僕は友達が『少ない』
そもそも俺は部活なんてなくなればいいのにと思っている。部活に入っているか否かで、なぜ差別されなければならないのだろうか?一度考えてみて欲しい。もちろんインターハイなり甲子園なり花園なりを目指して精一杯頑張っているやつは偉い、それに関しては俺も異存はない。でもそれは部活をしていることに対してではなく、何かに打ち込んでいることへの敬意だ。
でもそんなのはほんの一部に過ぎない。ほとんどの者は、その場だけの知り合い(彼らはそれを友人と呼ぶ)と、だべり、騙し騙し練習をするだけである。なぜそれが評価されているのだろうか?別に部活という体裁があらずとも、家で一人読書しても、ゲームしてもいいではないか。
ところで部費とかいうシステムが謎中の謎である。なんで同じ学費払ってるのに運動部のゴミクズリア充どもの備品とかに使われるの?やってる奴らからその都度徴収しろよ。あとなんでボランティア部も部費もらってんの?よくわからんけどそれボランティアじゃあなくない?その部費を使ってなんかするんじゃなく全額寄付しやがれ!
俺が心の中でお気持ち表明している間に、下級生二人組は蝶々喃々と何やら話している。もちろん他の部員に会話は無く、時間だけが過ぎ去っていた。
そこから一夜が明けた。少し悩んだが俺は部活に行くことにした。毎日俺が居座っていれば他のやつらは一ヶ月位経てばやめるだろうと思ったからだ。
家ではやれ部活やれだのなんだの言われるので自由に過ごせるこの部室は手放したくないし、こんな半端な時期に他の部活に行けるならぼっちをやっていない。
意外にも部室は賑わっていた。玉敷さんに後輩二人も甲斐甲斐しくやってきていた。
「扉くん。こんにちは!」
玉敷さんは俺の姿を見るとどこか嬉しそうな表情で話しかけてきた。後輩共はふたりの世界に入っているから、寂しかったのかな?かな?ただ、
「扉くんて」
ぼそっと呟く。ほぼ初対面で下の名前+くんはちょっと破壊力が、まぁ全然問題ないんですけどね!そもそも、今までの人生で『扉くん』などと呼ばれたことがあっただろうか、いや無い!
俺のつぶやきが聞こえたのか玉敷さんは顔を真っ赤にし謝った。
「あ、いや、あの、馴れ馴れしかったよね。ごめん」
いやあ可愛いんだよなこの子、何しても許されるだろ。俺もこんな顔に生まれたかったわ。
「あーいや、全然大丈夫だけど、、、玉敷さん」
「うん。あっ、呼び捨てでいいよ、なんか同級生の子にさん付けはおかしいし。」
結構ハードル高いよそれ?
後輩二人を見るとオセロをしている。二人でボドゲとは、最強の拒絶タイプか。
「三軒茶屋くん、私たちも何かしようよ。ここ、ボードゲームやる部だったみたいだし。色々あるよ。」
女の子にナニかシよっか、と言われて断る俺ではない。もちろんOK。
出てきたのは将棋、囲碁、チェス、麻雀やトランプなんかの王道なものから人生ゲーム、人狼、UNOに花札、果てはよく分からんTRPGまで様々だった。
「へー、結構あるんだね。まあこれでいいかな」
玉敷が手に取ったのは将棋だった。これからの時代は将棋をやるJKの時代になるのか。オンライン将棋二千時間プレイヤーの実力を見せてやろう。ちなみに三段
彼女と束の間の将棋タイムを楽しんだ。玉敷は振り角、とでも形容べきだろうか、振り飛車の角版という奇想天外な打ち方をした。
そんなこんなで時は過ぎ去って行き、部活は解散になった。