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“超一流”とはなにか。 ※俺の中で!

【キャワワなお部屋】


あれから三人でボケーっとピンク色過多なお部屋でのんびりしていた。 厳密に言うと神×2と元人間っう組み合わせだ。 まぁ、そんな事はどうでもいいことだろう。 それよりも――遂に遂に。


【“外の世界”】


「ふぅ……“クソ不味い”なおい」


あれから、可愛い可愛い神様二人と穏やかな時間を過ごす筈だった。 “筈”……だった。


「ま、無理だよね。 ヤニカス舐めんなよ!」


座右の銘は煙草は墓場まで持っていくだった。

結局、俺は痺れを切らし、褐色肌の方の神にお願いして、土下座して人間界にあるような煙草を出せよッ! オラッ! だせだせッ! と、お願いと情けない駄々をこねたのだった――


「それよりも……なんだよこの“地獄絵図”は」


一瞬禁煙して、禁煙を解除し、一本吸ったとき、いっちゃんはじめは旨い。 しかし二口目に入ると、あー不味いと感じてしまう現象。 そんなくだらない感情よりも、なによりこの“世界”の景色に俺は色んな意味で不味く感じていた。


「光も……うっすらで、鬱蒼としてる世界か……」


目の前に映る景色は、最悪なものであった。

想像していた世界よりもずっと地獄らしい。

薄曇りに見え隠れする橙色な禍禍しい夕焼け空のようなコントラスト。 草木は枯れ、少しだけ肌寒い空気が俺の肌も鼻腔もくすぐり侵していく。


「厄介な世界に迷いこんでしまったな……」


こんな筈じゃなかった。 こんな筈じゃなかったんだ。 もっとこう……某聖杯をめぐる闘いのような痺れる世界観を予想していた。 なのに、なぜこんな……地獄みたいな世界なのだろうかと。


「ふぅ……“戻ろう” おうちへ――」


……ざざッ!!


舗装されていない、湿気った土の地面に煙草を押し付け火を消し、神×2の居るおうちへ帰ろうとした時だった――


「な……なんだ? “ノイズ”?」


耳の中じゃない、大地から轟くとてつもなく大きなノイズの存在に身体が一瞬で畏縮してしまう。


「勘弁してよ……やべえってマジでッ!!」


重厚なその単発のノイズに俺は本気で恐怖した。


そして――


{あ″~ッ!! テステスぅッ! 聞こえッか?}


「んな、ッっッ?!」


(の……“脳内に直接”聴こえてくる声?!)


そのノイズは大地からではなく、今度は自分の脳内の中に侵入してきた。 そして……きったねえ声が狂気を演じていく。


{ようこそぉ? “クソガキ”ちゃ~ん?}


「な、なんなんだよてめえッ!? やめろよ!」


(脳が痛い……頭が痛いよりもたちが悪い)


完全に悪意があるそんな声に吐き気がする、頭が脳が割れそうなほど痛い。 これが死んでも死ねるという事なのかとはじめて実感していた。


{よう? 人間のクソガキぃ? いや……ぐふふっ}


「ぁ″ッ!? が――ッ?! うっせえ……ボケッ」


(こっちはもう……とっくに死んでんだッ!!)


先にそう言うつもりだった。 だけど、先に悪意を垂れ流す存在は早速考えを改めるような素振りを見せていた。 それに凄くイライラしていた。


{おめぇ、神を“KXXL”しに来たんだろう?}


「ぐぅ……だったらぁッ!! なんだってんだ!」


頭が痛い、脳が悲鳴をあげる、身体が一瞬で地に着く、まずい土の味が口の中に広がる、視界がパチパチと閃光して、黒と白の点滅を繰り返す。

そんな中、俺は力を振り絞り自分の想いを告げた。


{いるんだよなぁ~そんな“アホ”が}


「アホで悪かったなぁ、だが、それがどうした」


悪意の塊。 それに俺は必死についていく。

そんなもんとっくに知っている。 バカでアホでどうしようとなくて、途方とないほどクズだと。 今更そんなもの怖くも痛くも呆れもしない。 それがリアルで現実なのだから。


{ほんとバカだよてめぇは……“可哀想”に……}


プチン……ッ!


俺の中で何か駄目な糸が切れる音がした。


「か……“可哀想”だぁ? 可哀想なのはてめぇよ」


他人から同情される事は一番腹がたつ事だった。

同情し、可哀想だと思えるのはてめぇ自身だけ。 他から同情される事は本当に嫌いだった。

同情を誘ったところでなにも解決なんてしねえ。

自分が自分で可哀想だと思うからこそ、這い上がれる。 何かを見出だせる。 その過程のものを同情したり、可哀想だと思う行為は俺にとって相手に対する侮辱だと同義だったのだから。


{知らねぇなぁ、お前は。 “こんな時”によ}


「知ってるさ……“お前が言いたい事”は全てな」


(どうせ俺の考えなんて筒抜けだ)


――どうせ、“お前みたいな勇者”気取りはすぐに死んで、今頃骨になってるよとでも言いたいのだろう。


{わかってるなら、いいさ。 ぐひひッ!?}


「きめえんだよ……失せろボケカス……“散れ”」


(風呂に入りたい……お風呂シーンに飛びたい)


頭も痛けりゃ、全身土まみれ、おまけに口の中でジャリジャリとまずい土の味が残って最悪な気分。 聴きたくもない絶望の声にはそろそろ撤退してもらいたかった。


{なんだよ……つれねえなぁ? まあいい……}


「……」


{“俺様”の名を聴いていけよ? ぐひゃはッ!}


「……」


俺は最後の最後まで黙る事にした。 単純に面倒なのと、だるいのが最高レベルまで上がってイライラも冷静さも、スゥーと失せていた。


{“闘いのカミィ”ッ! “ジョウ”様よッ!!}


「お……おふぅ!?」


やっぱり無理だった。 反応せざるを得ない。

またもや適当過ぎる名前に脊髄反射――


{あぁ……俺には可愛い可愛い“妹”がいてだなぁ}


「うん、知ってる! “セン様”だろ?」


光の速さで先に答えをぶん投げてやった。 この世界の法則性。 大体、デュオな名前で一組で構成される神連合? 大体予想はついていた。


{ふ……ふんッ! やるじゃねえの……}


{だが妹はやらんぞッ!!}


「いらねえよ……“ブス”だったらどうすんだ」


{チッ……“元人間”のクソガキ……“今だけだ”}


ジュボッ……ジジジッ――


「ふぅ……今も昔も対して変わらねえよボケ……」


慣れた手つきでクシャクシャになった煙草を取り出し、瞳を綴じながら俺は器用に煙草をふかしていた。 また、死ぬ間際のような変な気分なまま俺は正直にそう伝えた。


「ククッ……そうさ、今も昔も“地獄真っ最中”」


「ふぅ……お前には分からねえだろうな」


俺は――いつだってヘトヘトで疲れている。

この先、まだまだ終わらない地獄が続くとわかったのなら、もうどうでもいい。 拗ねた野郎に捉えられても、クズ野郎と罵られても――


……どうでもいい。


{そうこなくっちゃなぁ? クソガキぃッ!!}


{あぎゃぎゃぎゃッ!! ひぃーひひひッ!!}


{はぁ……久し振りに面白くなってきたぜ}


「そりゃどうも」


俺は素っ気ない返事をした。


{それじゃ……いずれお前さんと遇うことだろう}


{それまでぇ……他の神に“KXXL”されんなよ?}


「……」


{そんじゃ……ばいなら――}


ザザッ――ぷつん――ッ――


「よいしょっ、っと、っ……ッ? イテテテ!」


脳内に鳴り響いた悪魔のようなボイスは消え失せた。 残ったものは物凄い疲労感と脱力感。


「ふぅ……天界にきたら、ここは“地獄”だった」


(笑えねえよ全く……)


「まあいいや、うん」


「さて……記念に“もう一本”」


ジュボッ……ジジジッ――


湿気った煙草に“魂を灯す”――

橙色の強い強い小さな焔が薄闇を少しだけ照らしていく。


「ふぅ……まずいなこりゃ。 だがこれでいい」


パンパンと服についた土を払い、フラフラしながら煙草をただふかす。 ハードボイルドの欠片もない、クズのクズによるワンシーン――


「ふぅ……変わらねえな俺は。 だがそれでいい」


クズはクズのまんま、気取る必要なんてない。


――それが“超一流”の証明。


「“戻ろう”」


煙草を地面に押し付け橙色の魂を鎮火させる。

残された二双のバレットを握り締め俺は神の待つ一軒家に戻っていった――

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