メノウ
「今回の任務は、大陸氷河に出現した巨大生物の抹殺だ。」
「巨大生物?」
「そうだ。こいつが周辺の生物を、片っ端から食い荒らしているらしい。」
「なるほど。このままでは生態系が崩れてしまうと言うことですね。」
「ああ、ディクテイターの生体兵器か、自然発生した生物かどうかは分からんが早急に潰さねば。」
「ところで、そちらの方は?」
「そうだ。すっかり忘れてた。こいつはセイバーズの新メンバーだ。」
「僕の名前はメノウ。19歳です。よろしくお願いします。」
メノウの身長は170cmほどで、細身の青年だった。
「俺の名前は川上卓郎。よろしく。」
「卓郎。ちなみにこいつはラピアの弟だ。」
「へえ~。それは期待できそうですね。」
「はい。僕は兄より強いですよ。」
「だとよ。」
「そうか。頼りにしているよ、メノウ君。」
「卓郎、オマエもしっかりやれよ。」
「はいっ!」
「相変わらず返事だけはいいな。」
「そう言えばラピアさんは?さくらんぼちゃんもいないようですが。」
「ラピアは用事があるとか言ってたな。だからメノウを代理で寄越したんだ。」
「なるほど。」
「さくらんぼはテストが近いから、今回はパスだそうだ。」
「そ、そんな理由で…」
「まあこの3人で充分だろう。いざとなればテレポートで、無理やりさくらんぼを連れてきて戦わせるさ。」
「ま、まあ。そういう手もありますね。」
「じゃ、行くぞ?」
大陸氷河
「着いたぞ。」
「おお!中々いい景色ですね。それに、涼しい!」
3人の目の前には、青い世界が広がっていた。
「ところで、疲れてないですか?カティアさん。」
「この程度の距離なら平気だ。それより…」
「?」
「私と手合わせしろ。卓郎。」
「あ、はい。」
「ずいぶん素直だな。」
「この半年間で、俺の体が鈍っていないか確かめるつもりなんでしょう?」
「…そういうことだ。来い!」
川上とカティア。
お互いに肉弾戦で激しくぶつかり合う。
「オマエが、この私と互角に渡り合えるとはな。」
「スキあり!」
川上は一瞬の隙を付いてカティアに殴りかかる。
「甘い。」
しかし、その一撃はバリアに阻まれてしまった。
「うっ!」
川上は、カティアの念動力によって拘束されてしまった。
「もはや手も足も出ないだろう。」
「そうでもないですよ。」
上空からソフトボール大の隕石が降り注ぎ、カティアを襲う。
カティアのバリアは粉々に砕かれてしまった。
「俺も昔とは違って、殴る蹴る一辺倒じゃないんですよ!」
「やるな。巻き添えを恐れて、その攻撃は出来ないと思っていたが。」
「落とせるのは馬鹿デカい隕石だけじゃありませんよ。」
川上はタックルをかまし、カティアを吹っ飛ばした。
「ほう、今のはなかなか良かったぞ。」
「ずいぶん余裕ですね。」
「当然だ。私はオマエより格上だからな。」
カティアはテレポートで川上の背後を取り、思い切り蹴り飛ばした。
「がはっ!」
「うぬぅ…」
川上は、またしても念動力によって拘束されてしまった。
「終わりだ。さっきは不意打ちがうまくいったが、来ると分かっていればあれをかわすのは容易いことだ。」
「ぬうぅ…」
「降参するか?」
「まだやれますよ!」
川上の指先から水が噴出し、カティアを斬り付けた。
「うおっ!」
「油断しましたね。」
「ぐっ…まさかオマエ如きに2度も驚かされるとは。」
「さっきの攻撃は、さくらんぼちゃんとのトレーニングで身に付けた技です。」
「なるほど。オマエにしては上出来だったぞ。」
「この半年間、俺はずっと遊んでいたワケではありません。さくらんぼちゃんとトレーニングをしたり、技を教わったりしましたから。」
〈まあ、一度もさくらんぼちゃんに勝てなかったけど。〉
「なるほど。いい心意気だ。」
「隕石を落とせるようになったとはいえ、俺はまだまだひよっこですからね。」
「その通りだ。私が本気を出せば、オマエなど一瞬であの世行きだ。」
「俺もその気なら、さっきカティアさんを真っ二つに出来てましたよ。」
「…………」
「…………」
「まあいい、オマエがこないだより大分マシになっているのは確かだ。」
「……」
メノウは静かに2人を観察していた。
突如、上空から光弾が3人へ向けて降り注ぐ。
攻撃の主は巨大な翼竜だった。
3人はテレポートで奇襲を回避していた。
「あいつが本丸だ。」
「不意打ちとはなんと卑怯な。」
「オマエ、どの口が言ってんだそれ。」