第一話 入学式
プロローグが長くなってしまいすみませんでした(汗)
かなり重要な部分でしたので、夢中で書いてしまいあんな文字数があったとはと後々焦りました。
プロローグに比べ、
今後は1話ずつ約1500〜2000文字前後ほどで書かせて頂きます。
どうぞよろしくお願いします。
あの七夕の夏から月日が過ぎ、
桜の花びらが舞う、四月。
六年一組達は無事に進級し、中学生となった。
あれから和叶は髪が伸び、薄いオレンジのロングヘアにメガネをかけるようになった。
入学式当日。
和叶は母親と共に学校へ向かう。家が近いため、歩きで行くことになったのだ。
びしっとしたスーツを着て凛々しい母と共に、和叶もついていく。
なるべく、母と歩幅を合わせて背筋を伸ばし、恥をかかせないよう必死についていく和叶。
***
長い式典が終わり、皆は次々とクラス表を見に行く。
クラス表を見て、
ねー、また新しいクラスだねー、
よろしくなー!、などと一年生達が話している。
「私は……」
和叶は、一年三組だった。
「あら、同じ小学校の子達もそれなりにいるのね」
母の一言一言に、何か気に障るものがあっただろうか、と内心びくびくしながらいる和叶だった。
母と一緒に教室まで歩いていく際も、機嫌を損ねないよう必死にしていた。
教室の前にある席順表を確認し、自分の席の近くには愛助の名前があるのに気付いた。同じクラスだったのか。
そういえば、母の事を気にしすぎて、自分の名前しか探していなかったことに和叶は気づく。
やはり新学期は名前の順だった。
「佐藤和叶」
そうシールが貼ってある席を見つけると、ちょうど前の席に愛助の姿があった。
「あ、愛助。またよろしくね!」
和叶はニコニコ声をかける。
すると、離れたところから、小学校の友達数人が和叶に話しかけだした。
「和叶ー!またよろしくー!」
「あっ、うん、よろしくねー!」
「また仲良くしよーね、カナっぺ〜!」
「もちろん!」
「わかちゃん、また勉強教えてくれー」
「オッケーだよ!」
母に恥じぬように、余計にいい子の自分を見せた。
和叶の母は愛助に、
「よろしくね、愛助くん。またうちの子が同じクラスになったから」
と言い、声をかける。
愛助はぺこり、と頭を下げると、
そのままうつむいた。
「周りから散々聞いていたけれど、あんな無愛想で暗い子にならないようにね、和叶」
和叶の母は、座る彼女にヒソヒソと小声でそれを言う。
「え、えっと」
和叶は、母と愛助、双方の顔を見て困惑した。はい、と言ったらきっと愛助が傷つくだろう。
ヒソヒソ声といえど、近距離だから会話はおそらく愛助に聞こえている。
しかし、母はそんな和叶を見て、
「さっさと返事しなさい。だらしないわね」
とキツく言った。
母は和叶に対しては、皆がいようがいまいが「しつけ」を行う。
そんな時、教室に担任の教師が入ってきた。若く、長身ですらっとした女性であった。
それを見た保護者達は、教室の後ろに移動しだす。
「生徒の皆さん、保護者の皆さん、私が担任の清水慈です。よろしくお願いいたします」
まるで、宝塚の男役のような、キリッとした出で立ちと話し方。
素敵ね〜、なんてその場にいる女生徒や、母親達が次々と言う。
「この度はご入学、誠におめでとうございます。つきましては……」
***
先生の説明が終わり、保護者はぞろぞろと教室の外に出て、この後我が子と記念写真を撮るために玄関に向かう。
「そういえば、愛助の親御さんは?」
和叶は、愛助に話しかけたりする親らしき人がいなかった事に気づく。
会った事がなかったが、どうやら仕事の都合でどうしても来れないということが筆談で分かった。
「そっか、大変なんだね」
和叶は、内心羨ましいとすら思ってしまった。
だって、いつも以上に親を気にしなくて済むからだ。保護者同伴の行事は、和叶にとって地獄だ。
「今日も、頑張らなきゃ」
生徒が記念写真にぞろぞろ玄関に向かう頃、和叶は決意して教室を後にした。
次からは物語の基盤となる話に突入します。
2人が秘密を共有しあう話になります。
是非また読んで頂けると嬉しいです。