快進撃
「…ねんのため。」
「ん?」
さくらんぼが呟いた。
「さくらんぼ☆ぶれいざー」
さくらんぼは、超高温の熱風を放射した。
森はあっという間に炎に包まれ、燃え尽きた。
「さ、さくらんぼちゃん。君は一体、いくつの武器を持っているんだ…」
「ふふふ。」
さくらんぼは得意げに笑った。
「いいぞ、さくらんぼ。生き残りがいた可能性もあるからな。」
「それに、鬱陶しい森も消えて視界も良好だ。」
〈でも、これって環境破壊なんじゃ…〉
川上は心の中でツッコミを入れた。
4人は、さっきまで森があった場所を抜けた。
「敵の本拠地まで、目と鼻の先だ。気合い入れろよボンクラども!」
カティアが発破をかける。
4人の前に女が現れた。
「ほう、4人相手にいい度胸だな。」
「ふう。なるべく女の人に手を出したくないけど仕方ないね。」
ラピアが前に出る。
〈散々動物たちを痛めつけてきて、今更何を言ってるんだこの人。〉
川上は再び心の中でツッコミを入れた。
「フロストミサイル!」
氷のミサイルが、女をめがけて集中砲火された。
しかし、それらは女に命中する前に破裂した。
「バリアか。」
「リップルストライク」
女は弾丸のように涙を飛ばしてきた。
「アイスビルディング!」
ラピアは氷の障壁でガードを固めた。
しかし、女の涙は氷の壁を突破しラピアに襲い掛かった。
「がはっ」
氷の壁により威力は落ちていたが、それでもラピアに傷を負わせる程の威力だった。
「ちっ、厄介だな。さくらんぼ、オマエがやれ。」
カティアは痺れを切らし、さくらんぼに任せることにした。
さくらんぼは首飾りを外し、女を睨み付けた。
「ふぅー。助かったよ。さくらんぼには、助けてもらってばかりだな…ありがとう。」
「れいにはおよばん。」
「なんだそれは。私のマネか?」
カティアは怪訝な顔をした。
「スキあり!」
突然女が現れ、さくらんぼに襲い掛かった。
「くそっ。油断した。」
カティアが念動力で女を拘束する。
「もう手遅れだ。そいつには猛毒を注入しておいた。いくらお前らでも、すぐに体の自由がきかなくなって死んでしまうぞ。」
「な、なんてことだ!さくらんぼちゃん…」
「私はここでお前らに殺られるだろうが、厄介な能力を持つそのガキを潰せたのは、軍事的功績と言えるだろう。」
「さくらんぼ、私が解毒するからな。」
「…」
「ムダだ。解毒が終わるより先に、そいつは死ぬ。」
「…」
しかし、さくらんぼは汗一つかかず、涼しい顔をしていた。
「…さくらんぼちゃん、平気なのか?」
「へいき。」
「ば、ばかな。化け物なのか、このガキは…」
「ちがう、わたしはあくま。」
「くっ、ならばお前をっ!」
女はカティアに突撃する。
しかし。
「さくらんぼ☆ばにしんぐ」
女は塵と消えた。
「さくらんぼちゃん、本当に大丈夫なの?」
「へいき、わたしにどくはきかない。」
「そ、そうか…」
〈この娘はチートすぎる。〉
「む?」
4人の前に紫色の物体が出現した。
「ちっ、次から次へと。」
「なんだコイツは。」
そいつはまるでゴーストのような姿をしていた。
「こんな弱そうな奴が襲い掛かってくるとはな。笑えるぜ。」
「雑魚は任せてください!」
川上は紫色の物体に殴りかかる。
しかし、川上の拳は物体をすり抜けた。
「げっ!見た目だけじゃなくて、しっかり幽霊の性質を持っているのか。」
「あーあ。ありゃあ卓郎に勝ち目がないな。」
「どうしてだい?まだ戦闘は始まったばかりだよ。」
「ラピア、知らないのか?アイツは殴る蹴るしか出来ないんだぜ。」
「ぜつぼうてき。」
「ファントムスラッシュ!」
巨大な斧で卓郎は薙ぎ払われた。
「ぐああ!痛てえ!」
「ゴーストゼリー!」
紫の物体は黒い塊を発射した。
「うう…」
「セイバーズの面汚しめ!」
「僕も加勢するよ!フロストレーザー!」
しかしこれも効果はなかった。
「やはり物理攻撃は無駄か。」
「震えが止まらない…」
川上は体がすくんで動けない。
「わたしに、まかせて。」
さくらんぼは首飾りに手をかける。
「待て、さくらんぼ。私がやる。」
カティアは、念力で川上の体に付着した黒い塊をひっぺがし、紫色の物体にぶつけた。
「オオオオオオオオアアアアアァァァァ!」
紫色の物体は、断末魔を上げてかき消えた。
「ふん。他愛もない。」
「カティアさん!助かりました!」
「おう。無事だったかお荷物くん。」
「うっ。」
「さっさと行くぞ。」
「ああ。本丸はすぐそこだ。」