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「大体な♪」
アナウンサーが、言う。
「アーッと、スロリー、飛び出した!!」
「今日はスロリーでは、なかったですね……」
「須藤さん、真面目に、これは、いいんですか?!ゴールまで、まだ、かなりあると言っても過言ではない距離ですよ!!」
「オランダの風向きは変わりやすいということを彼も知ってのスパートかと思われますが、確かに彼らしくはないですね」
レースは、終盤、一騎打ちだった。
本来、彼らしくあればあるほど、スロリーに有利になるはずだった。
コーチが叫んだ。
「早い!」
悲痛過ぎる叫びは、風の国で無惨にも、まるで彼にドトカナイ。
実際に、ムザンだったのは更に、この後だったのに…。
ドトカナイことが、届いたのだ。
「ダーツ!」
上り坂で、トップを走る彼に、それが聞こえてしまった。
テンパったのは、間違いなくスロリーだった。