平穏な日常
翌日
「うぅ~ん!」
川上は伸びをした。
「もう11時か。ん?着信があるな。」
-たくろう。まだこないの?-
さくらんぼからだった
「えぇ…今日?」
「確かに、近いうちにとは言ったけど。」
「…仕方ない。ともに戦場を駆け抜けた仲だからな。」
川上は支度をして、家を出た。
電車を乗り継ぎやっとこさ、さくらんぼ家に到着した。
「こんな立派な家に住んでいるのか…」
さくらんぼの家は大豪邸だった。
ピンポーン
「はいって。」
門が開き、そこにはさくらんぼが立っていた。
「ま、待たせてごめん。それにしても、広い庭だなあ。」
「…」
敷地内にはグラウンド数個分の大きな庭、中央には噴水があった。
そしてなぜか、庭の端には恐竜の石像があった。
「さくらんぼちゃん、あれってこないだの恐竜?」
「うん。」
「なんでここにあるの?」
「きねん。」
「そ、そっか。」
2人は扉を開けて家に入る。
「おじゃまします。」
「はい、いらっしゃい。どうぞ上がって。」
奥の方で声がした。
「玄関も広いねえ。ん?これは…」
玄関の隅にクシロの石像があった。
「きねん。」
「…」
「きねん。」
川上は考えるのをやめた。
「こっち。」
さくらんぼに案内され、川上は部屋に導かれる。
「あ、こんにちは。」
「こんにちは。」
「川上卓郎と申します。」
「さくらんぼの母です。」
「父です。」
「姉です。」
「卓郎君。よろしく。」
「こちらこそ、よろしくお願いします。」
「卓郎君、うちのさくらんぼの遊び相手になってくれて、ありがとうねえ。」
「うちの子は友達がいないから、心配だったのよ。」
「あ、ああ。そうなんですか。」
〈なんか分かる気がしますけど。〉
「さ、座って座って!お菓子とお茶を持ってくるから。」
川上は椅子に座った。
「さくらんぼちゃん、お姉さんがいたんだね。」
「うん。」
「私の名前はぶどうです。さくらんぼより2つ上です。」
「へぇ~。ぶどうちゃんも、かわいらしい女の子だねえ。」
〈この子もニックネームなのか…?〉
「ありがとうございます。」
「…………」
さくらんぼは、分かりやすく拗ねていた。
「お父さんもお若いですねえ。」
川上は話を逸らした。
「そうかな?今年で45になるんだ。」
「そうなんですか?俺の親父よりかなり若く見えますよ。」
〈この人、どう見ても20代にしか見えない。お世辞ではなく、お母さんの方も…〉
「お待たせ。」
さくらんぼの母が煎餅とお茶を持って来た。
「すみません。いただきます。」
〈案外、庶民的なチョイスだな。〉
川上はお茶を飲んだ。
「美味しいです。」
「よかったわあ。特製のお茶なのよ。」
「へえ~。この味、好き…ガハッ!」
川上は吐血し、そのまま失神した。
「た、卓郎君!」
「たくろう。だいじょうぶ?」
「卓郎さん!」
「あら?やっちゃたかしら。」
時を同じくして。
高級寿司店
「金を出せ!」
「ふざけるな!」
寿司職人は、包丁で強盗に応戦しようとした。
しかし、強盗は拳銃を取り出した。
「おい、死にたくなかったらさっさとしろ。」
「くっ!」
寿司職人に勝ち目はなかった。
「そこまでだ。」