20年振りぐらいにコケました
私はコケたことがないのが自慢でした。
何があっても、どんなことになっても決してコケない。
そんなやつだ、自分は。そう誇りに思っていました。
冬の凍結した歩道の上でつるーん!と滑ったことがあります。
両腕でバランスをとって、スケーターのように、華麗に片足で立った姿勢で止まると、通りすがりのおじさんが「おおー!」と言って拍手してくれました。
「はっはっは。大丈夫?」
「はい、大丈夫です」
二人ともニッコニコで別れました。
寒冷地の遊園地で、外を歩いていた時、つるーん!と滑ったこともあります。
股が大きく開いて、裂けそうになりましたが、そのままの姿勢で持ちこたえました。
お土産売り場のお姉さんがウィンドウ越しに見ていて、拍手してくれました。
公衆浴場の床が石鹸で滑りやすくなっていたらしく、脱衣所から中へ入るなりつるーん!と滑ったこともありました。
フィギュアスケーターのようにまっすぐ滑り、ポーズを決めて静止しました。
小さな女の子が見ていて、びっくりしたような顔をしていましたが、私が止まってみせると拍手してくれました。
雨でした。
サービスエリアに車を停めて、トイレに行きました。
売店でポッキーを買って、外に出てみると雨が強くなってる……。
急いで車に戻ろうと、駆け出した時、濡れた路面で足が滑りました。
つるーん!
なんのーっ!
しかし、重心が前に動いてしまいました。
ビッターン!と手をつく格好で、前向きにコケました。
その勢いでポッキーが飛んで行きました。車の下へ入り込み、3メートルぐらい滑って、車の向こう側へ飛び出していました。
20年振りぐらいのコケでした。
寒冷地にいた時に身につけた『すり足』が、いつの間にか甘くなっていたようです。
幸い膝を擦りむいた程度で済みましたが、次にコケたらこんなものじゃ済まないかもしれない。
頑張ります。




