スラ吉の限界
「大丈夫ですか?」
呆然と立ち尽くす僕に、シスターが話しかけてきた。
「あ、はい。すみません。少し考え事を。」
「何かお困りのようですね。迷いごとはすべて神にお告げなさい。ここはそうして救いを求める場所です。ご無理なさらずに。」
とりあえず頭を空にしたい。僕はもう少しでレベルが上がるようだし、外に出て少し狩をしてみよう。シスターと神父に礼を言って、教会を後にした。
「スラ吉、お前、もう十分強くなったみたいだぞ。」
「うん。」
「もう強くなれないのかな。君にはもう少し強くなってもらわないといけないのに。」
「うん。」
「木の実でも食べたら、まだ強くなれるのかな。」
「うん?」
「木の実だよ。賢さをあげたんでしょ?て言うか、そんな物ほんとに食べたのかい?」
「うん。」
「そっか。じゃあやっぱりあの兵士さん正しいんだな。」
「うん。」
「…喋ったよね?」
「うん。」
「それしか言えないの?」
「…うん。」
「そっか。でも、すごいことだよ!それ!」
「うん!」
「3回廻ってジャンプ。」
なんと、スライムは3回廻ってジャンプした。
「伸びろ。」
なんと、スライムは体を上に伸ばした。僕の膝くらいしかなかったのに、今では僕と同じくらいの高さだ。
「もっと大きく膨らんでごらん。」
なんと、スライムは“膨らむ“と言う単語がわからないようだ。手を使って説明してみた。
「これくらいの物が、これくらいになる。大きくなる。膨らむ。」
なんと、スライムはぷくーっと膨れ上がった。
「縮まれ。膨らむ、の反対。これくらいから、これくらいになるの。」
なんと、スライムは体を凝縮させて、普段の半分の大きさになった。
「そのままでいられるかい?小さい方がいいや。大きさだけが強さじゃないからね。小さく凝縮された強さの方が大事だよ。多分。」
小さいスライムが可愛いので、無理やり説き伏せてみた。なんと、スライムは小さいままの体を維持しようと、プルプルしている。
「無理するな。できるだけでいいよ。ちょっと、外に行ってみようか。」
「うん。」
スラ吉はプルプルしながら、僕についてきた。
外に出ると、狼人間の魔物が現れた。二体で前後を囲むようにして、こちらを睨んでいる。
スラ吉は体当たりをした。狼人間Aに5のダメージ!
僕は槍を突き立てた。狼人間はひらりと身を躱した。
狼人間Aは、スラ吉を引っ掻いた。スラ吉は2のダメージを受けた。
狼人間Bは、ヘラヘラと笑っている。
完全に馬鹿にされている。僕はスラ吉のお尻の部分を抱き抱えた。
「スラ吉、あいつに向かってビヨーンと伸びてみろ!」
スラ吉は伸びた。狼人間たちはヘラヘラと笑っている。
「スラ吉、そのままの状態で縮まれ」
スラ吉は僕を引っ張るようにして縮まろうとし、プルプルしている。狼人間たちはゲラゲラと笑っている。
僕はスラ吉を話した。スラ吉はびっくりした様だったが、自分の体が縮まるのを制御できず、狼人間Aに向かって飛んで行った。スラ吉は狼人間にぶつかり、5のダメージを受けてしまった。狼人間Aに18のダメージ!会心の一撃だ。狼人間Aは吹き飛び、サラサラと消え去った。
狼人間Bは恐れをなして逃げた。僕はレベル6になり、“力を貯める“を覚えた。
「スラ吉、今の覚えた?」
「うん!」
「自分一人でもできるかい?」
「うん!」
なんと、スラ吉はこちらに背を向け、地面を噛み、こちら側に伸びた。地面から口を離すと、とてつもない勢いで僕に向かって飛んできた。会心の一撃。僕は後ろに吹き飛び、地面に叩きつけられた。25のダメージ!スラ吉は口から薬草を出し、僕になすりつけた。僕の傷は回復した。
「今のわざとだよね?投げ飛ばしたの怒ってるの?」
「うん!」
良くも悪くもさわやかなスラ吉をこれ以上責める気にもなれず、命があることをありがたく思い、僕たちは宿に向かうことにした。




