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第8話 次の一手

昼休み、学園の屋上にてセシルは愛武が来るのを待っていた。

今後の目標に関する情報を共有するためだ。


「恋道愛武、お呼びに参じました」

「あら、遅かったじゃない。お姫様のお相手に忙しかったのかしら」

「よくわかりましたね」

「感よ、感」


今朝の出来事を考えればなんとなく答えが見えてくる。

愛武がいない間、ずっと孤独だったノエルにとって今日は構ってもらえる絶好の日だ。

それにあの反応から見てノエルは愛武に惚れているのが容易にわかる。


「それで次はどうなさるんですか」

「それはもう決まっているわ」


セシルはポケットから一枚の写真と二枚の紙切れを取り出す。


「そちらは?」

「次に狙う相手とそれに関する情報ですわ」


握られた写真にはアロンダイト学園の学園長、ランスロット卿が写っている。別段変わった様子はない、問題は紙切れの方だろう。


「とりあえず、こちらを見た方が早いと思いますわ」


渡された二枚の紙切れに目を通す。そこには目を疑うような事が書かれていた。

一枚目の紙にはランスロット家の金銭の流れ、それが裏社会に通じており違法とされている物品も載っている。

二枚目の紙きれは古めかしい物だ。だが、そこに載っている事には目が離せない。書かれていたのは十年前の戦時中にランスロット家が王国を裏切り敵国と結託していた時の条約の紙だ。

前者はともかく、後者の事実だけで王国を揺るがすほどの効力がある。


「……どうして、こんなものを持っているんですか」

「あら、貴方はご存じでしょう。わたくしが敵国の”元・王女”であることくらい」


セシルの本当の血筋は敗戦した隣国の王族だ。この事実は敗戦を確信した父である皇帝の命令によって替え玉を作り、抹消された。幼少期のセシルがそのことを知ったのは十歳になったころ、同じく裏切っていたモードレッド家に引き取られた彼女に義理の父が真実を話したことで判明した。


「知っていましたが……その事実を言いふらせば簡単につぶせるのではないでしょうか?」

「そんな事をすればわたくしの家もつぶれますわ、だからこうして利用しようと考えているのですわ」

「なるほど」

「貴方、外にいる神の世界から来たと言うのにそういうところは鈍いのね」


セシルは呆れる。

こちらの企みをある程度知っていると言ったのだからこの程度は把握しているものと思っていたからだ。


「それで、こちらをどうお使いになられるのですか」

「これを使って理事長、サリス・ランスロットをわたくしの配下にしますのよ。そしてこの学園、アロンダイト学園を掌握してわたくしの活動幅を広げますの」


セシルの次の一手は学園を掌握し、自身の裏の活動拠点として手に入れることだ。

だが、情報はあっても使い道がわからない。


「目的はわかりましたけど、どうやって配下にするんですか?」

「この情報と引き換えにわたくしに忠誠を誓わせるのが作戦でしてよ」


愛武は一瞬戸惑った。その作戦が本当に成功するのか、過去に手を組んでいた言っても過去は過去、今更忠誠を誓わせるのは無理がある。


「いつやるんですか」

「今夜ですわ」

「……本当に大丈夫なんですか」


ますます不安になる。セシルに惚れているとはいえ、突拍子の無い行動によって身を滅ぼされれば愛していても助けることはできない。

愛武の問いにセシルは鼻で笑う。


「その為に貴方を引き込んだのよ」

「と、言いますと」

「あー!もう!本当に鈍いですわね!貴方を切り札として連れて行くって話よ!」


セシルは激昂する。今夜立てている作戦は何年も前から立てていた物だが、愛武が配下として実績を上げた今、ランスロット卿と対等に接するには彼が必要なのだ。


「失礼しました。わたくしを必要としていただき感謝します」

「わかっていただけたのなら、それでいいですわ」


セシルは少し疲れた顔をするが今夜の事を考えれば疲れていられないと調子を戻す。


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