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第八話 人の本性を引き出す

二人の本当の絆のため、思い切りましたが、なくてはならない描写をいれました。

「聞かせて」

「うん」

 和叶と愛助は二人っきりの教室で、席をぐるっと回して隣り合わせにした。


 夕日に染まったカーテンが、風で揺れる。


「おーい、ボールあっちいったぞー」

という野球部の声が校庭から聞こえた。


 窓から少し入ってくる風が心地よい中、黄昏の中、二人は話を始める。

「頭の中ぐちゃぐちゃなんだ、上手く言葉に出来るか分からない。それでもいい?」

 愛助はうつむきながら、それでも目は和叶の方に向けて話した。


「いいよ」

 和叶はうんうん、と優しく頷いた。

「君に対してずっと思ってた事も言うかもだけど」

「何?」

 素の自分同士で話せるようになった仲だけど、それでもモヤモヤしてたこと。愛助はこれを機に和叶に話したかった。

でも、今の関係がきぐしゃくしちゃうんじゃないか、と考えてしまって言えなかったのだ。

「えっ、まさか!?」

 和叶がきゃーと両手で口に手を当てる。

「告白か〜、照れちゃうなあ〜」

 和叶はおどけた口調で、その場を茶化す。

「へ、変なこと言わないでよ」

 和叶は、にへへ、と笑った。

愛助は、君ってさあ……なんて言ったが、おかげで少し気持ちが楽になっていた。


 ――そして。


「言いたいこと、吐き出しちゃっていいよ。

私も愛助に聞いてもらったんだからさ。そのために一緒にいるんでしょ?」

 和叶はまっすぐ愛助を見て伝える。

「ね、せっかくようやくお互いの事ちゃんと知れたんだもん」

 和叶は力強い表情で、なんでも受け止める覚悟を見せた。 


 そうならば、話しても大丈夫だろう。愛助は心に決めた。

「まずは、さっきあった事なんだけど……」

愛助は、先に先生に呼び出しをくらって一対一で行った、発音テストの事を話した。



***


「そっか。大変だったねえ。

笑顔で優しそうな先生だと思ってたんだけど、なーんかあるなってなんとなく私も感じてたよ」

「和叶にも分かった?」

「うん、私はずっと周りの人の顔色うかがってきたから直感で、あ〜、裏の顔がありそうって大体分かるようになっちゃったんだよね。でも、溜め息に舌打ちはさすがにひどいかも」

和叶はうーん、と眉をひそめる。


「いいんだ、僕が悪いから……」

 愛助は目を伏せがちになり、声が小さくなっていく。

「悪いって? 話さないんじゃなくて話せなくなるんでしょ。悪いとかそういう問題じゃなくない?」

和叶は心底不思議だ、と言わんばかりに愛助に問いかけた。

「そうかな」

「悪くないよ、なんで悪いになるの? 意味わかんないな私は。そういう決めつけ」

 和叶も、変えたくても無意識に出てしまう表の顔があり、そのせいで悪く言われる事がある。

いい子ぶって、だの、自分が中心でいたいの?だの、陰口を散々言われた。今だって時々言われている。

だから、和叶は、

「自分でどうしようも出来ないこと」を゙悪と決めつけるのは嫌だった。

「だって、頑張ればきっと皆と普通に話したり、固まらずになるかもしれないのに、さ……。

努力が足りないんじゃないかって思うんだよ」 

 和叶はむーと頬を膨らませて眉を逆八の字にした。

「もう、私たちは、外したくても外せない仮面みたいなものがあるわけじゃない?

自分でちゃんと努力して、もがいてもがいて今はどうしようもなくなってることを【悪い】って決め付けるの禁止にしようよ。苦しいだけだよ」

「そうだね……ありがとう」

 愛助の声の大きさが段々と戻っていく。

「うん!」

 和叶はにししと笑って、じゃあハイタッチハイタッチ! と手を出してくる。

今それやる? と愛助は苦笑したが、和叶はやるやる〜! とはしゃぎだした。


「黒井先生、多様性がどうのとか言って、全然分かってないよね。人それぞれなのに」

「まあ、僕の場合好きでこうなったわけじゃないけど……」

「あ、そうか。個性とかとは違うもんね。私も仮面の私を個性なんて言われたら嫌かも。ごめん」

 和叶はちゃんと悪いと思ったら謝ることが出来る。言葉もまっすぐぶつけてくれる。行動も発言も素直だ。

きっとこれが良くも悪くも「本当の和叶」なんだな、と愛助は思った。


 夕日が段々落ちていき、下校の時間も早まる。

愛助は、

「多分だけど、僕は相手の本性を引き出してしまうのかもしれないんだ」

「引き出す?」

「表の状態で、話せない、動けない状態だと、意地を張って【話さない】って思われたり、何かをしたくないから【動かない】って、勝手に想像で色んなことを言われるんだ」

「ああ、そっか……」

「そして、最初ニコニコしてた人も、そんな僕を見て冷たくしたりする。なんなら、本当の自分でいて嫌われた方が全然マシなんだ」

「なるほどね」

「でもそれは、逆にも言えるんだ」

「逆?」

「素の自分じゃない時に気に入られること。いや、これは気に入られてると言えるのかな……。

それもすごく嫌なんだ。

例えば、【世話焼きな女子】や【女の先生】に多かった。

表の僕は、抵抗しない。動けなくなったり、言葉も発せない。何も出来ないように見える。 

背が小さいことや女子が好きな髪質をしているらしい事も加わって、

まるで【愛玩人形】【可愛い赤ん坊】みたいな扱いを何度も何度もされてきた。

男の支配とはまた違う、女特有の【母性の支配】だ、って僕は感じたよ」

 ついに踏み切った。愛助は少し興奮して息切れをしていた。

和叶はどんな反応をするんだろう?

もしかして自覚はないかもしれない。でも割とはっきり分かるように言った……つもりだ。

これで嫌われたら嫌われたでそれでいい。それまでの関係という事だったのだから。


「それは……」

 聞き終えた和叶は、口を開いた。 


 ――二人の間に静寂が出来た。

そろそろギャグもいれたいですね、もう少し…!

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