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第10話 事件を知るもの

サリスは内線電話で体育館の警備を払い、セシルと愛武を連れて行った。


「ここなら外部からの邪魔は入らない」

「それで、どうしてこんな場所へ来たのですか」


愛武は質問する。お互いに脅威と言える情報を持っているとはいえ、なんの考えも無しに動いているわけではないはずだ。

その質問にサリスは疑問を抱きつつもにこやかに返す。


「おや、優秀な君なら検討はついているんじゃないかな」

「決闘……と言う事でいいんですよね」

「いかにも、この国の伝統にのっとってね」


この国には誰しもが行っている物がある。それは決闘だ。もめ事が起きたや不満が起こった際に決闘でけりをつける文化がある。これは法律で決定されている事だが、決闘を行う際は話し合いの末、両者が納得の上で互いに代表者一名で決闘すると言う内容だ。


「君が来たと言うことはどうせバレたのだろう、過去の裏切りが。入学しに来た時は少し驚いたがな」


大方の予想はついていた。初めて会った時には幼子であった元・王女が今こうして入学を経て会いに来ていると言うことは、嫌でも予想できる


「決闘は互いに了承の上で行われます。こちらはまだ了承したわけではないのですが……」

「どちらにせよ了承するだろ、この状況じゃ」

「っ……!」

「その決闘、受けますわ」

「セシル様!!」


声を上げる、不安があった。セシルは学園の高嶺の花であり、成績優秀な貴族であり元・王女であるが相手が悪い。

相手は名門私立アロンダイト学園の理事長にして大貴族ランスロット卿の当主だ。実力を考えれば代表に選ぶのは愛武が適切だろう。


「恋道愛武!貴方がわたくしの忠実なるしもべならば信じなさい、わたくしを」

「……承知しました」

「よろしいですわ」


セシルは愛武を鼓舞する。

主である自分自身を信じさせ前へと送り出すように、セシルにとって愛武はあくまで一つの駒であり、手段である。

だからこそ今回の様に自分を動かさなければならない様な状況なのであれば迷わずに動かす。


「話は終わったか」

「ええ、終わりましたわ。さあ、わたくしの実力をとくとご覧にして」


セシルの実力はせいぜい学園の上位十数人レベルだ。対するサリスの実力は王国きっての精鋭部隊に届きうるレベル。

サリスとセシルとの実力の差は天と地ほどの差だ。


「始める前に言っておくことがある」

「なんですの?」

「もし、君が負けたら君と恋道愛武をこの場で殺す。君が勝てば君の忠実な下僕になろう」


サリスの提案は強者の余裕からくるものだった。セシルと愛武の2人を相手にしてもまったく問題はないと言う見下した発言だ。

それを聞いたセシルは軽く笑う。


「問題ありませんわ」


まさか、自分の方から条件を提示してくるとは…‥思いもよりませんでしたわ。ますます欲しくなりましたわ、ランスロット卿。


「では、始めようか」

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