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【連載エッセイ】宇宙人のひとりごと  作者: しいな ここみ


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俺は、死んだ。/死んでしまうとは何事じゃ!

人生を虚構にしてしまわないように……

 学生時代、ヨーロッパ文学をよく読んでいましたが、大抵の作品で、人称は三人称(神視点)だったように記憶しています。

 一人称もあったけど、日記だとか回想だとかの形式をとったものがほとんどだったかと。


 日本文学には一人称が多かった気がしますけど、私小説というのか、『私』のしたことを後から振り返り、叙述するという、つまり書かれているのは現在のことではなく過去のこと。

 あるいは現在過去未来問わず『私』の『想い』を綴ったものがほとんどだったかと。


 ところが『なろう』の作品で一人称といえば、ほとんどが現在の出来事の『実況』ですよね?




  俺は6階建てビルの屋上に立った。

  夕陽が山の向こうに沈んでいくのが見える。

  最期に見る景色は美しいって聞いてたけど、ふつうに平凡だなぁ。

  ま、いいか。さっさと飛ぶとしよう。


 「とう」


  アスファルトが凄いスピードでグングン迫ってきた。


  ぐしゃあっ!


  ああ……真っ暗だ。

  真っ暗だけど、いい匂いがする。

  女の子の匂いだ!


 「死んでしまうとは何事ですか!」


  俺好みの女の子の可愛い声が言った。


 「はっ……!? ここは!?」


  わざとらしく俺がそう言いながら目を開けると、俺の好みド真ん中の美少女が眼前に立っている。よく見ればぱんつが透けるんじゃないかと思えるほどに純白のドレスを身に纏っていた。うーん……見えそうで、見えないな。


 「あなたは世界を救う勇者なのですよ」

  女の子が初耳なことを言う。

 「わたしの名前はアルテミア。女神です」


  これって……やっぱりアレか?

  転生とかいうやつなのか?


 「生き返りなさい。それに際してあなたに能力をひとつ、差し上げます」


  わーい、女神さまが俺にこれから何かの能力をくれるらしいぞ!




 内容はともかく、こんな感じが多いように思っています。


 よく考えれば、この書き方って不自然ですよね?


 誰が書いてるのかわからない。


 書いているというよりも、語り手がずっと実況してる声を文章化してるみたいな……。




 でも実況なだけに臨場感は出るし、何より手軽に感情移入とかできて、面白い。

 アドベンチャーゲームやノベルゲームのテキストがこんなだったように思うので、ゲームの影響なのかな? と思ってますけど、面白いのでわたしもこの書き方を主に使っています。


 この書き方だと語り手は死ぬことができないはずですよね。

 お固い文学だと語り手が死ぬのは『語り手が残した遺稿』という形でしかできません。

 あるいはもうちょっと柔らかい大衆小説で『俺はあの時死んだはずだった』みたいに過去形で書くことはできるでしょうけど。

「俺は、死んだ」なんて文章、実況だとできるはずがない。

 死んだ人間が文章を書けるはずないし、実況だとしても──



  見てください! 洞窟の奥にこんな広い場所が……! なんと、村があります! 洞窟の中にですよ!?

  あっ! 奥から人が現れました。群衆だ。みんな手に槍とか斧を持っているぞ?


  わああっ! 襲ってきた! 人喰い人種なのか!?


  ぎゃああっ! 俺は取り囲まれ、四方八方から体をメッタ刺しにされました!


  俺は、死んだ。




 こんな実況できませんからね。


 死ぬ時に実況できるのはせいぜい悲鳴ぐらいでしょう。



 ふつう人間は死んだら終わりですが、ゲームはリセットしてやり直したり、神様に叱られて生き返らせてもらえたりする。

 あるいは死ぬことで転生できて、新しい人生がそこから始まったりする。


 リアルな人間の生も虚構化してるのかな? とか思ってしまいます。


 面白いのはいいけど、それを当たり前のことみたいに思って、ツッコミを忘れることがないようにしたいと思っています。


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― 新着の感想 ―
[良い点]  そうそう!  あたりまえのことに、振り返って、疑問をはさむこと!  大事ですよね。  ハリセンって、「張る」「扇子」なんだ(嘆)
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