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5 そうだよね。青春.....だよね。

 神社に行ってから、1ヶ月くらいが経過した。


 私は、夏休みに入り、本確的に勉強をすることになり今日も塾に篭っている。雪斗くんは、あの件から1回も会っていない。


 家に戻ってきて「.....あの、その....すみませんでしたっ!!正美じゃあなっ!!凜音さんも」と言って、どこかへと言ってしまった。


 当初の目的を達成したため、普通にあー、付き合わせちゃってごめんね。またね。って返しちゃったけど....全然、違う。


 結局、あの一緒にいた時間はなんだったのか....


 あれから、連絡を取ろうにも雪斗くんの電話番号とか知らないし、どうやってあったらいいのか分からないっていうのが実際問題の話。


 まさに、世にも奇妙な物語。


 それに、塾での勉強が忙しすぎて、外に出る余裕なんてないし「ほらっ!!休んでた分、勉強してきなさい。」と、お母さんに言われて、部活にも入ってない私は、猛勉強することになり....


 とにかく、余裕がなくて...


「絵犬...健人......あ、そうだ......頑張らないと」


「健人、私死んだら、会えるかもしれないのに、どうしてこんなことしてるんだろう.....あぁ、死にたいなぁ」


「.......ねぇ......人間って、どうして生きてるんだろうね?健人.....」


「....健人?」


「健人健人健人健人健人健人.........」


 あぁあぁあぁあぁああああああ!!!集中できないっ!!もう.....集中とか以前に、なにもしたくない。なんも、やりたくない。なんも...やる気が起きない。


 と、半ば放り投げるように、塾の机に勉強道具を投げつけて、今は道路を歩いている。


「暑いぃ.....」


 ミンミンミン....セミの声が、響いていて、道路を歩けば蜘蛛、バッタ、蝶々...その他色々な昆虫が動き回っている。


 なんだか...どうしようもなく。どうしようもない....気持ち。今日は、晴天...晴れていて、気持ちがいい。のに、気分は曇っている。


「肩痛い....」


 適当に、グルグル肩を回して、とある道路の柵に寄りかかって、遠くの山を見つめる。


「夏って言ったら、祭りだよね。でも、受験生に祭りなんて....」


 文化祭とかもあるか...文化祭.....


「欠席....になるかな」


 ボソッと呟く。

 本当なら、健人と一緒に回る予定だったのになぁ....


「...........」


 不毛だよね。それに、酷いよね。私....


 俯く....アリの大群が、歩いている。私は、そっと足を前に出した。数秒、いや...何分か宙に浮かせておいた後で、元に戻す。


「............」


 ギュッと、体を抱きしめて、はぁ....と、息をつく。


 私は、アリの大群を避けて、歩く。

 もう...死ぬところは、見たくないはずなのになぁ。


 近くに自動販売機ないかな。

 なんだか...冷たい炭酸が飲みたくなってきちゃった。

 工場のような場所の近くに、自動販売機があったので硬貨を入れて、炭酸を買う。


 ミツ丸サイダー


 プシュッと、軽い音を立てて、蓋を取って、一気に飲み干す。


「ゲホッゲホッつ、つまっ....」


 うっ....気管に入った。最悪だ....ホントに。

 ある程度して、ゆっくり飲み込む。


「はぁ......」


 キツいなぁ。美味しいんだけどね。

 そういえば、神社に行ったあと....健人と行った場所ってどこだったけなぁ。


 このまま、見に行ったら少しは楽になるかもしれない。


「あぁ...そうだ。カラオケだ。他は、ラインで話せるし、ビデオ通話とかしてたけど....」


 なんか、会う頻度が少なかったんだよね。

 今思えば、一般的とはどこかかけ離れた恋愛だったようにも思う。


 まるで、遠距離恋愛をしてるかのようなそんな感覚だった。



「でさぁ...橋本先生が、またテスト範囲広く出してさぁ」


「そっちの先生だと、そんな感じなんだな」


「そうなんだよ。なんで、先生って、私たちの事情とか考えないでさぁ.....って、あれ....凜音じゃない?」



 なにか、背後のT字路から聞きなれた声がした。

 私は、声のする方へと振り返る....正美と、知らない白髪の男同年代くらいの男と一緒にいた。


「凜音ぇ!!久しぶり、なんか痩せた?」


「......痩せたかも。ちょっと、最近少食気味かなぁ....」


「あぁ...その、そう簡単に立ち直れるものじゃないよね。私は、いつでも凜音の味方だから」


「え、う、うん。ありがとう。」


 なんだか、苦しそうな顔で同情してくる正美に、なんて反応したらいいのか分からなくなったけど、とりあえずありがとう。と返しておいた。


 正美は、にっこり笑って、ちょっと躊躇うように私を見た。

 まぁ、大体察しては居たんだけど。


「初めまして、正美の友達の谷口 凜音っていいます」


「あ、ども、君塚 雪宮っていいます。」


 君塚 雪宮は、耳になにか銀色のピアスをしたツーブロックの男だった。


 この人....大丈夫かな。


 人を見た目で判断しちゃいけないけど。

 正美...悪い男にひっかかったりしてないか心配になるなぁ...まぁ、正美の友達でも彼氏でも口出しするようなことじゃないよね。


 ホントに大変だったら、なんか言うだろうし。


「あぁ....私、すぐ塾があるんだった。先行くね」


「え、うん。またね」


 私は、なんだかモヤッとしたものを抱えながら、ちょっと遠くに、離れてからちらっと背後を見る、


 もう、正美はいなくなってしまった。



「.......はぁ」


 盛大なため息と、共に....言葉が合ってるのか分からないけど、凄いやるせない気持ちになった。


 私やっぱりなんのために生きてんのかなぁ



「ただいまぁ」


「おかえり〜、適当に、ご飯作っておいたから、それ食べて。私は寝る。」


「.......わかった」


 ソファで、顔パックを付けて、寝ているお母さんを見て、なんなの。私の前で、そんなに寛いで.、ムカつく。私のことも、考えてよっ!!とか、言いたいけど....そんなやる気も起きなくて、とりあえずご飯をムシャムシャと咀嚼して、自分の部屋へと戻る。


「おやすみなさい」


 天井を天井をぼけぇ...と、眺めて。自分に言い聞かせるように呟く。


 なんか.....



 いや.....




 うん......






 旅に出よう。



 分からないけど....分からないけど、やりたくなった。もう、なにもかもが、めんどくさい。と言っても、私のお小遣いじゃ行く場所も限られているわけで...


 どうしようもない。お金が、ないし...


「はぁ......」


 ベットで、寝返りを打ちながら、考えてたら...いつの間にか、そのまま闇の中へと落ちていた。




「あ....」


 目が覚めると、学校に行かないといけなくなる。

 私は、髪をとかして

 傍から見て分からない程度に化粧をして

 今日の日課の準備をして...電車の代金を用意して、学校へと向かう。


 そう。私に....どこかへと、行く余裕なんか、ない。


「行ってきます。」


「行ってらっしゃーい」


 お母さんは、相変わらずベットて寝ていた。今日は、仕事がないんだろうか。




「さようなら!!」


「さようなら。」



「つうか、もう進学する場所決まった?それとも、仕事する?」


「あぁ....悩んでるなぁ....」


「分かるわぁ....悩むよなぁ」


「先のことなんて、まだまだ分かんないしさぁ」


 それとなく、荷物をバックにいれて、塾へと向かう。

 もう....嫌だ.....なにもかもが、嫌だ。

 バックを肩に背負って、玄関まで早歩きをする。


 今日は、絶対塾を休む。それで...今日は、今日だけは...なんもしない。なんもしないで、彼のことを考える。あ....絵犬を、見てるだけでもいい。


 カチッと、スマホを手に取って、メモを開く。


『努力が....足りないってこと?』


 .....うん。かもしれない。かもしれないけど....そうかもしれないけど。

 でも...分からない。大丈夫。多分、健人のこと....見たら、いい。


 安心するから...きっと...


 ガツガツと、歩く。


「っ....うっ......」


 階段を、降りてる途中で、誰かの背中にぶつかる。そんなに、多分四・五段くらいの幅くらいから、誰かの背中にぶつかり...この声の少しだけ声が低いと男の人が、階段から落ちる。


「あっ...ごめんなさい」


 全く気づかなかった。少なくとも、私より大きな人のことが、目につかなかったのか。


「ぅ......あぁ......うん。いや、大丈夫。かな?いや...多分、大丈夫だと思います」


「あっ....」


 私は、その人のことを知っている。そうだって....名前は、えっと....確か。


「君塚 雪宮」


「はい?あれ...俺、会ったことありました?」


「あ...いや、それより...足大丈夫ですか?」


「んー、っ....!!あぁ...ダメかも、ちょっとくじいちゃったみたいだ。」


 そんなに段数あったような場所じゃないけど...痛そうな顔してるし、多分本当に足が痛いんだろう。と、とりあえず、保健室に連れていこう。

 それで、どうにか...なるかな。


「....なんだ?あれ.....」


「いや...ほら、突き落としたみたいだよ」


「あー、でも、状況的に」


 .....違う。私、別に突き落としたわけじゃない。


「早く保健室に、連れてけよ」


「通行の邪魔だな。」


 そ、そうだ。早く...早く、保健室に連れてかないと。


「すみません。今.....保健室連れていきますね」


「いや、そうですね。起こしてくれませんか?」


「そ、そうですね」


 すぐに、手を貸して...そのまま、医務室へと向かう。

 い、以外と、重い。

 ちょっ...まずっ....


 バタッ


「いっ....」


「.....っ.....!!」


 体に力が、入らなくて...倒れてしまう。

 あ、いや、違くてっ!!その、あの....

 心の中で、弁明の言葉を言おうとしてるのに、中々声にならなくて...どうしよう。私の性で....私の性で....


「ぁ......う...そうだよね。いや、一人によかかった状態だとこうなっちゃうよね。俺が、もっと先まで考えてれば、よかったな。」


「あ.....ご、ごめんなさい。ごめん....なさい。ごめんなさい」


「いいよ。いいから、もう....大丈夫だから。俺も、少し焦ったところあったから...」


「.......今度は、ちゃんと支えるので」



「雪宮くんと、凜音?なにしてるの?帰宅する人たちの邪魔になってるけど」


「正美?」


 どこからか現れた正美に、私は顔を上げる。正美だ...正美が、いる。


「あ...ごめん。正美さん。ちょっと、肩貸してくれないかな?」


「え?それは、いいけど」


「正美ぃ.......」


 私は、正美の姿を見て、正美がいてくれたら問題ないな。と、半ば安堵のようなものを感じだ。そして.....変なモヤモヤしたものを感じていた。




「とりあえず、氷で冷やして、それから...病院で見てもらっていなさいね?何年何組の誰なのか。ここの名簿に書いてね。」


「ありがとうございます」


 医務室に着いて、君塚さんはさらさらと迷うことなく書いていく。

 私と、正美はその様子を見ていた。


 あまり、医務室を利用したことなかったけど...本当に、ベットとか、あるんだ。

 手続きとか、色々大変そう。


「谷口 凜音さん?あなた、君塚さんのことを押したみたいな話になってるみたいだけど...本当なの?」


 情報が早すぎる。なぜ、こんなところに、押したとかそういう話が回ってきてるの?しかも、誤情報だし...


「いや...その、ぶつかってしまったのはそうなんですけど、別に変に押そうとして押したわけじゃないです」


「へぇ.....」


 年配の医務室の人は、氷をビニールの中に詰めながら、どこか問い詰めるようなジトッとした目線を向けてくる。


 多分、嘘をついてるんじゃないか?と思われてそう。少なくとも、噂が立つほどだったら、そっちの方が正しいんじゃないか?と思ってしまうのは、当然と言えば当然だけど...


「凜音は、そんな酷いことをする人じゃない。凜音を、変な凶悪犯みたいに扱うのは、やめてください」


「え...いや、凶悪犯とまでは....」


「波瑠さん。実際に見たわけじゃないんだから...噂は、噂...本人が否定するなら、それは違うってことですよ。私たちは、そこまで言う必要はないと思います」


「........いや、だから....そんな、非難がましいことを言ったわけじゃないんだけどね」


 奥の方から、若い事務員の人が声をかける。

 居心地は、かなり悪い。

 でも、前を見ないでぶつかったのは、私だから....なんとも言えない。


「............」


「谷口さん。別に、気にする必要はないですよ。俺が、気にしてないんだから」


「それでも....」


「ほら、雪宮くんも言ってることだし...凜音は気にしなくていいんだよ」


「...........そう、だね。すみませんでした」


「だからぁ....」


 なにかを言いたそうな正美に、私は俯く。


「あの...私」


「あ、うん。大丈夫だよ。前会った時、塾に行ってるみたいだし、俺はもう大丈夫だから」


「.......はい」


 なにかを言いたそうな事務の先生に、会釈をして私は医務室から、出た。

 どうしていいか分からなかった。もう...なんか、どうしていいのか。






「カラオケ....」


 私は、健人と一緒に行ったカラオケを、思い出そうと今日は塾を休むつもりだったけど...なんだか、行く気が起きなかった。


 そのまま、塾に行かずに...家に行って、誰もいないことを確認して、ベットに横になった。


「.......寝よう」


 目を閉じたら、すぐに眠りに落ちた。


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