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“魅せ”ようか。 真実のお話を――

【弾けとんだ暗闇】


――大きく拡がり続けた(まばゆ)い光が……

俺達にまとわり着いた暗闇をのみ込んだ。


「目が……あけられねえッ?!」


あまりにも強い強い光は俺自身をも溶かしていくようだった。 恐ろしい程の光源に俺は怯む。


「さあて……少し“語ろう”か」


「“我々”と――“神の話を”」


「ッ――っ!?」


眼を焼き殺すかのような光の中、俺は女王の声に吸い込まれるように、目を開けた。 目の前には深紅のドレスを身に纏う“一人”の“少女”の姿――


声はどう考えても大人の女性。 それに、とびっきりクールないい声。 なのに……その姿は少女のようで、どこかアンニュイな雰囲気を漂わせる。


――ガキんちょの癖にどこか大人びる女王の姿。


――とても、とても、魅力的に感じていた。


「まぁ、最も……この空間には“ナニ”もないか」


「ふふっ……」


――ピンッ!!


ニヒルな笑みを浮かべ、指を鳴らす女王。

まさに“悪役”。 そう言うに相応しい存在。

強くて、孤高で、そして――ただ美しい。


強い強い光の中、俺の眼に微かに見え隠れする光景は、俺の心を奪うにはあまりにも早すぎた。


「“お茶”でもしようか。 座りなさい貴方達」


気がつくと、強い光はまともに見えるほどの光量に変わっていた。 なにもない真っ白な空間――


ポツーンとそこに佇む椅子やらテーブルの姿が、妙に寂しく思えた。


「なにがなんだか……さっぱりだ」


荒れ狂った大地が突然、暗闇に変わって、気がつけば真っ白なだだっ広い空間に佇むテーブル類。

一歩間違えば頭をヤってしまいそうな展開。


俺は苦笑いをしながら、椅子に座った。


「……むう……座ろうか“ヨク”」


「う……うん」


そのまま、悪魔兄妹達も椅子に着席していた。


「“ワン”……? “お茶”を出しなさいな」


「はい、女王様。 ただいまお作り致します」


「ふふっ、とびっきり“美味しい”ものをね?」


執事であるワンさんは、なにやらお茶を作る準備をしていた。 嬉しそうに、ニコニコしながら。


そして――“ソレ”は出てくる。


「はぁ……落ち着くわ~これよ、“これ”ッ!」


「あ……アハハ……」


「うぬっ……」


ヨクも……暴も――苦笑いを浮かべ。


当然――俺も――


「なんで“日本茶”やねぇーーーんッっッ?!」


雑な関西弁のようなものでツッコんでしまった。


「なに? 紅茶が良かった? 残念ね……ふふっ」


「残念ね、ふふじゃねえyo! Hey Yo!!」


そして謎の英単語まで駆使していく俺――


「なんなのよもう……うるさいわねイチイチ!」


「いや……俺の想像とは全く違うお茶会でさぁ」


(もっとこう……優雅なものを想像していた)


なのに、出てきたモノはただの日本茶だった。


「まぁ、細かい事はいいじゃない別に」


「はぁ……そうだな。 ズズッ――うまぁ!?」


考えれば疲れるだけ、俺は納得しお茶を啜る。

すると、本当に美味しい日本茶で驚いた。


「だから言ったでしょう? “美味しい”って」


「ぐぬぬっ――まあいいや。 ははっ……はっ」


俺のターンが終わると、次にツッコンだモノがいた。


「……なにこれ? なんか緑色の液体なんだけど」


「ヨク……貴女知らないの? “これ”を」


ズズィーと飲んでヨクに問い掛ける女王――


赤き深紅の長い長いボサボサな荒れた髪がふわふわと揺れる。 おばあちゃんのように湯飲みを持ちながら、澄ました顔で日本茶を啜る女王――


「しらない――なんか芳ばしい薫りがする」


「うぬも……知らぬ――」


「おい、暴よ――お前は“誰”だよ?!」


ゴツくてガタイのいい袈裟姿の破戒僧の様な暴。

あれ? こんなキャラだった? って思えるほど渋い声でそう答えていて、俺は思わずツッコむ。


「ったく、これだから“元人間”は……」


「ツッコミ過ぎて疲れるわよ? リラックス!」


「……ふぅ、落ち着け俺――ここは“異世界”だ」


イチイチ事ある事にツッコんでたら身がもたない。 そう考えた俺は、一度冷静になっていた。


「あぁ、ヨク? これは人間が好む“嗜好品”よ」


「“嗜好品”って――あ″ッ?! “煙草”ッ?!」


嗜好品ってなんだよと思って失笑していたら、煙草が無い事に気がついていた。 色々ありすぎて煙草の事をすっかり忘れていた。


スチャッ――フワッ~


「――お″ッ?! おわッ――ッ?!」


突然俺の目の前に投げられる煙草とライター。

驚きながらも、俺は必死でそれらを追う。


――バシッ!!


「な……なんで“女王”が“コレ”を?」


「なんでって、アナタが落としたのでしょう?」


「そうだな……うん」


きっと、俺がジョウとか言うクソ神に殺されかけていた時に、拾われたのだろう。 とにかく、探していた煙草が見つかってホッとしていた。


「そう、アナタも“渡すモノ”あるでしょ?」


「はぃ? 俺に渡すモノがある? なんの事だ」


意味深なその言葉を聞いた俺は、ズボンのポケットを漁った。 すると、すぐにそれに気がつく。


「あ……“骨”か」


「ほ……“骨”? キミはなんていうモノを――」


いまだ、日本茶に手をつけないヨクがツッコむ。


「あ、いや……ガイコツがだな……あの……そのぉ」


まさか牢獄に腰かけていた、ミイラのようなガイコツをぶっ壊しちゃった! てへッ? ペロ☆


――とは口が裂けても言えなかった。


「その骨は……ワタシの“姉の骨”だ」


「……?!」


(ちょっとまて……どういう事だ?)


“姉の骨”――?! どうしてそんなもんが神の牢獄で? 謎がさらに深まる言葉を女王は言う。


「“その昔”――“神”は“我々を創った”」


「あぁ……」


そこまではさっきの展開で理解した。


しかし――


「初めは黙って我々を“見ている”だけだった」


「……」


俺は黙って話を聞く。 酷く悲しいお話のような気がして、ツッコむ気にはなれなくて。


「しかし……暇になった神は“我々”と……」


「“争うこと”になった」


「“自分で創った”モノを壊そうと考えた神々」


「それはそれは醜い争いさ――殺して、ヤッて」


「奪って、奪って、奪われて――壊され狂って」


「そんな事が長い間続いて、神々はまた飽きた」


「そして、空虚になって、あとは(だんま)り」


「……それがどうしたってんだよ」


話が見えてこない……意味がわからなくなる。


「まあ、聞け、“元人間”」


正直、鼻につく言われようだったが俺は黙った。


「その後、いまだに“悪魔と繋がる神”はいる」


「……」


なんとなく意味はわかった。 けど、それが実際合っているかは自信がなかった。


「争い合ってる内に気がついたんだ」


「“自分達が創った”――“紛いモノ達の味”を」


「ふふっ……とんでもない“変態”どもさ奴らは」


「まぁ……そうだろうな」


ナニがとは言えない。 でも、酷い話だった。


「それで話は戻る。 この骨の悲しい真実に」


「ごくッ――」


遂に核心に至る話が始まる。 喉が渇いていく感覚がどんどんと増していき、緊張していた。


「神と悪魔の中でも“仲がいいモノ”もいる」


「それが、“コレ”と……ご存知の“ジョウ”だよ」


先程、ヒッソリと返した骨をつまんで語る女王。

聞きたくもないヤツの名が出てきて俺は胸が苦しくなった。 俺を殺しかけたムカつく神の存在。 イケメンで……女神好きのイカれた野郎。


それと――女王の姉の接点。


「初めはあやつもそんなヤツじゃなかった……」


「“気さく”でいい男の神だった――」


「信じられないな……ほんっと」


気さくでいい男の神だぁ? どこがだよと。


「まぁ、最も……あやつは“運が悪すぎた”んだ」


「おいおい……神にも都合が悪い事があんのか」


「そりゃね……“神”だって“不完全な存在”さ」


「夢も希望もねえな……ったく」


神って、もう少し凄い存在と今まで思い込んでいた。 しかし、違ったようだ。


「あやつは、神の中でも悪魔と仲が良かった」


「ほう?」


「あれだけやりあった争いがあった後でも……」


「“アイツ”だけは、“心を痛めていた”」


「決して貶したりはしない、硬派な神だった」


「おいおい……なにがあったんだよ……?!」


ここまで聴くと、憎むにも憎めない話だった。


「慌てるな、あと少しで終わる話だ」


「お、おう……」


大体予想はついている。 でも、女王の口からその真実が聞きたい。 真実こそが事実なのだ。


俺の考えた想像なんかより本物が欲しかった。


「誰にでも優しく、誰にでもよくした神――」


「アイツと姉が“恋に落ちる”のも時間の問題」


「……」


「どうして出逢ったかはあまり知らない」


「でも確かに姉とアイツは“出逢って”しまう」


なんだか逢魔時(おうまがとき)のような印象を受けてしまった。 出逢ってはいけない存在。


それが遂に出逢ってしまう時のような――


「いい関係になるも……アイツは踏み出せない」


「触れたくても触れられない哀れな自分――」


「だけど、ある日――アイツは“暴挙”に出た」


「姉を“拐い”――“牢屋”にぶちこんだんだよ」


「――どうして……?!」


わからなかった。 恵まれた存在、恵まれたイケメン、恵まれた性格。


……なのに、アイツはどうしてそんな事をと。


「ふふっ……理由は簡単さ。 姉は“美し過ぎ”た」


「……なるほどな。 なんとなく共感出来た」


簡単な話だった。 あまりにも孤高の華は近寄りがたく、逆に萎えてしまうのだ。 ソコソコが一番いい理論のように、ドが過ぎたら駄目になる。


「仲はよく、お互い好いていた。 でも……」


「“触れられない”」


「……“難しいお話”だなほんっと」


美し過ぎるあまりに、扱い方を知らないのだ。

嫌われたらどうしようとか、んな事を考えていたんだろう、クソ神はきっと……


「拐ってしまったアイツはその日……」


「姉を少しだけ牢の中に入れて――」


「“決意を決めよう”としていた」


「……“クソ野郎”め――さっさと“ヤれや”……」


どんだけヘタレなんだと。 今までどうせチャンスはいくらでもあったろうよと。 なのに、な~に一番最低な展開をしてくれてんだよと……


「そして――それは“起きてしまう”」


「今度はなんだってんだよ……ええ?」


俺は目頭を指で揉みながら訊いていた。 なんだか、もう……疲れてきて脳も目頭も痛くなる。


「勇気を振り絞り、姉に会いに行くと――」


「姉は――“死んでいた”」


「……なんでだよッ?! どうなんたんだよ!」


悲しい話なのかギャグなのか……もう。


「神にも悪い神はいる。 目をつけられたんだ」


「ピュアで好青年だった神――それを“弄ぶ神”」


「姉を“一瞬で殺して”、アイツの反応を窺い」


「崩れ去るアイツの姿を見て嗤っていた――」


「だから――ああして亡骸が腰かけられて……」


ジョウとか言う神はずっと忘れられず、ああして今もなお、姉の亡骸を置いていたのかと。 謎が全て解けて、なんだか胸のつかえが取れた気がしていた。 でも、同時に胸糞悪い話を聞いてしまった。 そんな嫌な気持ちも芽生えてきていた。


「ふふっ……そこからは“酷い”ものさ」


「酒に溺れるように、“女神に溺れた”のか」


「そうさ……それしか寂しさ悔しさは拭えない」


「そうして、アイツは“悪い悪い神”に……」


「時に、女王。 ひとつ“質問”をいいか?」


俺は救いようの無い話をぶったぎり、疑問を投げ掛けた。


「どうしてあんたが“その事を知ってる”……?」


「……それは――」


「なんだよ、“言いたくない”のか?」


「……」


明らかに様子がおかしくなる女王の姿。

あれだけ語っていた口は今はもう……


「“元人間”――よさないかもう」


「ワンさん……」


「言いたくない事もある。 それでいいな?」


「あぁ……そう――だな」


これ以上の言及は出来そうには無かった。

だから俺は、“次の質問”をすることにした。


「で、だ――誰なんだよ“悪い神”って」


「……“死神”だよ」


「しに……神?」


おかしい、死神はちゃんとした神のイメージ。


――なのにそんなに平気で命を弄ぶのかと。


「あぁ……“厳密”に言うと“違う”かな?」


「正当な死神の“影”みたいな“モノ”か――」


「なんだそりゃ……つまりシャドー?」


「うーん……なんとも言えない」


「厳密にでもないじゃないか。 ガバガバだ」


「それが分からないんだよ、本当に」


「死神ってさ、俺のイメージだと感情ないかと」


「うん、それで合ってる。 なのに……うん」


「あっちゃ駄目だからな“普通”は――」


死を司る神――そいつがなんでもかんでも、操れたらこの世界はすぐに滅んでしまうだろう。

だから基本、死神は感情がないモノの認識で俺は考えていた。 そして、間違いではなかった。


――じゃあどうして“姉”を“殺した”?


“謎の展開”へと発展していた。




















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