかよ…ん?)


 よしこだけではなかった。

 ホールにいる双子姉妹も聞き耳を立てている。


(あいつらあ。仕事しろって)


「今度の日曜日なら、お店も定休日でしょ。大安ですし、そこにしたわ」

「ええ?そんな急に?こっちにも心の準備とか…」

「場所は、どこがいいかしらねえ」

(聞いちゃいねえ)


「あの。差し出がましいようですが……」


 悪役令嬢が割り込んできた。


「場所は、凛音さんのお人柄が最も表れる、このカフェがよろしいんじゃございませんこと?」

「な、なにバカなこと言ってんのよ!」


 厨房やレジを含めた従業員全員が大きく頷いた。




つづく



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