招かれざる者
ミミズを仲間にしたことは、誰もよく思わなかった。町につれて入ると、皆気味悪がって見ていた。親は子が見ないように家の中に入れ、農具を持つものはそれで威嚇してきた。
「ほら、絶対やめた方がよかったって、おじさん。」
「みんなすぐ慣れるさ。」
「でも、宿屋に入れてもらえるかな。」
宿屋では、トランスの言う通り、嫌がられた。しかし、誰にも危害を加えないと説得し、何とか部屋に入れてもらった。クリーニング代と称して、宿賃も多く取られた。しかし、文句は言えなかった。
僕はミミズにミミーという安直な名前をつけた。
「ミミー、あの電撃のことだけど、スラ吉にどうやったか詳しく教えてくれないか。」
その晩、ミミーとスラ吉は夜通し話をしていた。僕はミミーの言葉がわからないので、疲れに任せて眠った。
次の日の朝、スクエアシャートに出発するための準備をしていたところに、ダリスが訪ねてきた。
「イアン殿、ミミズを仲間にしたのは本当でしたか。」
僕がその経緯を話すと、ダリスは仕方なくその事実を受け入れた。ダリスは、スラ吉とミミーに部屋を出るように伝え、僕と2人きりでその話を続けた。
「しかし、ミミーが誰も襲わんと確信はできませんな。」
「なぜです?」
「倒してないからです。魔物は自分を倒したものの言うことしか聞きません。」
「ライムも、倒した魔物ではありませんよ。」
「ですから、トランスと改めて戦わせ、倒させました。」
「ではこのミミーも…」
「いいえ、大ミミズは倒しても元に戻りません。魔物の中には、仲間として迎え入れることができるものと、そうでないものがおります。仲間になるものは大きく3通り、1つは大量の良質な魔力を備え、自ら自身を再生できるもの、もう一つは、魔力はなくても植物のような性質を持ち、自分を再生できるもの、そしてもう一つは、生成が簡単で、倒された時に舞い上がる魔力からでも自己生成できるもの。スライムは、このうちの2つの要素を持ちます。植物ではないが、微量の自己再生能力を持ち、かつ、簡単に生成できる魔物です。だからスライムを連れている冒険者は珍しくない。しかし、大ミミズはそのどれにも当てはまりません。」
「倒すのと倒さないのでは、何が違うんでしょうか。心さえ入れ替えれば…」
「相手は魔物ですぞ。魔物は純粋な悪意しか持ちません。人の言葉を使えども、心は邪神のもとにあります。一度倒してしまうことで、心を邪神から解放せねばならぬのです。」
「では、ミミーは、あのミミズはどうすれば良いでしょうか。」
「必要なことを聞いてすぐ片付けるか、起き上がる可能性にかけるか…私より魔物に詳しいものが、ラズベリーという町におります。その老人に話して見てはいかがでしょう。スクエアシャートへ行く前に、そちらに立ち寄ってから行くことにしましょう。」
話が終わってドアを開けると、スラ吉とミミーは大人しく外で待っていた。
「行き先が変わったよ。ラズベリーだ。」