川上卓郎の底力
「い、いつの間に…まさか、今のは砂漠の男の技か…」
「なんてことだ!頼みの綱のさくらんぼちゃんまで…」
「今、俺の目の前にいるのは、あの3人でも全く歯が立たなかった相手。」
「それに、まだクシロも残ってる。」
川上は絶望していた。
恐竜は、心底憐れむような目で川上を見ていた。
「くそっ!コケにしやがって!」
川上は恐竜に飛びかかり、鼻頭を思いっきり殴りつけた。
「…………」
まるで効果なし。
川上は叩き落とされてしまった。
「ぐばぁ!」
川上は気力を振り絞り、立ち上がる。
「今の一撃、なんて強烈なんだ…」
恐竜は川上の様子をうかがっている。
「くっ!やけくそだ!」
「トリプルサラマンダー!」
「さくらんぼ☆じぇのさいど!」
「グレイテストフロストミサイル!」
「念動力!」
川上の声が空しくこだました。
黒い球体が出現し、七色の炎をまとった。
「ここまでか。」
「…いや、命を懸けて戦った仲間たちの為にも!俺はまだ諦めるわけにはいかない!」
川上の目に生気が宿る。
「アルファにいる両親の為にも…!」
「俺も超古代人の血を引いているんだ。俺にも力があるはずなんだ!」
「ここでその力を発揮できなければ何の意味もない!」
「なんでもいいから目覚めてくれよ!!!」
突如。飛来した隕石が恐竜に直撃し、凄まじい衝撃波が発生した。
地形が変わり、辺り一帯は更地になった。
「うぐおおお!!!」
川上もかなり吹っ飛ばされた。
「はぁはぁ…今のは…俺の力なのか?」
川上は、これまでに感じたことのない疲労を感じていた。
「…ああ。きっとそうなんだろう、この消耗具合。」
「ふう。しかし、土壇場でとんでもないものを繰り出せたな。」
「流石にあの化け物でも、これはひとたまりもないだろう。」
岩石が崩れる音とともに、恐竜が起き上がった。
「!!」
「あいつ!生きてやがる!しかも、さっきよりゴツくなってないか…」
恐竜の表皮が硬質化し、鎧のように身を守っていた。
恐竜はほとんどダメージを受けていないようだ。
「くそっ!さっきのを繰り出せるほど、体力は残っていないぞ!」
「今度こそ終わりだ。何も打つ手がない!」
川上は死を覚悟した。
次の瞬間。
恐竜の前に3人の人影が現れ、恐竜は石化した。
「!」
そして3人は川上の目の前に降り立った。
「みなさん!無事だったんですね!」
「ああ。凄まじい衝撃を感じたと同時に、砂の拘束が緩んだんだ。」
「その隙に、テレポートでさくらんぼとラピアを回収し、体力を回復させて地上へ出た。ということだ。」
「なるほど。とにかく3人とも無事でよかった!」
カティアは辺りを見渡した。
「卓郎。これはオマエがやったのか?」
「ええ、土壇場で奇跡を起こしました。」
「ふん。オマエにはここまで散々足を引っ張られたが、最後の最後に命を救われるとはな。」
「ですが、勝利を決めたのは4人のチームワークですよ。」
「君たち、肝心な奴がまだ1人残っているよ。」
「おっと、すっかり忘れていた。流石ラピア、抜け目がないな。」
「さあ、奴の居場所へテレポートだ。」
「その前に卓郎を回復させてからな。」
基地周辺
「ふうー。少し疲れたな。」
「あれだけの激戦、3人の体力回復に加えてテレポートだからな。」
「カティアさん。ここは俺たち3人に任せてください!」
「ああ、気を抜くな。あいつはもうじきここへ来るぞ。」
4人の前にクシロが現れた。
「噂をすれば。」
「君たちが何故ここにいるんだい?ああ、あいつに敵わず逃げて来たんだね。」
「違う、俺たち4人で倒したんだよ。」
「ほぇー。あれほど完成度の高い兵器を倒したのかい。」
「正直驚いたよ。僕が作った連中が束になっても敵わない化け物だったのに。」
「だけどこの僕は倒せないよ。」
「お前1人で何が出来る!」
川上が殴りかかるが簡単にいなされてしまう。
ラピアも背後から氷の剣で斬りかかるが、片手で受け止められた。
「さくらんぼ☆ばにしんぐ」
さくらんぼの攻撃もかわされる。
「フロストレーザー!」
クシロは飛び上がって光線をかわす。
「チャンスだ!3人とも、身を守ってください!」
「あ、ああ。」
「アイスビルディング!」
「バリアー!」
隕石が飛来し、空中にいたクシロに直撃する。
そのまま地面に衝突し、凄まじい衝撃波が発生した。
「す、すごい…」
3人は呆気に取られていた。
川上の体も、氷と念動力の壁によって守られており、無傷だった。
「最後は俺が決めましたよ。」
「凄まじいものよの…」
「…」
「大したもんだ。卓郎。」