毒舌くのいち
「カスガよ・・・」
「はい・・・」
場所は、木に覆われた山奥。
片膝立ちをしてる少女。高い位置からポニーテールをしてるのに、腰まで伸びてる漆黒の髪。忍服を着ている少女カスガ。 目の前には、白い髭を生やしている見るからに仙人な老人がいる。
「さっさと言えよです。ジジィ」
「敬語か違うのか分らねーよ」
「ジジィも若者言葉使うんじゃねーよ」
さっきまでと言葉遣いが違うのは驚くが、この際気にしないでいようか。
問題は、ジジィの方だ。何なのか分らない。
「で、何なんだよです」
「もう普通に喋ろ」
呆れたジジィ。話を続けたジジィ。
「天塚家の息子の護衛を任務とす」
「天塚家って・・・昔からの殿様家庭だよね」
意味が分りません。ジジィは説明をしなかった。理由は面倒だから。
「私達忍が代々仕えてる偉いとこでしょ?」
「簡単に言えばな・・・」
ポンと手を叩いた。分ったようで安心したジジィでした。
「その息子って、どんな奴なの?」
「一応偉いから言葉遣いには気をつけろ」
いや、ジジィもだよ。“一応”って・・・。
「とりあえず行って来い」
詳しい内容を言わずに無理矢理追い出されたカスガ。
「ここが天塚家?」
旧家が聳え立ってる。日本庭園が見える。本当に今って21世紀って思わせる。まあ、忍もだけど。
「うわぉ・・・女の子?」
「あの・・・男です」
見下ろすと制服を着てる少年かどうか分らない子がいた。
ワイシャツの首元を開けて、ネクタイも緩めてる。今時の若者って風に制服を着込んでる。
男子制服なのに女顔だから、男装した女の子って感じ。
「キミは天塚家の者?」
「そうですが、貴女は?」
急に自分の家に、忍者のコスプレをした奴が現れれば動揺もする。
オドオドした様子でカスガに話し掛ける。
「・・・守りたくなるか?」
失礼な発言だった。可愛いから守りたく無いのですか?カスガ。
「あの・・・」
「私はカスガ。貴方を守るために参上しました」
礼儀正しく、地面に手を付いて片膝を立ててる。
少年は、オロオロしだした。
「あ、えっと・・・あの・・・」
「お主が、くのいちか?」
聞き覚えの無い声がした。そちらの方を見ると、杖を付いた老人がいた。
「お祖父さま・・・」
「サヤ・・・この娘は、ワシら一族を影から支えた者達の娘だ」
少年の名前はサヤらしい。やっぱり女の子っぽい名前だ。
「この娘は、この家に住まわせて、随時サヤを守るのだ」
「随時!?」
「住む!?」
老人の話にサヤとカスガは驚いた。
「もちろん寝る時もだ」
お祖父さまの発言に真っ赤になる二人。
カスガも、毒舌ながらも女の子なのです。
「寝る時も・・・」
「お祖父さま、学校は?」
「もちろん行かせる」
ボソッと言ったカスガの声は聞こえて無い。
カスガ達は、家に入った。
あっという間に就寝時。サヤの部屋は和室なので、布団を並べる。
「・・・えっとカスガ。明日からよろしくね」
「嫌だけど仕方無いし」
カスガの言葉に苦笑いを浮かべたサヤ。
その笑みに顔が赤くなり布団に潜り込んだ。
その様子に笑いを堪えながら布団に入った。
「・・・よろしく」
ボソッと聞こえたカスガの声に嬉しそうにするサヤ。無理をしないで、とサヤが言ったの、カスガに伝わっていただろうか。
「んっ・・・おはよカスガ・・・ってアレ?」
サヤが起きるとカスガはいなかった。布団が綺麗に整頓されてたの見て、夢じゃなかったんだと安心したサヤ。
「おはようございますサヤ様」
「ん。敬語じゃなくて良いよ?」
寝ぼけ眼で、フニャと笑ったのを見たカスガは赤くなって、フイと横を向いた。
「朝ご飯だね」
居間に行くと、卓袱台の上に日本だ、という風な食事があった。
お魚から、卵焼きや、味噌汁があった。
サヤは、ゆっくりと食べてる。カスガは、早目に食べてたので、見守っている。
「ごちそうさま・・・」
三十分掛けて食べ終わった。
サヤは、ノロノロと着替えに行く。カスガは、庭を眺めてる。
「終わったよ」
「じゃあ行こうか」
着替え終わった様子で、カスガと一緒に家を出た。
余談だが、カスガの格好は忍服。
「眠い〜」
「危ない!!」
寝ぼけて周りを見ずに歩いてたせいで、車が飛び出したのが気付かなかったサヤ。
サヤの首に腕を回して止めたカスガ。
傍からみればカスガが後ろから、サヤを抱き締めてるように見える。
「っ・・・・ありがとう」
「マイペースなのは良いけど気をつけてよ」
後ろに感じる体温に身体が熱くなるサヤ。
なんとか冷静に堪えて答えた。
「おはよ・・・・ってソイツは?」
学校に着いたら、すぐに友人が話し掛けてきた。
「あ、僕の護衛だって」
「はあ?」
友人は、わけが分らないように言ったが、サヤの方が分らないだろう。だって、説明出来ないから。
「サヤくん」
クラスの女の子が現れた。
見た目は、ギャルの女の子だけど性格は真面目な子。
そして、サヤを好きなのだ。
「なに?レイさん」
「付き合って無い・・・ですよね?」
レイと呼ばれた女の子の言葉に、微かに頬を染めたサヤ。
カスガは、窓の外をボーッと見てるから気付いて無い。
「・・・・サヤくん・・・私・・・好きです」
「なにが?」
マイペース故に鈍感なサヤだ。覚悟を決めたのに肩透かしなレイだった。
「・・・サヤくんが」
「・・・え」
突然の告白に動揺するサヤ。その告白を聞いたカスガは、クナイをレイに投げた。
クナイは、レイの足元に刺さり怪我は無い。
「カスガ!危ないだろ!!」
「っ・・・」
下唇を噛み締め逃げ出したカスガ。
微かに涙目になっていたカスガに、驚きを隠せないサヤ。
「カスガ・・・」
「あ、サヤくん」
「・・・ごめん。その告白は受けれない。今の僕には恋愛なんて分らないから」
サヤはカスガを追いかけるために教室を出た。
「なんで・・・イライラしたのさ・・・ムカつく」
自分の感情が分らないようだ。
ちなみに、今は屋上にいます。
「空は自由でいいな・・・」
雲一つ無い快晴に想いを馳せるカスガ。
「鷹?」
自分の飼っている動物が、自分の上空で旋回してる。
「なに・・・・え・・・・・サヤが!?」
どうやらサヤが、カスガを追うために学校を飛び出したようで、その時にどっかの悪い奴等にさらわれたようだ。
「私のせいだ・・・あんなブスに戸惑ったから」
相変わらず毒舌が激しいカスガ。
「もしサヤに何かあったら・・・・覚えてろ・・・・あのブスも含めて」
怒りに沸騰しているカスガ。ボソッと呟いた途端に消えたカスガ。
「・・・テメーらか?」
「んだと?」
どっかの廃墟に着いた。カスガの目の前には、縄で繋がれたサヤとヤクザっぽい人がいた。
「産業廃棄物のくせに・・・サヤに触れるなんて・・・・消えてしまえ・・・・燃えてカスになっちまえ」
レイのこともあったせいか、イライラの頂点・・・沸点を越してたようだ。
「明日・・・新聞に載るね・・・・ボロボロになった二人のボケ茄子が街中に放置ってね」
「!!」
カスガに殴り掛かったヤクザAをかわして、ボソッとと何かを言った。
「なに?命乞いか?」
「さぁ・・・パーティーの始まりだよ」
歪んだ笑顔で笑って言った途端に現れたのは、ネズミだった。しかも、数万匹という大量。
ネズミは、ヤクザの二人にくっつき、二人の服を食い破る。払ってるが何万匹もいるので消えない。
カスガは、その間にサヤに近付きクナイで縄を切った。
「大丈夫ですか?」
「ありがとう・・・カスガ」
「・・・・なんでしょう」
仕事口調で話してるが、サヤに会い辛いため口ごもるカスガ。
「・・・聞いて?」
真面目な顔で言ってるサヤに戸惑いを隠せないカスガ。
仕方なく頷いた。
「まだ・・・僕には好きって分らないから・・・・分るまで待ってくれる?」
「私は・・・・ただ、貴方を守ることだけが仕事なんです」
「うん・・・これからもよろしくね」
カスガに抱き付いたサヤ。カスガは真っ赤になってる。
そして、カスガはキリッと顔を変えて、サヤに聞こえないように言った。
「燃えるゴミでも良いけど・・・なるべく人の目に付く所に放置して・・・・あと、人さらいをしたって紙を着けて」
近くにいた味方の忍者に言った言葉だった。
サヤを支えながら歩いて家に帰った。
二人の表情は、晴れやかだった。
どこの人よりも、主従関係が強くなりそうな二人だった。
だけど、いつかはこの気持ちに変化がついて、二人の関係が変わる日が来るのだろうか。
ついでに、次の日の新聞には・・・。
『交差点に変態出現。
彼らの格好はボロボロで、ほぼ裸だった。
警察は、彼らに着いてた紙を見て逮捕に踏み切ったようだ。』
「私の主に手を出す奴は・・・・容赦しないよ」
不完全燃焼でした。続きとか書きたいけどネタが浮かばないし・・・。