この素晴らしい部活に新キャラを!
そのまま二週間ほど、本当に何事も無い時間を過ごして行った。
朝の教室はいつもざわめいている。が俺は特にすることもないので一人本を読んでいる。
「おはよう、諸君。今日は少し用があるからな、面倒なことは無しだ。」
こいついつも適当な理由つけて朝礼無くしてんな、まぁ別に良いけれど。美人だし。ちなみに独身らしい。美人で独身、これが一番マズい。
「今日は諸君に新しい仲間が来た。」
先生は扉の外へ入れ、と目配せした。
転校生か、定番だけど不思議な時期である。二週間くらいは早められなかったのだろうか。
ガラッと扉が開く音がした。そちらに目を向けると金髪ロングな美少女がいた。そうか、転校生は何も国内だけからくるわけじゃない、帰国子女もいるのか。うちの学校も随分グローバルになったもんだ。
「hal、、、じゃない、こんにちは!イギリスから転校してきまシタ。藍崎・ティオランド・真白デス。変な時期に転校しまシタが、全然サイキックスとかじゃないデスよ。よろしくお願いしマス。」
他の人はサイキックがどうとかいうくだりが分からなかったのか、一瞬キョンじゃなくてキョトンとした感じになっていたが、別に気にしていないようだった。
転校生ブームもどこ吹く風、今日も今日とて俺は部活に向かっていた。
部活の戸を開くと玉敷が迎えてくれる。
「三軒茶屋くん。こんにちは。」
最初の時以来苗字呼びに戻ってしまった。惜しいことをしたもんだ。
くー、やっぱ人生 この時のために生きてるようなもんよね。
玉敷に挨拶を返し、他の二人を見る。
今日も二人でなんかやってるようだ。それにしてもよく毎日甲斐甲斐しく来るものだ。皆勤賞ではないのだろうか。だが、規定の一ヶ月に到達したら別のところに行くだろう、多分。
しばらくそんな時間を過ごしていると、不意に扉が開いた。
「こんにちは!このクラブにジョインしたいんデスけど、、」
やたら発音がいいクラブとジョイン、そして少しカタコトな日本語が聞こえた。
そう、そこには件の転校生、藍崎・ティオランド・真白がいたのだ。
「真白ちゃん!」
真っ先に反応したのは玉敷だった。
「照葉!照葉もこのクラブに入ってるんデスか?」
「そうだよ。」
この二人は知り合いだったようだ。転校したてでクラスも違うのに、、、リア充同士には何か特殊なコミュニティが存在するのだろうか
「もちろん!新入部員大歓迎だよ!」
玉敷が答える。しかし、多分新入部員大歓迎なのは玉敷だけであるし、なんなら下級生二人は侵入部員くらいに思ってると思う。
「thank you 照葉!」
「あーそうそう、この男の子は三軒茶屋くん。そこの二人は一年生の海住さんに已結さんだよ。」
そう一人ずつ部員を順番に紹介して行く。
「三軒茶屋さん、海住さんに已結さんデスか。皆さんよろしくお願いしマス。」
「ああ、うん。よろしく。藍崎さん。」
よろしくお願いしたいわけではないけどネ!
「ハイ、呼び捨てで構いまセンよ。それも名前で。こっちには「さん」とかつける文化がなくて、ちょっと慣れないデスし。名前の方が、ワタシのアイデンティティを感じますし。」
「そう、じゃあ俺も扉でいいよ。」
「はい!よろしくお願いしマス。」
「あ、あの、、よろしくお願いします!」
「まぁ同じ部活ですからね、一応はよろしくお願い致しますわ。」
珍しく下級生二人も参加してきた。
二人の言葉、いや已結の言葉を聞くと真白は目をぎらつかせる。
「oh、已結ちゃんであってマスよね。名前はなんて言うんデスか?」
「え?、あー、穂希、です。」
なんか随分引いてるみたいだけれど、て言うか穂希って言うんだ。ここまで知らんかった。
真白の攻撃はまだ終わらない。ずっと俺のターン!
「そうデスか、趣味はなんデスか?」
「読書とか映画なんかを少々、嗜む程度ですが。」
「oh!ワタシも映画大好きデスよ!どんなのが好きなんデスか?」
「え、、ええと、、。」
「ちょっと、先輩!近いですよ。」
海住が間に入った。
「ああすいません。ちょっと興奮してしまいまシタ。」
「な、なんで穂希ちゃんに興奮するんですか!」
なんでちょっと怒ってんの?確かに初対面であれをやられたら困る。さすが帰国。距離感が違うのだろうか。
「まぁまぁ落ち着いて。」
玉敷がたしなめる。
「ていうか真白、なんでこんな部活に入ったんだ?」
入学して早々「文化部」なんてよく分からん名前の部員も少ない部活に入るのは不思議だ。まぁすでに二人いるんだけれど。
友達も多そうだし、そいつらがいるバド部やらバトン部やらに行くのが定石だろう。
「ワタシ、ジャパンのカルチャーが好きなんデスよ。まだ全然詳しくないんデスけれど、もっとたくさん知りたくてこの部活に入りました!文化ってcultureってことデスよね?」
「あー、そうなんだけれどね、、、」
玉敷が苦笑しながら答える。
「ぶっちゃけ今は一年生と二年生で別れてボードゲームをするだけというか、あんまり活動らしい活動はしてないの。」
「そうなんですか。それならこれからじゃんじゃん活動していきまショウよ!」
真白はなるほど、と少し考えて後輩二人の方を見た。
「そこの二人も一緒にやりまショウよ!」
「まぁ、私は別に構いませんわ。」
「えええ!穂希ちゃん、それ本当?」
「ええ、まぁ。仮にも同じ部活の先輩ですし、関わり合いも大事ですわよ。」
已結、恐ろしいほどの手のひらドリルだ。今まで口すら聞こうとしなかったのに。
何が彼女を変えたんだろうか?
「まぁ、私はそれでもいいんだけれど。今までいやだって言ってたのは穂希ちゃんじゃ、、、まあいっか。」
「それで、どんなことをするんですの?」
真白がさっきから何かをずっとぶつぶつ言ってる真白の方を向いて聞いた。
「ですわ、ですの、ですわ、ですのですわ、ですのですわ、ですの」
こいつは何を言ってるんだ?教育教育死刑死刑?
「おい真白、聞かれてるぞ。」
「え、あーすいません。そうデスね、何をすれば良いんでショウか?」
と真白は何故かこっちを向いた。俺に聞いてるの?アニメ文化を広めたいんだったらみんなでEVAでも見たら、としか言えないど。
「そう言われてもなぁ」
さっきの考えを口にするわけにもいかず、俺が返答に悩んでいると、隣から声がした。
「真白ちゃんは日本のどんな文化を学びたいの?」
「もちろん、すべての文化デス!」
即答した。全てて。もっと具体的に欲しい。
「と言うか、なんでお前はそんなに日本の文化を学びたいとか思ってるんだ?」
「そうデスね、、初めは小さい頃にお父さんが見ていたアニメがトリガーデスね。『涼宮ハルヒの憂鬱』だったんですけれど、分かりマスか?」
「ああ、もちろんだ。」
「当たり前ですわ。」
と、まるで常識とばかりに言う二人。(俺と已結)
?と言った感じの表情なのが海住。
「それがとっても面白くて、こんなものが存在していたのかとびっくりしまシタ。それで、色々調べたり、見ていく内にどんどんハマって、そんなワンダフルな文化を生み出したジャパンの文化全てを学びたいんデス!そして、最後は自分で小説を書きたいデス。」
「ふむふむ、立派な夢だな。」
まぁ俺も小説書いたことあるけれど、ぶっちゃけなくても黒歴史。僕の分まで頑張ってほしい。
幼い頃から読書が好きだったものの中には、自分で小説を書いてみ流経験がある者も決して少なくないだろう。だが、それを公言するの者は相当少ない
「いいですわね。」
已結も肯定的だ。この反応はもしかして経験済みなのか?でも本当に、小説とか好きな人の半分くらいは自分でも創作にチャレンジしたことがあると思う。
「真白ちゃんの小説私にも読ませてよ!」
大丈夫か?友達に自分の書いたやつ読ませんのとか立派な拷問だぞ。これは多分書いたことないな。
「of course!ただ、今はまだジャパニーズも勉強途中なのでこれからデスが。」
「では、完成したら私にも読ませてくださいまし。」
「はい!」
しばらく談笑していると、下校時間を告げるチャイムが鳴った。
「じゃあ、そろそろ帰ろっか。続きはまた明日で。」
「そうだな。」
「みなさん、どうやって帰るんデスか?ワタシは電車ですけれど」
真白が尋ねた。
「私も電車だよ。二駅だけだけれどね。」
「俺も。」
「私たちは歩きですわ。」
「家が隣なので。」
二人で言葉をリレーする後輩二人組。
今日だけで後輩二人もかなり部活に馴染むことができたようだ。
「じゃあね」
玉敷が二人に別れを告げる。
「それじゃあ」
「ご機嫌遊ばせ。」
帰りの交通手段が同じなので、自然と『一緒に帰る』ということになった。
玉敷と真白が喋っているのを俺は黙って聞いていた。
二駅目に到着すると玉敷が降り、俺と真白の二人、という状況になった。
「扉、ちょっと良いデスか?」
「ああ、うん。」
「已結ちゃんって最初からあんな喋り方なんデスか?」
確かにお嬢様口調だな。一人称も『わたくし』だし、それが気になったのかな?
「ああ、そうだな。珍しい話し方だよな。」
「実在したんデスね!お嬢様口調!もうびっくりしまシタ。それで最初は少々失礼な態度をとってしまいまシタ。」
「そうだな。海住なぜか怒ってたし。」
「なぜかって、それはワタシが已結ちゃんとの距離が近過ぎてしまったからだと思いマス。」
「なんで真白が已結に近づきすぎると海住が怒るんだ?」
「気づいてないんですか?あれは『てぇてぇ』と言うものデスよ。イギリスにもいまシタけれど、ジャパンで見れると感動も大きいデスね!」
真白は目を輝かせていった。こいつは日本の仲良い女子同士は全員百合だとでも思っとんのか?
「いや別にそんなことないだろ。」
「いや、絶対そうデスって。」
間も無く駅に着くことを知らせるアナウンスが聞こえた。
「あ!ではワタシはココで降りるので。」
「おう、じゃあな。」
「では、また明日。」
そう言って彼女は電車から降りて行った。