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テンプレートクラッシャーッ!!

【酒池肉林なお部屋】


――空気が重く感じる。 甘ったるい酒の匂い、鼻を侵していくかのような“女の匂い”――


“完全”に“童貞”のいる場所じゃないのは分かっている。 しかし、もうどうにも止まらない。


――ザザッ!! ビュンッッ!!


「――うおッッ?!」


物凄い覇気、物凄い風圧が俺を襲う――


そのまま――


「オッサン……“こちらから”いくぞぉッ!!」


「……ん″な″ッっ?!」


――ボゴッッっッ!!


――バガァア″ァア″ァア″ァァ″ーーンッッ!!


「がッ――ァ″――?!」


一瞬の事で何が起きたか分からない。 でも……きっと俺は宙に浮いて、吹っ飛ばされたのだろう。

全身に伝わる痛み――脳が痛みで一瞬とてつもなく冴え渡る。 しかし、一瞬でそれは解け、危険信号が全身に響き渡る。


眼球、散眼、意識低下、暗転、点滅、呼吸困難。

ありとあらゆる危険なサインが飛び交う。


コキコキッ……


「よえぇ、弱えぇ……“弱エェ”ッ!!」


コキコキと指を鳴らす音だけが鮮明に聴こえる。

俺をぶん殴り吹き飛ばした神の声は濁っていて聴こえない――


「おいおい……その“黒いマントは飾り”か?」


「がッ――はっ、ぁ″ッ――ヒュゥ、ヒュウッ――」


ようやっと神の声が聴こえた。 他の神から頂いた厨二風アイテム。 それを悪く言われたような気がして俺は超絶反応をしていた。


「おいおい……大丈夫かよオッサン……ヤバ……」


「え″……? あ″――あ″ぁあ″ッ?!」


本気で心配するような神の声で俺は分かった。

――死んでもなお、“赤い”“紅い”血は出る。


「ゴボッ……お″ぇッ……?! う″ぶっッ?!」


――ビヂャッ……ボタッ……ビヂャン……ポトトト……


そんな厭な音が聴こえ続ける。


口の中から漏れ出す赤い血。 全身に伝わった痛みはとっくに消え、驚きが勝ってしまったようだった。


「はぁ……弱いな“元人間”。 ツマラン」


「ガッ――うぶっ……?! ゴボッ…ッ?! ぉ″ぶ」


――びぢゃぢゃっッ!!


内臓でも破裂したのかなんなのか、流血が止まることは無い。 口の中が鉄臭くて、苦いようなしょっぱいような、なんともいえない厭な味がする。 情けなく壁に寄りかかり、俺は一歩も動けなくなっていた。


「ククッ……手を下さずとも“勝手に死ぬ”か……」


哀れむような声が聴こえてくる。


「さぁて……俺は女神達とイチャイチャしよ!」


イライラしてくる言葉が聴こえてくる。


「ごめんね……? “続き”……しよっか?」


端っこの方に避難していた女神達がジョウの元へと向かって行くのが見えてイライラする。


「ゴボッ……?! ぅ″ぶっ、はぁ、ん″っぐっ」


そんな地獄を見させられている中、俺は流れ出す自分の血を飲んでいた。 これ以上、血を失えば死んでいたとしても、死んでしまうのだろう。


どういう原理でこの世界が成り立っているかは知らない。 でも……危険な兆候だとすぐに読めた。


「げふっ、ん″っ――“神”も“仏”もありゃしね」


かすれて震えた声で俺は呟いていた。


「うぷっ、おぶっ、えぶっ、ぉ″、お″おッ――」


意識が飛びかける、身体が沈んでいく――


薄れゆく意識の中で俺は願った。


“神”でも“悪魔”でもいい――早く俺を助けろ。

俺を助けてくれるなら、何でも構わない。


――こんなところで俺は……死ねない。


なんとしてでも生きて生きて生き延びなければならないのだと。


「……ごぶっ、ヒュゥ、がひゅぅ、ごぷ……っ!」


でも……限界だった。 とうとう俺は――


「ぁ″ッ――」


バサッ――ッ!!


――意識を飛ばした。



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