厚意
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「なあ彩音、せっかくだし駅の中の店もどこか行くか?」
うーん、と彼女は一瞬悩むが、「やめておきます。」と返事した。
駅の中にはたくさんのお店が入っていて、【三十一アイスクリーム】や【ミセスドーナツ】なんかもあり、JKに人気でピッタリだとは思ったのだけどなあ。
「そろそろ帰ります。」
あ、もう、こんな時間か。
飲み物を頼んだだけなのに長居はしたくないとか言ってたくせしてスマホの画面は夕方五時になろうとしていた。
「ああ、そうするか。」
「いえ、あなたはどうぞここにいてください。ついてこないでください。通報しますねストカーさん。」
「通報するな!うわあー待て待て、スマホ出すな。普通に帰るだけだよ!」
「はあ、うるさいですね。」
「お陰様でな!」
客や店員たちの怪しみを含む目に耐えながら会計を済ませ、店を出た。
俺は悪くないだがな……彩音の言い方に問題があると俺は言いたい。
はあ、まあいい。過ぎたことは頭の容量の少ない俺が考えるべきではない。
しかしだな、ここで昔みたいに手を繋げたらいいのだけれど、年と相手の性格と好感度という大きな壁があるせいでまだ、難しいな。
だけど、いずれは俺達だってそれくらいできるようにする。
だからまあ、今は無理やり持たされた彩音の学校カバンとの手つなぎで我慢しよう。
あ、一応言っておくが、無理やり持たされただけだぞ(?)。決して自分から進んで持ったわけじゃない。
茜色に染まりだす空は、いつもより時間が遅い。もう、春だしな。
少し歩けば、大通りから住宅街に入る。
一気に人気は寂しくなるが、丁度いい。
俺達の家は、便利なことに駅からすぐ近くにある。たぶん、五分も掛からないと思う。
見知った家を眺めるフリして彩音を見るが、やっぱり可愛い。
この街にはもったいないくらいだ。
彩音と言う高級品があるせいで、周りの家があばら家に見えてしょうがない。
すると、彼女と目が合う。…が、俺は構わず見続ける。照れることが在ろうものか!
けれど、彼女は違ったらしく、十秒固まって先にそっぽを向いてしまった。
…なんか、そうされると俺も恥ずかしさが徐々にこみ上げてきて、いつもの業務連絡を取ることにした。
「そ、そういえば~、きょ、今日は親さんいるのか?」
「……どうでしょう。」
「……よし、なら、今日はうちで食べてけよ。」
「あ~そうしましょう。ですが、しっかり足は洗ってから家に入ってくださいね。」
「俺を何だと思ってるんだ!獣じゃないから靴ぐらい履いてるわ!」
「あら、すいません。」
グぬぬ、解せぬ、解せぬぅ~、なぜこうも人の厚意を素直に受け取らないのか。
ツン100%の君は、俺にデレを見せてくれない。
どうでしょうか?
感想,アドバイス等ありましたら、宜しくお願いします!