『言った/言ってない』はやめましょう
仕事を終わり、16時半に会社に帰ると──
社長「アレ、やってきた?」
私「は?」
社長「言ったでしょ! 帰りにアレやっといてって!」
私「聞いてません」
社長「あー、もう! 明日からしいなさん、関東行きだから、その前にアレやっといたら楽でしょって思って、言ってあげたのに!」
私「明日から私、関東行きなんですか!?(初耳)」
社長「そうよ! だから『その前にアレやっといたら楽だよね?』って言ってあげたら、しいなさん電話で『はい、そうですね』って言ってたでしょ!」
私「あー……」
そう言えば10日ぐらい前に同じやり取りを電話でしたことがあった。
どうやら社長はその時のことを今回したと、記憶が混同しているようだ。
この会社の予定はいつも大概直前になって知らされるので、次の仕事が決まったら大助かりである。私がそれを聞いて覚えていないわけがない。
私にとっては、とっても重要なことなのだ。
社長にとってはそれは結構どうでもいいことだ。10日前にしたそのやりとりを『今回した』と勘違いしていても不思議はない。
とりあえずせっかく今日の仕事終わりと思ってたらもう一個増えた。
説明すると長くなるので『アレ』と略したが、まぁ20分もあれば終わる仕事である。
でも、一度車庫に帰ってからでなく、帰りがけにやっとけば、たぶん10分ぐらいで終わってた。
「こないだそういうやり取り、しましたね。今回は聞いてないですよ」と私が言うと──
「こないだじゃないでしょ! しいなさん『はい、そうですね』って電話で言ってたでしょ!」と、社長は10日前のことはどうも覚えていないようだった。
まぁ、『言った/言ってない』の真相は正直どーでもいいのである。
ただ、どうせ私がいなくなった後で『アイツは人の話を聞いとらん』と、いつもの悪口を言いふらされているだろうことがムカつく。
アレを済ませて会社に再び戻り、もう事務所に顔は出さんでいいよなと思いながら、帰りかけると、社長が飛んで出てきた。
「しいなさーん!」
手を振って私を呼んでいる。
何事かと思いながら行ってみると──
「関東から帰りの予定、これだから」とプリントを渡された。
プリントで予定がわかるのはとても助かる。
渡すのを忘れかけていたらしいとはいえ──
口頭で『言った/言ってない』では仕事にならない。確たる証拠を残してほしい。
証拠もなく一方的に私が聞いてないことにされるのでは、ストレスが溜まるだけである。




