ニート、ちょっとチートゲット
目が覚めると、イカセイは煌めく星々と共に宙に浮いていた。
「ここはどこだ」と呟くと、目の前から一糸纏わぬ女性が現れた。髪はオウゴンオニクワガタのような金色で、肌はアセチルサリチル酸のように白かった。鼻は鼻の高めの日本人くらいで、小学生が昨日忘れた宿題を、再び持ってくるのを忘れたような顔で近づいてきた。
「私は女神ティッシュ、あなたを導くものです」
女神はそういうとイカセイに真実を告げた。
「あなたは死にました」
「そのようだ」
イカセイはその事実をすんなりと受け入れた。もはや彼が考えているのは次の展開だった。
「おれはどうなる」
イカセイはそう女神に尋ねた。
「あなたには二つの選択肢があります。記憶を失い、地球で新たにプロレタリアートとして働くか、チート能力を手に入れて世界転生するか、以上の二つです」
「後者だ」
イカセイは即答した。
「わかりました。ならばこの中からチート能力を選んでください」
女神はチート能力カタログをイカセイに渡した。そこには無数のチート能力が網羅されていた。
チートアイテムにはアーサー王のエクスカリバー、ジョンレノンのギター、聖徳太子の尺、そして野口英世の顕微鏡などいろいろな宝具が揃っていた。
チートスキルに目をやるとSI単位系操作、ラプラスの悪魔、光速の凌駕、スポーツテストA評価など、こちらも無数のラインナップだった。
そしてチートアイテム、スキルの横にはそれぞれ数字が並んでいた。
「女神様、この数字は?」
「あなたのTPに応じて取得できるチートが決まっています。あなたのTPは……五千二百六京三千六百九十一兆八千七百六十五億三千百四十二万五と七十三分の二十一ですって!?」
「まあそんなものでしょう、なんたって僕はブルジョアジーですから」
女神は驚愕しているようだったがイカセイは無感動だった。
「なら全部もらっていきますね」
イカセイは異世界に全てのチートを持っていくことにした。
イカセイは女神様の唇に口づけすると、星の煌めく女神の間から全てのチートと女神のファーストキスを持ち去っていった。