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あした、そこに君が立っていたら

あした、そこに君が立っていたら 2

作者: 電柱ユウキ

ちょっとだけ続いてみます。

ミサキ・・・主人公「僕」

カナエ・・・自殺しようとしていた少女

タケル・・・僕が友人と勝手に思っている少年

サトシ・・・同上

僕と君は似てる。

共通点は何?

いじめられてること?

ひとりぼっちなところ?

毎日が辛くてしょうがないところ?

答えは全部だと思う。


僕は君に見える。

君に僕は見える。


僕はここにいるけどここにいない。

それでも君には僕が見える。

それは君もここに近いところにいるから。


この橋には2種類の人間が来る。


一つは自分が死ぬなんて微塵も思っていない人間。

もう一つは・・・。


もう一つだった君には僕が見える。

君には幽霊の僕が見える。


「何で自分のこと僕って呼ぶの?」

カナエは悪びれもなく僕に向かって質問した。

ある日の朝、ここは山奥にある心霊スポットで有名な橋の上。

自殺しようとしていたカナエはその日僕に出会い、自殺することをやめた。

また明日来ると言っていたが次の日の朝に僕の元へ現れた。

別に会いたいならこの場所でなくてもいい。

それでもカナエはこの場所がいいと言った。

ここの方が他の人もいないし喋りやすいから、と。

カナエはすごくよく喋る。

興奮すると声が大きくなるし結構早口だ。

普段学校ではほとんど喋ることがないらしい。

いじめられているから。

教師からも避けられているから。

親からも嫌われているから。

でも僕と話しているカナエは本当によく喋る。

僕が時々相槌を打つだけで会話が成立してしまうくらいに。

そうしていたら突然先ほどの質問をしてきたのだ。


生きている頃の僕は自分のことを僕とは呼んでいなかった。

何と呼んでいたか、今となっては生前の記憶は曖昧で思い出せない。

もしかしたら僕と言っていたのかもしれない。

「私って言った方がいい?」

そう答えるとカナエは「今は私が質問しているんだけど?」と少し不機嫌に返した。

僕は生前は女性だった。

いや、正確には今でも女性ではあるのかもしれない。

幽霊となった今、女性であることに意味をなくした。

別に容姿も気にしないし、誰に見られることもない。

たまに自殺するためにここを訪れる人に声をかけてはいたが私の姿を視認する前に逃げていくか、私の方は見ずにそのまま身を投げるか。

そのうちに私が身を投げるように人を呼んでいると勘違いされるようになった。

この前も友人と勝手に思っている男の子達と一緒に遊んでいたが誰も私に気づくことはなかった。

たまに声には気づいてくれる。

主に寝ている時とか。

なのでこんな風に僕のことが見えて会話も出来る人はカナエが初めてだった。

考え込んでいるとカナエが言葉を続ける。

「貴方って別にボーイッシュって感じでもないじゃない?どちらかと言うと・・・私と似てる気がするわ。」

カナエみたいな美少女に似ていると言われて悪い気はしない。

そんなこと言われ慣れていない僕は恥ずかしくて顔が熱くなった。

体温なんてないけど。

「僕だって別に自分を男だと思って僕と呼んでいるわけじゃない。ただ、何となくそうしているだけさ。」

本当に理由なんてない、何となくだ。

「それよりあれからどうなんだい?学校ではうまくやれてるかい?」

誤魔化すように質問したら「今夏休みよ?」とバカにするように答えた。

そういえばそうだった。

死んでからと言うものあまり時間の感覚がないのでタケルとサトシの会話で何となく季節や時期を感じ取っている。

「まぁ、あの後家に帰ってお父さんと大げんかしたわ。私がいじめられてることも伝えた。そしたらあんなに私に当たっていたお父さんが涙を流して謝ってきたの。ごめんなって。そしたら何だかスッキリしたわ。その後も色々話し合って学校を辞めてもいいって言われた。でも私はまだ頑張るって言った。」

胸の前で拳を握りながらカナエは立ち上がった。

「負けっぱなしじゃ悔しいじゃない!だから夏休み明けたら私戦うって決めたの。それでもダメならその時は学校を退学して働くわ。」

きっとカナエはすごく強い子なんだろう。

負けて逃げることよりも最後まで戦うことを選んだのだ。

僕がいなくてももしかしたら自分で立ち直ったかもしれない。

僕が頑張れよと声をかけるとカナエはニコッと笑った。

「お父さんは会社を辞めるって言ってた。今の会社じゃもう出世も望めないし、ライバル企業から移らないかって声もかけられてるらしいの。何だか貴方に出会えたおかげで物事がいい方向に向かってる気がするわ。」

そう言うと突然カナエは僕に抱きついてきた。

「本当にありがとう」

そこで僕は気がついた。

「カナエ、僕に触れるのかい?」

抱きつかれながらカナエに言うとカナエも驚いて飛び退いた。

「あれ、咄嗟で気がつかなかったけど本当ね。確かにミサキの体温冷たいけどちゃんと触れるわ。」

幽霊になってから触られることなんてなかったので本当に驚いた。

それと同時にふと不安がよぎった。

僕の声が聞こえるのは大体死が近くにある、死のうとしている人間だ。

もしかしてカナエはまだ死ぬ事から離れられていないのか?

それどころか死に近づいているのではないか。

しかしそれをカナエに聞くことはできなかった。

帰路につくカナエの後ろ姿を見て僕は立ち尽くしていた。

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