勇,神様に遭遇.
神様に遭遇します.長い条件付きの物語の始まり.
気づいたらというと在り来たりな表現だが真っ白い世界にいた.
そして正面には神々しいローブを纏った人がいた.
「ようこそ,私の世界へ」
混乱した俺のことを無視するがごとくその神々しい人物は続ける.若々しく中性的な見た目のその人は,どことなく後光もさしているようだ.
「私は神,と言われるものです.この度はメールに答えていただきありがとうございました.
これからのことですが,まず私の世界で勇者となっていただき,世界を救っていただこうかと」
…え?嘘だろ?夢か?
「夢ではないですよ.そうですね…ちょっと失礼します」
心を読まれた?嘘だろ?と困惑していると,頬をつねってくる.いてぇ,普通にいてぇ.
「現実とわかっていただきました?勝手に読心して申し訳ありません.しかし,私の世界はこうしている間にも瘴気に満たされ,マモノが跋扈し,魔王が人々に仇なしているのです.愛すべき私の民を救ってください.世界を救ってくださったあかつきには,元の世界に戻してあげられます」
「ちょっと待て,世界を救ったら元の生活に戻るだけ?」
「ええ,そうです.」
…何か,願い事を叶えてくれるとか,チート能力で楽しい生活が待っているとかないのかよ.
「そういうのはないです.ちなみに断られたらこの亜空間に置いていくしかありません.」
「うっそだろ!やるだけ損じゃん.選択肢なくね?!」
「あえていうなら,勇者生活…というのでしょうか.あなたの退屈した生活から抜け出し,一時的に刺激的な生活が送れるのです.それでもダメでしょうか?ダメと言うのなら,次の方に声をかけてきます」
「っ!ちょっと待ってくれ.ここで放置するのかよ!待ってくれよ!やる!やるったら!」
「その言葉を待っておりました.あなたの刺激的な生活のために,装備等はこちらで揃えておきます」
「必要経費だろ…せめてその世界で楽に狩ができるようにしてくれよ」
「もちろんですよ.あなたには魔王を倒していただかなくてはなりません.大丈夫,その力も与えましょう」
「で,世界を救うには具体的にはどうしたらいいのかよ」
「話が早くて助かります.まず,他4人の勇者の方と合流していただき,各地のマモノを倒してください.
そして,4大聖地にいる4大精霊を助けてください.魔王を倒す際に力となるでしょう.ただ,精霊たちも魔者に封印されている状況でして,4大精霊を解放するには魔者を倒す必要があります.全ての4大精霊を解放したのち,星の精霊,精霊王の城への道が開通します.精霊王の元には魔王がおり,その魔王を倒したら精霊王が私本体も解放します.世界を救っていただけたら,あなたたちを元の世界に戻してあげましょう」
「なんというか,そこまで道筋がわかっているのなら,自分の世界の民から勇者選出して魔王倒したらいいじゃないか」
「私の民は瘴気で弱り切り,勇者を排出する力も残っておりません.もはや祈ることのみで」
なるほど,悪いことを聞いた.自分の力の及ぶところではどうしようもなくなったわけか.
「そういうわけです.お願いします.世界を救ってください.」
じっと,その神様に見つめられる.そこまで弱った世界の話をきくと断れない.日本人ならでは,か.
「わかった.救おう」
そう答えると,嬉しそうに神様は笑って手を差し伸べてきた.握手をすると,また視界が白くなった.
次に目を開けたら異世界か…,そう直感で感じ目を閉じた.