かつてクソ野郎はいっていた。 なにも考えないと。
【地獄・街の裏側】
――絡み着いてくる純白の悪魔。
――頭を抱えて考える人状態の野郎悪魔。
クソみたいな展開の中、俺はふと思った。
――かつて……ふざけた成人向け小説? を書いていた作者の事を。
「なにも……“考えない”が“正解”か……」
その昔……ネット小説でイカれた作者がいた。
書き貯め一切ナシ、誤字脱字放置、毎日のようにクソみたいな話を万文字ペースでぶっぱなすアホみたいな作者が。 そいつがコメントを残した時、俺は書き貯めなんか出来ない。 そんな高度な脳ミソあるわけがない。 なにもない。
――だから俺は“ありのままを魅せる”と。
プロでもなけりゃうまくもない。 俺はただ、思ったように毎日リアルタイムで書いていくだけ。
勿論、全て即興、全て速攻。 数――文字の暴力で見ている“読者”の“思考”を“ぶっ壊す物語”を書いていると。 もし、他が善を書くのなら。
俺は――“アク側”の小説を書くだろうと。
俺には速さと、フィーリングしかないのだと。
なにもない、“なにも考えない”から、“物語”は創れる。 ……等と、意味不明な事を数千文字に渡って書いていたのだ。
「ある意味、“最狂の作者”だったな……」
勢いに任せ、なにも考えずただひたすら文字を打っていたのだと考えたらもう……恐ろしい。
展開おい、ミスったろと思って突っ込みたくなったら、スゲー強引にいや、実はだな……的な絶妙な誤魔化しを駆使しまくって駆けていった――
「ふぅ……それがいいかもしれん」
下手にあれがこうだから、そうなんだ。 的な事をアレコレ考えていても話は進まない。
いっそのこと、開き直ってなにも考えず、このクソみたいな展開を見ていこう。
「“ヨク”……“好き”にしていい」
そして俺は折れた。 どうせなるようにしかならない。 物語は流れて流されてこそ面白い。
――誰も分からない展開。 ソレが一番いい。
「ふぅ~ん? いいの? ほんとにいいの?」
「あぁ、いいよ。 どうせ離れねえんだろ?」
「やった! わーい! 嬉しい!」
純白の悪魔はキャッキャ、キャッキャしていた。
本当に嬉しそうに、まるで子供のように。
「暴てめえはどうすんでぃ……?」
なぜかべらぼう口調になる俺。 これこそ自然。
好きに俺は生きていく事にした。 綺麗で丁寧で、完璧を求めた設定通りの小説みたいにはならない。 これが“リアルのファンタジー”なのだ。
「勿論――“お供”しよう」
スクッ――と、悠然と立ち上がる暴。
さっきの絶望はなんだったんだよと。
「なんだか知らねえけど……いくぞッ!!」
悪魔共「おーーーーッ!!」
「……」
今だけは……“今だけ”は“いい夢”を魅させてくれ。 きっといつかいい夢も“醒めて”――
「いや……させねえ」
俺はボソッと呟いた。
「ん……どうしたの?」
「……お前らは“殺させない”」
悪魔共「ッ――?!」
悪魔達は驚いていた。 眼をキリッとさせて。
「安心しろ、俺にはその“義務”がある」
ひとつの時代、ひとつの“巨大な世界”――
それを壊さんとするモノの“宿命”――
「俺は弱い。 だが――“強い”」
弱いゆえに強い。 何度も何度も何度も……
――俺は失敗してきた。
夢も――人生も――
薔薇色にさせるつもりだった。
なのに――気が付けば“暗黒色”に染まって――
“堕ちる”ところまで堕ちて、そして――
「もう……“勝つ”しか道は無いんだ」
「清清しいほどのバカだねキミは……ふふっ」
「誉め言葉として受け取っておこう」
バカは死んでも治らねえ。 だからバカなのだ。
――それで上等。 バカにしか出来ない展開を。
――くそったれな神どもに“魅せて”やるだけ。
「だけど……力が足りないよ? “全然”ね……」
「それはこれから考える」
なにも考えないと言ったな? あれは嘘だ。
――やっぱり考えないと無理だと気がついたバカだった……
「まぁ……ボクらって一度、“負けてる”からね」
「あぁ……遠い昔――“大敗北”した」
「そうか……」
悪魔共の声が凄く沈んでいるのがわかった。
神と悪魔――相容れない存在。
「ボクたちはただ“生きてる”だけなのに……」
「“世の中”そんなもんだろ……」
肉食動物は生きるために草食動物を喰い殺す。
草食動物は生きるために植物を噛み喰らう。
――そして……人間たちは私利私欲の為に――
悪魔共「……」
沈黙が薄暗い街の裏側を更に静める。
「……だからぶっ壊すんだよ。 ムカつくから」
根本的な問題を解決するにはソレが一番。
くだらないも駄目もない。 それが“真実”。
「付き合ってくれるか? こんな、俺に……」
自分な身勝手な私利私欲の為に全てを破壊すると決めたバカな俺。 だけどもう止まれなかった。
「勿論……それくらいブッ飛んでる方がいい」
「そうだな、それくらいじゃないと無理だ」
「ふっ……そうじゃなきゃな」
こうして完全に“悪側”の物語が始まった。
――正義など、どこにもない、ただの奇行。
これが、“本物のファンタジー”。
――ブワンッッ!!
「ッ――?! な……なんだッ?!」
俺達がニヤニヤしていると、突然、目の前の空間が“歪んだ”。 そして、すぐに理解する事態。
「あら……“お楽しみ中”だった? “坊や達”」
「あ――ッっ?!」
目の前に現れたモノは――
俺を物見遊山させた――
「さあ、“戻りましょうか”」
――女王だった。




