ネットは『嘘の世界』なのか
7年ぐらい前の話だ。
当時、私には付き合っている人がいた。
結婚まで考えていて、同棲していた。
距離が近くなりすぎたのかもしれない、私はやたら本音の言葉を発し、それが原因での喧嘩をすることがよくあった。
喧嘩になると二人とも激昂し、普段は言わずに心にしまっていることでも構わず口に出した。
私が彼の欠点をズバズバ攻撃すると、彼も反撃してきた。
私の欠点を、忖度などひとつもすることなく、まっすぐに突いてきた。
「おまえは誰にも影響されてない、1人で生きてきたようなやつだよな! だからわがまま放題で、自分のしたいようにしかやらない! まるで幼い子供だ! もっとしっかりした、一人前の人間になったらどうだよ?」
その頃、私はあるネットのサイトで結構な人気者であることを自負していた。
確かに現実社会では『ダメな子』のレッテルを貼られていたが、ネットではほぼ『クイーンビー』みたいなように持ち上げられ、チョーシこいていた。
しかし彼の言葉は私の痛いところにぐっさり刺さり、私の言葉は弱々しくなった。
「あたし、確かにリアルでは『17歳の高校生じゃあるまいし』って言われるけど……、ネットでは凄い人格者みたいにいつももてはやされるの……なんでだろう?」
喧嘩中ながら、彼にフォローされたかった。
なにか慰めの言葉を言ってほしかった。
しかし彼から言われたのは、こんな言葉だった。
「ネットはニセモノの世界だから。そこでのおまえは嘘なんだよ。ちゃんと現実で生きろや」
そうなんだろうか……。
ネットは、ニセモノの世界で、そこでの私はニセモノなのだろうか。
むしろリアルでは気後れしてしまって言えないことでもネットでは言えるから、ネットの私のほうがほんとうの私みたいな気がしていたのだが……。
そして、今でもそんな気がしている。
それは、嘘なのだろうか。
ここは、嘘の世界なのか──




