前座は終わりだ! 便座もしめぇよ! これからが本番だ!
【WC】
「はぁ、ハァ、んっ、んふっ、ぐっ――ん″ッ」
――アタシはトイレで悶絶していた。 いつの間にか“幻術”をかけられていた。 勿論、かけた当人は“ジン”だ。 “神”が“人間”みたいに催す事なんてあるわけがない。 そんな必要がないのだから。 しかし――まさか“人間の感覚”を当たり前の感覚を覚えさせられるなんて思ってもみなかった。
「はぁ、ハァ、ぜぇ、ゼェ、アイツ……クソ!」
(あとで仕返ししてやらなきゃ気がすまない!)
色白で可愛い容姿で、誰もが振り向くであろう美貌をもって、グイグイいけるビ◯チな神――
アタシに持っていないものを兼ね備え、ほんっと“理不尽”な事だと神であるアタシすら感じていた。
「はぁ……アイツ綺麗でいいな……ハァ……」
(健康そうな褐色肌、甘くない顔だち……か……)
比較に出来ないほど、ジンと違う自分の容姿。
甘い顔を出来るわけでもなく、いつもいつもキツくあたってしまう自分が嫌だった。 アイツは美しい黒髪。 アタシはくすんだような銀髪。
なんて“神様”って理不尽なのだろうかと、神である自分で思い続けて、続けて、今に至り――
「は……はぁ……! んっぅ、ん、ッ――はぁ、ぅ」
(だいぶ落ち着いてきた……なんて強さなの?)
人間が時折訪れるという、“腹痛”にアタシはガクガクしてぶるぶるして震えていた。
「ふっ……それに“アイツ”なんなんだ?」
(あんな普通そうな顔をして……一番……)
“空虚”な感情を漂わせて。 カラッポなのに、内に眠るものは全てを燃やし尽くし“破壊”してやるぞと言わんばかりの、強くて黒くて暗い感情。
「ヤバいおっさんを“KXXL”してしまった……」
元々、暇潰し程度に下界の様子を見ていたジンの提案でアタシがおっさんをKXXLしてやった。
バカな事を考える人間がいるよって、物凄い強い意思で神に願ってるよと。 面白そうだから身も魂も心も全て奪って、“所有ブツ”にしよう。
「ククッ……“バカな事を考えるのも神”か……」
下界も上も変わりはしない。 結局は同じ事。
システムは違えどやってる事は似たようなもの。 アタシは出るものがないお腹をさすりながら考えをめぐらせていた。 これから起きるであろう……天地を揺らす“大戦争”の事を――
「――あ″ッ?! つか……アイツ? そう言えば」
(美少女二人いるのに反応薄くない? え……?)
大戦争の事と、おっさんのあまりにも薄い反応にアタシは怒りながらも、そのまま籠城を続けた。