第6話 事件の終幕
ランクル・ロイズ伯爵拘束後、彼の証言の元事件に関わった者全員が捕まった。
あの日伯爵邸に居たのはランクルと従者のみだった、親族の者たちは皆事前にランクルから話を聞き逃げていたとのこと。
結局その親族たちも後に捕まり、ランクル同様『国家反逆罪』と『殺人未遂』で死罪を言い渡されていた。
ランクルは言い訳もせず、こちらに都合の良い証言だけしてくれていた。おそらくセシルが関与していることにも感づいているだろう。
マーガレットを監禁していた原因である、上手くいっていないと言っていた商売も本人に商才が無かっただけで魔性の宝石、もとい『魔鉱石』自体の需要自体は年々高まっていた。
その事実を知った当人は乾いた笑いしか出ていなかったが、ひとまずこれで……。
「オーホッホッホ!一件落着ですわね!」
「そうですね、お姉さま」
隣に座るマーガレットが同意する。
ランクルを拘束してから数日後の現在、バルコニーで紅茶を飲みながら新聞を読み世間の反応を見ていた。
「……マーガレット、少し距離が近いですわ」
「そんなことありませんわ」
あの後、愛武と合流したセシルはマーガレットの事を説明し記録を改ざんした後、保護した。
保護したと言っても正確には”買った”と言った方が正しい。表向き王国に奴隷制度は無いものの、裏では奴隷商売が犯罪組織によって行われている。
もし、あのままロイズ家の人間として保護されいていたら今頃処刑されていた。そこで知り合いの奴隷商人にマーガレットを預け、特別枠で買ったと言う訳だ。
「それよりお姉さま、遊びましょう」
「わかったわ、でもその前に一つよろしいかしら」
「なんですか?」
「どうしてその男もここに居るのかしら」
「なにか問題がございましたか、セシル様」
しれっと向かいに座っている愛武に悪態をつく。
少なくとも今日は招待していないはずだ。
「わたしが家に入れました」
「……そう」
(マーガレットには常識を教えないといけませんわね)
眉間を押さえ考え込む。
どうやらマーガレットは長い間幽閉されていたせいで常識が少し曖昧らしい。
一応、一般常識や言葉遣いに関しては教育したつもりだが足りなかったようだ。
「貴方、ここにいてよろいしいの」
「?よろしいとは」
「貴方ね、名目上第二王女の騎士なのだからこんな所にいたら嫌味を言われますわよ」
事件を自力で解決した優秀な騎士だとしても王女の側にいないと言うのはかなりの問題だ。
「それならご安心を、ノエル様や周囲の人には貴女に会いに行くと伝えましたから」
「そういう問題じゃありませんわ……」
本当に頭が痛い、この男に振り回されるとは考えもしなかった。
「それでお姉さま、なにをして遊びますか」
「そうね……」
マーガレットはキラキラした視線でセシルを見つめる。
その期待に応えようと少し考えてみる。
「それじゃあ今日は魔法を使ってお人形遊びをしましょう」
「わたし、お人形持ってくる!」
人形を使うと聞いた瞬間、マーガレットは急いでセシルの部屋に人形を取りに向かった。
その様子を愛武はほほえましそうに見ていた。