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社畜と呼ばれて数年。
そろそろこの生活に疲れてきた。
本日のお仕事も終わり。今日も癒しを求めております。
そんな私にはこれがある。
乙女ゲームアプリ「蝶よ、華よ。」
このゲームは無料アプリで王道のトロ甘の癒しをくれる王子様系男子(というか本当の王子様)、腹黒宰相、平民からののし上がり騎士、わんこ系マッドサイエンティストという少し変わったものだ。
ストーリー以外にも戦闘もあり、これがスマホゲームで本当にいいのかと思うほどの量である。
また課金要素もあり、ヒロインのアバターを変えたり、ステータスを上昇させたりもできる。
早速起動。
サービス開始からやり始めていただけあって私の分身は最強だ。またこのゲームの良いところは好感度を何人でも上げれて個別ルートに入るまでは何股もできるところだ。
もちろんやりこんでいる私は4人とも好感度マックスである。
今日は誰と一緒に戦闘していこうかと考えていると一つの文が目に入った。
ー新しいストーリーがあります。開始しますか?はい、いいえ
迷わず「はい」を選んだところで私の目の前が真っ暗になった。
いつの間に寝ていたのだろうか。
昨日新しいストーリーを開始したところまでは覚えている。
今何時位だろうか。スマホが見当たらない。
仕事に遅刻してしまったのではないだろうか。今何時だろう。
窓の外を眺めてみる。
あんな窓だったかしら?
青い空に龍が飛んでいる!?
「って!?ええええええええええ!?」
「お嬢様どうされましたか?」
私の叫びを聞きつけただろう見慣れない人が入ってくる。
その瞬間、私の中に記憶が入ってきた。
どこか懐かしいようなそんな感じがする。
見慣れないと思っていた人は私付きの侍女、カトレアだ。
カトレアは心配そうな顔をして何か異常があったのかと私の様子を観察する。
驚くよりも先にこの事態を収拾しないと。他にも人が来ちゃう。
「ごめんなさい、カトレア。ちょっと夢見が悪かったの。何でもないわ。」
「お嬢様が謝った‥‥?どこか頭でも打たれたのですか?」
そうだった。さっき流れてきた記憶での私は謝ったりしないような子だった。
一通り私の様子を観察したカトレアは私に問題がない様子を確認してこれ以上のことは聞かないことに決めたようだ。着替えの準備に取り掛かっている。
ちょっとこれは状況を整理しなくてはいけない。