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ふざけてるって? バカ言うな俺はいつだって本気だ!

【夢の中?】


――脳内? でたくさんの映像が流れていく。

きっとこれは半分夢で半分現実――?

もうよく分からない。 でもひとつだけ……


(全くクソみたいな話だ……ったく――)


今まで歩んできたクソ過ぎる人生のワンシーンが次から次へと流れては消えていく。 まるで初雪が降ってきた時のように、地についたらすぐに消えていく儚さに似たようなものを残して――


子供の頃は自由に走り回り、怒られ、どこまでも行ける気がしていた。 それが消え失せて――


(次はなんだ……悲しくなるだろう……本当に)


人生の絶頂期に至り、クソガキが更にクソガキになって、調子に乗りまくり、波に乗ってどこまでも行ける気がした。 それも消え失せて――


(遂に……“来るのか”この“時”が)


夢だとはわかっている、でも……力の入らない身体を必死に動かそうとする自分がいた。


そして――


大人になり、世間の厳しさ、世間のクソ加減、世間のつまらなさ、人の酷さと人の温かさ、人の愚かさ、人のクズさ、人のゴミさを覚えさせられて、いつの間にか羽がもげて飛べない鳥のように地べたを這いずり回る弱った自分の姿の映像。


(もうやめろ……もうやめろッ! 夢なら……)


夢ならば、せめていい夢をみさせてくれよと。

なぜこんなにもダークな世界をまた見せるのだと。


――ふ~んふ~ん……よしよし……大丈夫だよ?


「……」


どこからともなく、鼻歌まじりの優しい声が聴こえた。 どこか優しくて、どこか暖かいその声。

その声にすがるように俺の意識は急激に――


「――ハッッ!!?」


「あ……起きた? うふふっ、寝てたみたいよ」


「ね……寝てた? あ、うそ? あ……」


「ほれ……拭きたまえ、“涙”」


「あ……あ、うん」


いつの間にか目尻に流れ出していた一筋のゆらぎ。 すっ……と、白いハンカチを渡され俺はそのまま涙を拭った。


「ふふっ、どうだい? “ボクの膝枕”は」


「ボク……“ボク”? “膝枕”……ん?」


「まだ寝ぼけてるの? ふふっ……」


「色々とツッコミたいことはたくさんある」


(いつからジンちゃん、“ボクキャラ”に?)


分からない。 分からなすぎて分からない。

そんなゲシュタルト崩壊しそうな状態に陥っていた。


「あ……やっと“ボクに興味”わいたんだね?」


「ふぅ……“見破られた”か」


「バレバレだよ? 全く君は」


「そうだな、ここで“伏線回収のお時間”だな」


(バレたなら仕方がない、開き直ろうか)


うまく伝わるだろうか、うまく理解できるだろうか? わからない、でも……正直に伝えることにした。


「全く……長いよもう! 長すぎだよ!」


「ははッ……ゴメンゴメン」


そのまま俺は正直に語る。


「俺は“周りにあまり興味がないんだ”」


「誰が何をしていようが正直“どうでもいい”」


「世の中で事件が起きても正直……」


「考えても見ろ、一人KXXLされてもだ」


「こうして“喋っている間に誰か死んでいる”」


「……そう、だね」


「……」


少しの間、沈黙があった。 それでも時は進む。


「馬鹿らしいと思わないか? 実に……」


「ニュースで誰かが死にましたと」


「あー可哀想可哀想、残念だわねぇ~と騒ぐ」


「そしてそいつは旨そうに“飯を喰っている”」


「あー可哀想、あー可哀想、あー可哀想って」


「まるで呪文のように連打して同感してくれる」


「そんな仲間を作っていく――」


「……」


ジンちゃんは黙って俺の言葉を聴いていた。


「お前がムシャムシャ飯を喰っている間に」


「世界のどこかではバタバタとガキが死ぬ」


「果たしてどちらが可哀想なのかと」


「お前は飯が食えるだけで幸せ」


「可哀想といいながらメシウマ状態」


「どっちが可哀想なんだよって“哲学”だ」


「だから俺は周りに興味がわかないし持てない」


「考えれば考えるほどループするんだ」


「素っ気なくて、服装とか見てやれんでゴメン」


「ううん? いいよ……別に」


「だけど、“君達はちゃんと”見ようと思う」


今思えばジックリと二人の神様を見ていない。

どんな顔で、どんな髪型なのか、どんな色なのか、どんな体型なのか、どんな匂いなのか――

今思えば――曖昧なままだった。


「ふふっ……そうだぞ? ワタシのモノなんだし」


「そうだな、悪かったよ、ジンちゃん」


飼い主の情報すらまともにサーチ出来てないところが本気で興味がない証拠だった。 それを改めて知れて俺は少しだけ成長したことだろう。


そのまま少しの間穏やかな時間が流れて――


――ガチャッ!! バタンッッ!!


突然大きな音が聴こえたと思うと……


「ま……間に合ったッ!? あ~よかった……」


「なんだよ? 間違いでも起きてるとでも?」


俺の目の前には血相を変えて走ってきたリフさんの姿。


「そ……そうだよッ!! あ~よかった……」


リフさんは大きく肩をおろした。 よっぽど危険だと判断したのだろう。 その安堵は計り知れないだろう。


「……安心しろ、間違いは起きない筈だ」


なんとも歯切れの悪い回答になってしまった。

だが、これが精一杯、これがベストの回答。

これ以外はもうきっと無理だろう。


「――頼むわよ? おっさん! もうッ!!」


「ああ、まかせろよ」


その一言だけを伝え、俺は黙った。


――わかっている、完全には他に興味がわかない病は治っていないと。 結局俺は変わらない。


――俺は“俺自身”に興味があるのだから。


これから、どう物語を創るかだけが最大の興味。

自分がどこまで行けるかどこまで貫けるか。

そして……どこまで“出来る”か。


それが第一優先事項だった――


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