第2話 第3者の疑い
暇だったので書きました
ノエル王女殿下暗殺未遂事件から数日後。王国中がこの一件で持ちきりだった。
警察や軍隊による大規模捜査、新聞社の記者や探偵による独自捜査、ありもしない噂話等々、国中が混乱していた。
「オーホッホッホ!計画は失敗しましたが王国は混乱しましたわ!」
事件の影響を受けて学園は休校。
セシルは自身の部屋で新聞を広げ高らかに笑う。
「さすがです。セシル様」
「…………貴方は貴方で喜んではダメじゃないのかしら」
隣の席で称賛を贈る愛武にツッコミを入れる。
事件現場にいたノエル王女の騎士である愛武は王女殿下に怪我を負わすことなく素早く助けたことが評価され、新聞社各所で持ち上げられている。
「私はセシル様に忠誠を誓った従順なる下僕ですので」
恋道愛武に忠誠を誓えと言ったあの日、この男はそれに承諾した──。
「わかりました。では誓いましょう」
「ほ、本当に言ってますの……」
「はい」
目の前の男に正気を問う。もし、本当なのであれば喜ばしいことなのだが、この男の場合は不敬罪による処刑は免れない。
仮にもノエル第2王女殿下に使える直属の騎士だ、もし他言しようものなら前述した通りになる。
「貴方、ひょっとしておバカなのでは?」
自分のしていることに自覚が無いのかもしれない、でなければこんなにもあっさりと裏切ること等あり得ない。
「そうかも知れませんね、ですが私は本気です。貴女に忠誠と約束をしましょう、必ず世界を貴女の手に世界を納めると!」
この男がなにを考えているかわからないが、目がガチガチにキマっているなのは確かだ。
忠誠を誓い寝返った事実を受け入れると変に安堵してしまい、少し呆れてしまう。
「はぁ、貴方が忠誠を誓ってくれたのはわかったわ。とりあえず今回のことは見逃してもらえます?」
「わかりました、今回の爆発事件は隣国による仕業だと考えておきます」
そして、現在に至る──。
「そう、ところで一つ質問があるのだけれど」
「なんでございましょうか?」
「どうして、わたくしの部屋にいますの」
今日の予定に他人との交流は無い。
今さっき新聞を広げて笑っていたら、いつの間にかそこにいた。
「モードレッド伯爵からの許可は取っております」
「そう言う問題じゃありませんわ」
お父様からの許可が出たからと言って、思春期の麗しき乙女の部屋に気配もなく上がり込むとはけしかりませんの。
「セシル令嬢に相談したいことがある、と言ったら許可がおりました」
「お父様…………」
なぜそれで許可がおりたのか理解できてしまう。先日の暗殺未遂事件をダシに通ったのだろう。
もちろん、モードレッド伯爵はセシルが仕組んだことは知らない。事件の相談と言う名目だからだ。
「それで、本題はなんなんですの」
王女殿下の側を離れてここに来たと言うことは何かしら事情があったと言うことだ。
それでも気を抜いてはいけない、愛武がセシルを脅迫するだけの材料がある、故に相談と言う名目が嘘の可能性もある。
セシルは依然として警戒心を強めている。
「先日起きた暗殺未遂事件ですが、実は貴女以外にも事件に関わっている第3者の存在が浮かび上がってきました」
「そう」
どうやら、事件には同じ考えの者が別にいたらしい。
その事実を聞いてもセシルは動揺せず、机に置いていた紅茶に口をつける。
「なにかご存知ではありませんか」
「さぁ?どうでしょう」
本当は第3者が何者なのか知っているが、この男にただで教えるのは癪だ。どっちつかずの反応をし、お茶を濁す。
「…………教えていただけないでしょうか」
「いや、ですわ。貴方がわたくしの下僕ならばそれくらいわかるでしょう?」
はっきりと断る。いくらこの男に脅されようとも両親から教わった気高さを捨てる気はないのだから。
「では、どうすれば教えていただけるのでしょうか」
「ですから教える気は──いえ、気が変わりましたわ」
セシルの気が変わった。この事件の第3者の存在、それが何者なのかを知っているセシルは関わっている理由も知っている。
その理由を考えると悪い不敵な笑みがこぼれる。
「教えるのには条件があります」
「なんなりとご申し付け下さい」
「貴方が事件を解決しなさい」
セシルは自身の頭の中で計画を立てる。その一手として愛武に事件を解決してもらう必要がある。
「そして、このわたくしを同行させなさい。それがわたくしの一手、ですわ」
セシルにとってこの一手は重要だ。
今回の事件、セシルの他に暗躍第3者を陥れ全ての罪を擦り付ける。その為にもこの一手は失敗できない。
「承知いたしました。私とセシル様で事件解決を計り、必ずや第3者に全ての罪を擦り付けます」
「よろしくお願い致しますわよ」
言っている事は最低だが何一つ間違っていないのもっと最低だ。
(ひとまずはこれでこの男の動きが操れますわ、それにわたくしの計画がより念密になる……一石二鳥ですわ!)
「オーホッホッホ!」
セシルは自身の計画が現実的になりえる感覚に喜び、声高らかに笑う。