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そして俺は!

【WC】


「ふぅ……落ち着くぜここはよ」


それから俺は実に人間らしい行動をしていた。

ピンク色一色に近いキャワワなお部屋を飛び出し、トイレに引きこもり考えをめぐらせて――


「煙草があればもっとハピネスだったのに……」


大体、嫌なときや緊急事態の際に頭をクールにさせるものと言えば煙草だった。 とりあえず煙草吸って気分を落ち着かせ、冷静になれた気分になる。 実に身体に悪い悪い有害物質を吸い込んでいるわけだが、それでよかった。 弱い人間だからこそ、なにかにすがり、何かに依存する。


「身体に悪いものほどうめえんだよ、ったく」


誰かが言った。 身体に悪いものほど旨いのだと。 だからこそ、ジャンクフードはいまだに人気で、油ギッシュなエネルギー飯は不滅なのだ。


「さて……どうしますかね、ふぅ……」


俺はエア煙草をふかしていた。 人差し指と中指をつったてて、煙のない空気を口から吐き出す。

それだけで少し気分は良くなった気がしていた。


「でも、もう少しだけ籠城させてくれ……」


今は考える時間がほしい。 こうして便座に座って、ボーッとしているだけでもなんだか心地好くて、ずーっとボケーっとしていたくなる。


「“なにも考えない”事を考える時間をだな……」


そう、人はそうやって窮地を乗りきってきた。

あれこれ考えても答えなんて出てきやしねえ。

ならば、むしろなにも考えない事を考える。

それがベストってことを知っているからだ。


――コンコンッ!!


「入ってますッ!!」


いきなりの事だった。 トイレのドアに強めのノックがなされて、俺は実に人間らしい反応をみせていた。


「ちょっと、おっさん! いつまで入ってる!」


「あ~はい……サァーセン。 “リフさん”」


この強めな声は一瞬で分かった。 クソ生意気なクソガキさんな褐色肌の神様の声だと。 俺はご丁寧にさん付けで丁寧に返してやった。


「ちょっと~早く出てよ! 漏れちゃうよ!」


「……はい? あの……え? あなた神様だよね?」


「だったらなんなのよッ!! 早く出ろッ!!」


「……」


(ちょっとまて? 神様でも用を足すことが?)


自分の左手を顎にそえて、俺は考えていた。

こんな意味不明なクソ展開、こんな普通じみた日常風景、きっと“演出”として見せているだけなのだと思っていた。 なのにどうしてこんなに人間らしい展開になっていくのだろうか?


「おいッ!? 壊すぞごらっッ!! あ″ぅ……」


「あ~そう言う展開は……“某先生”にだな……」


「なにいってんだおっさん! マジで……早く!」


「はいよ……なんだか知らねえけど出るよ」


ガチャ……きぃ~!


「ぐうぅうぅッ! キッ! 早く散れッ!!」


――ズダダダッ!! バタンッ!! ガチャッ!!


物凄い迫力で睨まれ、物凄いスピードでトイレの門を潜り抜け、トイレの世界へ向かわれていた。


「……ふぅ」


(なんだかなぁ……ほんっと)


釈然としないまま、俺は元いたピンク色の部屋へ戻る事にした。 “某先生”……今頃彼は何をしていることだろうか。 破廉恥なクソ作品を並べに並べ、終盤で燃え尽きてWEB投稿サイトから突如消え失せた、問題だらけの先生……


「奴ならきっととんでもない展開にしていた」


(だが、これはファンタジーな物語になる)


「破廉恥なものなんていらねえ、“卒業”した」


現世にいた時、散々見てきたし体験してきた。

冥界? にいる? 今、そんなものどうでも良かった。 ただ一つ、煙草が物凄く吸いたい、それだけしか頭の中には無かったのだから――


【キャワワなお部屋】


「戻ったぜ……“ジンちゃん”」


「あ~! 遅いよ? “ナニ”してたの?」


「あ、いや……疚しい事は断じてしていない!」


「いや、そう言うのいらないから、うん」


「あ、はい……」


(まさか俺渾身のお帰りの挨拶をかわすとは……)


食えない女だと瞬時に判断していた。


――タタタタッ!!


可愛い歩調でピンク色のベッドから俺の方に向かってくるジンちゃん。 幼い容姿から滲み出るクソビ◯チ臭を漂わせ、ドンドン迫ってくる。


――ガシッッ!!


「……おあッっ!? ちょ、な、ななんだよっ!」


「ほらぁ、お話しましょ? “邪魔者”いないし」


「いてててッ!! 分かった、引っ張んなよ!」


ジンちゃんは俺の手を強引に繋ぎ、ベッドの方へ誘導していく。 一時、ベッドまで吹き飛ばされるのかと思えるくらいに強い引っ張りだった。


ちょこん……


ドッッ! ぼふっ!!


「よし!」


「よしじゃねえよ、よしじゃ……」


(なんだか分からぬまま、隣にはジンちゃんが)


隣には内股にさせ、俺の横に可愛らしく座るジンちゃん。 隣の俺はと言うと、いつも通り、どがッと深く座り込み、がに股姿で構える姿――


「よーし、“ガールズトーク”しよっか?」


「はい……? 今なんて?」


「だから、“ガールズトーク”だよぉ!!」


「……ガールズトークって、おっさんだって!」


「まー、細かい事は気にしない気にしない!」


「ふぅ……まあいいや、どうにでもなれだ」


色白ロリ美少女×ただのクズなおっさん。

これからどんなトークが始まるのか少しだけワクワクして、ちょっぴりだけ不安だった。


「さてと……うふふっ! 楽しみだなぁ~!」


「は、はぁ……そうですね」


これが楽しくなるのか、悲しくなるのか、ここからが“本当の意味”での本番だった――




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