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痺れる展開の渦にのみこまれて。

【“死神の正体”】


「死神……ふふっ――そいつは“無数”に存在する」


姉が殺された話を聞いて愕然としている俺に、更に追い討ちをかけるよう、そんな言葉が飛んできた。 無くはない話、だがそれがどうしたと。


「全てが空虚の存在、“世界を分断するモノ”」


「それって……“現世”と“ココ”を意味する?」


「ふふっ……それ以外あるまい」


「そうだろうな……」


妙にカッチョいいセリフ。 しかし、それが本当の事で、あるべき死神の姿。


「そんな死神にも……“危険なモノは生まれた”」


「“癌”みたいな“モノ”か?」


――突然、分裂する細胞が変質してしまう癌。

もし、考えが本当なら恐ろしいモノだった。


「ふふっ……厳密には違うさ。 “器本体”さ」


「……なんだそりゃ、分かりやすく言ってくれ」


うつわ……本体? 意味が分からなかった。


「神とて万能ではない。 許容範囲を超えた事」


「例えば……人の“念”が強すぎたら? どうなる」


「そ……それは、多少の影響は受けるかもな」


「そうだ。 “分散する死神には感情はない”」


「あぁ……そうだな」


「しかし……くひひッ?! なら……」


「――“身代わり”になる“器が背負う”?」


「ふひゃははははッ!? そうだ、正解さ」


「そりゃ……怪物になってもおかしくはないな」


あてずっぽうに言った言葉が本当になる。

人の念をずーっと受け続けていた――“器”。


「考えたら分かる事さ。 じゃないとヤラレル」


「……だろうな」


例えばの話、ヤンデル系ヒロインを攻略しようとしたら、もう……プレイヤー自身もダメージを負う事になる。 精神的な苦痛が自身を蝕む。


「死神は、そうやって防いできたのだ」


「人間界でよくあるような――“エラー”をな?」


「エラーか……」


「まぁ、我々も――神が生み出したエラーだが」


「笑えねえよ……チクショウが」


しかし、万能ではない神。 器に一極集中させるように、念や感情を流し続けた結果――


「ふふっ……すぐ“側”に沢山いるぞ? 死神は」


ファサッ――ッ!!


深紅のドレスをバタつかせ、立ちあがり、両手を目一杯広げ、なにかを呟く女王の姿――


「我々を――“常に監視”している」


「ひっ――ッっッ?!」


女王の言葉。 それを聞いた後、俺は奇妙な錯覚を覚えていた。 真っ白い空間に確かに感じるモノ。 それは強烈な“視線”。 一歩でも立ち上がればそれはもう、“死線”と変わってしまう程の圧力を感じる。


「いるのだろう? 壊れた――狂った死神の――」


「“器”」


「うそっしょ……マジかよッ?!」


さっきまでお茶会をしていたのに、まさか神速で急展開を迎えるのかよと。 展開の流れが速すぎて着いていけなくなる。


「問題ない――今は“時”ではないさ」


「ほっ……」


俺はホッとしていた。 まだ猶予があると。


「でも気を抜くなよ? 死神はずーっといる」


「いつだって、どんな時でも――“憑いている”」


「嫌な話だなそれは。 どんだけ暇なんだよ」


「“細胞”のようなものさ……無数にある」


「なら……俺も“死神”に殺されたのか?」


「いや、それは違う。 お前は“神”にヤられた」


「まてまて、よくわからんぞ……え?」


頭が混乱していくのがわかった。


「死神は“人間どもの為に創られた”存在だ」


「神も悪魔も、“本来は干渉”しない存在」


「簡単に言ってやろう、“部署が違う”んだよ」


「なるほどね……ははっ」


規模がでかくなればでかくなるほど、同じ会社とて、各部署によってスタイルが違う。 横の繋がりが弱まり、個々の力に頼った運用になる。


「だが、器は違う。 “全てに牙”を向けるんだ」


「最悪じゃねえか……危険すぎる」


「そうだ。 だから姉は――“標的”にされた」


「神をからかう……“神”か」


「見てみろ……感じるだろう? “悪意の塊”が」


「くくっ……あははははッ!! 悪くない――」


「殺し甲斐があるってものだ」


「ビリビリ伝わるぜ……ヤベエモノをがよ」


全身に伝う、嫌な厭な視線と気配の数々――

それは“一柱である死神”のモノだとわかる。


――念、思いを全て受け入れた……“器の死神”。


「ぐぅ……頭が痛くなってきそうだ……ッ!?」


色んな感情が流れてくる。 無念の思い、やりきれない思い。 現世で悔いを残しながら逝った人々の様々な想い―― その全てが俺の頭に流れてくるように侵入してくる。


「“デビルズ”・“シャットダウン”――」


「失せろ――」


ブブッ――しゅるるるぅうぅッ!!


――ビヂヂッッ!!


――フッ……


物凄い光景をみた。 赤と黒の魔法のようなものが、女王の両手から現れると思うと、それを合体させ、真っ白な天空に向け飛ばしてた。


まるで赤と黒が入り交じり、禍禍しい龍のような姿をする“ソレ”はひとつの長い長い槍となり、真っ白な天空を切り裂くような一撃となっていた。


「ふふっ……格好いいだろう? “坊や”」


「あぁ……すげえっすマジで」


本当は、なにファンタジーしてんだこの野郎と言いたかった。 でも、その光景をみれば、そんな事は言えず、ただただ関心するだけだった。


「あれ……なんの“話して”たっけ?」


「いやいや……“死神の話”だろうがよ……」


「あ……あぁ、そうだったね。 うふふっ……」


「頼むぜ……女王。 勘弁してくれマジで」


話が脱線しすぎて、脳でもイッちまったような女王のモノホンのボケに俺は呆れていた。


「んじゃ、本当の“天国に戻そう”か」


「あぁ」


ようやっと、話が進むと思えば少しだけ気が楽になった。 しかし、着実に俺達は死に向かっている。 なのに、何故だかホッとしている。


これが――“人の器から外れたモノ”の感情。


「もうどうにでもなれだ。 進んでやるよ」


「お前らの創った“クソシナリオ”を壊す為に」


「よし……その“眼は死んで”いないな」


「ったりめえだ。 俺はもう“死んでる”んだ」


「殺しても“殺しきれねえ眼”をしてるんだよ」


「ならいい、それじゃ“神の元に帰して”やる」


「はい……?」


「なんだ、わからない話をされたってか?」


「どう言うことだ……? 俺達は――」


「ふふっ――“お前は神に拾われた人間”だ」


「そ……それは?!」


「なら、“お前を待つ神の元”に帰すだけだ」


「“ワタシ達”はこれより“単独行動”に出る」


「“ヨク”? 暴? お前達は坊やに着いていけ」


「おい……なにいってんだよ? どうして――」


せっかく出逢えた縁なのに、ここで終わり?

凄くすごく寂しく思えていた。


「“勘違い”するな」


「ッ――っ?!」


低い声だった。 とてもとても力強い。


「さあいくぞ――ワン?」


「はい――女王様」


「ふふっ――お前を“最初に拾えば”良かった――」


「お――おいっッ?!」


「さようなら――“元人間”」


「“リスタート”」


「ま――待てよッ?! おい――ッ?!」


その言葉を最後に、真っ白な空間はパラパラと音をたて、崩れていく――


「なんなんだよ……くそッ!? ア″ァッ!!」


残される俺達。 俺と悪魔兄妹――


そのまま真っ白な空間は消え失せて――


「“夢から醒めた”みたいね……」


「くっ――」


そんな事をいうヨク。 ヨクの手に握られていた“湯飲み”が夢じゃない事を教えてくれた。


「これからどうするんだ? “俺達”は」


暴は唖然としながら、ボーッとそんな事を呟く。


「知らねえよ……バッキャロウッ!!」


天国で“元人間”一人、“悪魔”二体。


奇妙な光景だった。 場違いにも程があると。


「とりあえず……歩こっか? ははっ……」


「お……おう」


俺達はそのままヨクの言葉に従った。


ナニもない――砂漠のような世界をただ歩いて。










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