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ふざけた展開のあとは真面目なお話をしよう。

【キャワワなお部屋】


あれから――


「ねえ、“君達”……“ナニ”してきたの?」


案の定、もう片方の神に突っ込まれ……


「いや……あの、あのッ?! 疚しいことは……」


「そ、そうだよ? 信じて? ジン?」


続けてリフさんが釈明して……


「嘘だよ……何でそんなに“キョド”っているの」


「そ……それは――」


「ななな、なんでもねえって! ジン!」


リフさんが野郎口調になって……


「なんか……おかしいよ“二人”とも」


ジンちゃんはむくれた表情をしながら、可愛らしく腕を組んでプンスカしていた。 ぷくぅーと頬を膨らませながら、足をダンダンさせながら。


「わかった……ありのままを話そう」


俺は観念して伝える事にした。 どうせ後からバレる事なのだからと。


「お、おいッ?! お前なにいってッ!?」


リフさんが驚いた表情で俺を見据えた。 大きな瞳をカッぴらき、今にも胸ぐらを掴み掛かりそうな剣幕をさせながら。


「どのみち“バレる”んだよこんなことは」


俺はとても冷静な口調でリフさんをなだめた。

こんな話が長引いても特なんてしないのだ。

むしろ、ここでキレイに決めてやるべきなのだ。


「ぐぅ~! 勝手にしろよッ!!」


タタタタ――


バタンッ…!!


リフさんは急に走りだし、キャワワなお部屋から出ていった。 よっぽど恥ずかしかったのだ。

俺にはわかる。 俺が逆ならもう大変だった。


「さて、“お姉さん”に話してごらん?」


クイクイ……と、こっちにおいでとジェスチャーする俺より背の小さいお姉さんに呼ばれた。

こんなんでも、俺より本当に年上なのだろう。

それがリフさん同様に信じられないでいる。


「はぁ……しゃあねぇ、全てを語ろう」


「よし、よくできました! よしよし~」


「やめてくれ――イイ子イイ子は嫌いなんだよ」


ぺちんと優しく俺の頭を撫でる細い手を退けた。


「ちょっとぉッ?! なんなのぉ? 痛いよ!」


「ごめん、痛かったか? すまん」


そんなに大げさなほど強く払ってはいないのだが、物凄く痛い振りをするジンちゃん。 まさに“理不尽”な光景だった。


「ううん、全然平気だよ? へでもないよ!」


「あ、はい……」


ブンブン腕を回すそんな無邪気な光景を見て俺はホッとしていた。 そして、可愛いなとも……


「で、まさか……“ヤッて”ないよね? ねっ?」


「……」


俺はその言葉に黙るを選択した。


「ねぇ……“ヤッて”いないよね?」


「あぁ……“ヤッては”いな……い」


「ふぅ~ん? “未遂”なんだ」


「……」


未遂と言われると語弊がある。 だがしかし――


「まあまて、俺には“文句”を言う権利がある」


「よろしい、許可する」


「なんだかなぁ……」


(なんなんだこの裁判のような光景は……)


そう思わざるを得なかった。


「言ってやる、“悪いのはアイツ”だッ!!」


「……んなッ?!」


「そうだろう、なんて酷い奴だと思ったろう」


「うん……」


勿論……酷い奴は俺の方の解釈でいい。


「だがな、反論を認めてくれよ裁判長!」


「よろしい、許可する!」


「うっす! じゃあ説明しよう」


それからお風呂場であった事件について語った。


【弁論? 後】


「ふむ……確かに、リフちゃんが悪いかも……」


「そうだろう。 俺は必死に必死に抑えた」


そう、あの時何があったか。 目眩ましの呪文を掛けられ、俺は視界を闇で覆われた。 そのまま身体を洗えという褐色肌の神の背中を洗ってやった。 勿論、前面の部分は触れてすらいない。

ここまでは、ギリギリセーフのラインだった。


「まさか……リフちゃんがねぇ……“泥棒猫”だよ」


「なんだよその台詞は」


「だって、リフちゃん君に酷い事してたじゃん」


「あぁ……まぁ、うん」


確かに思い返せばおっさんおっさんおっさん。

呪文に聴こえるレベルでおっさん連呼されて、凄いぞんざいな扱いを受けていた。


「それなのに……まさか“発情”しちゃったの?」


「う……うん。 そ……そそそそうだな!?」


あまり思い出すと駄目になってしまうだろう。

だから俺はあまり思い出さないように他の事を考えながらキョドっていた。


「ふぅ~ん? 気持ち良かった? “抱かれて”」


「ふぅ……認めよう。 ただ、“神”だったと」


「ふぅ……そう。 その先はイッてないんだね?」


「イッてませんッ!! “神に誓う”ッ!!」


超光速のレスポンスだった。 だってイッていないのだから。


「ほほう? 君はちゃんと理性を保てたと?」


「あぁ、危ない戦いだった。 これが神かと」


「ちょっとなにいってるか分からないんだが」


「まぁ、ちゃんと“叱った”から大丈夫だよ」


「う~ん、なんだかわからないがよし!」


「――無罪確定ですかッ?!」


「いや、“執行猶予”確定だね!」


「ワッツ? ワァイ? どうして……?!」


(なぜだ、なぜ俺が……執行猶予に?!)


わからなかった。 冤罪だというのに、判定を覆されて逆転負けだと?! 頭の中で?マークが無数について回った。


「“飼い主お叱り罪”だもん!」


「……はぃ?」


きっと今の俺の声は某刑事ドラマに出てくるインテリおじさんのトーンだった事だろう。 それくらい俺はビックリしていた。 頭のユルい神のそんな言葉に心底呆れるのとビビるのと……


「飼い主に噛みついちゃダメでしょう?」


「だったらどうしろと……“最後”までイケと?」


(わからない、女の考える事も神の考えも……)


また頭が痛くなってくる感覚がしていた。


「いやいや、もう少し“優しく”さ……」


「いや、スゲー冷静にダメだよって言ったけど」


俺は真顔でそう答えた。 物凄くクールにダメだよこんなことと捌いた筈だったから。


「ぐぅ……激昂したわけじゃないのか……」


「はい、そうです、裁判長」


「よし、やっぱりリフちゃんが悪い!」


「なんだよそれ……まあいいやそれで」


浮わついた話からさらに浮わついた話で話が終わろうとしていた。 しかし、俺は見抜いていた。

この事件――まだ“終わりじゃない事”を。


「よし、リフちゃん有罪! これにて閉て――」


――パンッ!!


俺は手を鳴らしその言葉を遮った。


「裁判長……まだ“終わり”じゃないぜ?」


「なっ……?! なんですって?」


色白な美しい裁判長は驚いた顔をしていた。

本気で驚いた様子で俺を見る。


「裁判長、“あんたも有罪”だよ」


「えぇーーーーーッ!? なんでぇ~?!」


――ギシギシッ!! ぽふっ、ポフッ!!


裁判長はピンク色のベッドを大袈裟に揺らし、驚いていた。 そんな姿も……可愛いなとも。


「あんた……“飼い人誘惑罪”だよ」


(遂にツッコんだパワーワードを出した)


「ひぅッ?! な、なんで? 普通じゃんこれ」


「いや……それは“人”には目が余るものだ」


だってそれは――


「なに? 君、“こういう服”が好みなの?」


「いや……そうではなくてだな――うーん」


ジンちゃんの着ている衣服をチラッとみて、俺はすぐに目を伏せた。 元人でも生きてる人でも関係無い。 目に余る服装なのだ。


「可愛いでしょう? うふふっ!」


ジンちゃんはうっすい白いネグリジェをヒラヒラさせながらキャッキャしていた。 その奥には白い花柄? な下着が見え隠れ……ではなく丸見え。


「はい、有罪確定! 執行猶予ナシだなッ!」


「えぇ~?! どうしてぇ~?」


「わからねえか、なら言ってやる」


「う……うん」


「ただただ、エ◯チすぎるんじゃ! 貴様ッ!」


「うぇッ?! これが? 嘘でしょ? はぃ?」


「嘘ではないッ!! 俺は噛みつくぞ!!」


「それが例え“神”相手だとしてもッ!!」


「う″ぁ″ッ?! クククッ……“ボク”の負けだ」


「よーし、これにて閉廷ッ!!」


――パンパンッ!!


俺はよくわからない木のハンマーの代わりに手を叩いた。 こうして謎の裁判ゴッコは終わる。


「あーあ、負けちゃった。 えへへ」


「……あの?」


「ん? どうしたの?」


「あ、いや、俺達なんの話をしてたっけ?」


「あ……うん。 そう言えば……」


「よ、よしまあいいや! 俺は寝るぞ!」


「あ、うん」


「で……俺の部屋はどこですの?」


「あ……ッ?! そう言えば“構築”してなかった」


「なんだよ構築って」


「いや~すっかり忘れてたよゴメンね?」


「いや、だから“構築”ってなんですか?」


「まぁ……細まいことは忘れてさ!」


「ちょっとまて……つまり俺の部屋はないの?」


「あぅ……簡単に言うとそうなるよね?」


「おいおい、どうすんだよ! 眠いんだが!」


(まさか異世界でも眠気はあるとは思わん)


なんだか疲れてすごく眠たいのだ。 死んでも死ねるらしい不思議な世界。 あまり現実実がわいてこなかった。


「“リフちゃんの部屋”にいきなよ……?」


「……それはつまり? なんで?」


「リフちゃんの部屋に“二段ベッド”あるから」


「おいおい、勘弁してよぉー? マジで?」


「うん、マジマジ! 私の部屋より綺麗だし」


「あぁ……まあそうだろうな、うん」


俺は改めてキャワワなお部屋を見渡した。 ピンクで統一された壁紙や寝具。 その中でぬいぐるみやらおもちゃやらがうまい具合に収まっている。 ずっといたら頭をヤりそうな部屋だった。


「ふふっ、リフちゃんああ見えて綺麗好きなの」


「いや、まあ……そうだとは思うぞ普通に」


言われなくたって想像出来ていた。 ああいうキツイ性格の奴はかなり細かい所にうるさいから。


「よしッ! 行ってよしッ!!」


「お、おいッ! 押すなよ?!」


「はいはい……“サヨナラ”――」


「え……?」


強制撤退される間際の事だった。 ジンちゃんの口からでたその一言がとても悲しい悲しい言葉に思えて俺は思わず背筋をザワつかせていた。


――パタン。


……カチッ――


ドアが優しく閉まり、そして静かに鍵が掛かる。

俺はただ一人、部屋の外で立ち尽くすしか出来なかった――

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