ユグドラシルの草原
ユグドラシルの影響からか、草原には野生の動物が多数存在している
空を小飛竜が舞い、草原を走るウサギにウマ、獅子に虎と本来同じ環境には存在しない生物が共存する
「ユグドの草原はユグドラシルの魔力によって特殊な環境が作られた場所で、動物の生命が環境に関わらず維持されるんですよ。もともと草原に暮らす者たちは生命力が活性化され、通常の環境よりも生き生きと活動できるんですよ」
レイスが聞いてもいない事を教えてくる
「どうでもいいわ。つかいつになったらユグドラシルには着くんだ?」
「もう少しでしょうか」
「はあ」
レイスのもう少しは信用ならない。ルキア額に手を当てため息をつく
「何ですか。その、僕の言ってることが信用できない。みたいな態度は」
「これだからお前みたいなやつは嫌いなんだよ。あと2時間はかかるんだな」
「いえ、3時間はありま」
言葉を遮るようにルキアは馬車の席に横になる
「......」
「そんな露骨に嫌な顔してこっちを見ないで下さい。これでも全速力なんですよ?」
「......ケッ」
「武器の手入れでもすればいいじゃないですか。どうせ暇なんでしょう?」
「何でそんな面倒なこと。いつもお前に任せてるだろうが」
「やらされるこっちの気にもなってほしいんですが?」
「知るかよそんなこと」
「全く」
レイスは静かにそう呟く
「そろそろ自立してくださいよ。仕事をしているから良いものの、それでも怠け者なんですから。シドさんも悩んでましたよ」
「それは御愁傷様だな。こんなお荷物を善意で広った事を後悔しろってんだ」
真剣に話すレイスと反対に、ルキアはその話を聞いて嬉しそうににやついている
「本当に、ひねくれものというか」
「ほっとけ」
会話が終わる
長い沈黙の後、レイスが思い出したようにルキアに話しかける
「ルキア、貴方はなぜ遺物を使わないのですか?」
「俺に合う物が無いから」
「というと?」
「中途半端な物は使いたくないし使わない。極端に強くて扱いが難しい物より、弱くても馴染む武器の方が強いと思わないか?」
「一理ありますね」
「だろ?。他の仲間を見てると分かるんだよ。遺物を使ってる奴は辛そうで、遺物に使われてるみたいで」
「は、はあ」
「俺は他人に使われるのは気にくわない。どうせ使うなら俺が壊れるまで徹底的に振り回してやるくらいの方が気分が良い」
ルキアは不気味に笑う
「な、なるほど」
レイスも返す言葉が見つからず黙ってしまう
「とにかく、俺はまだ弱いって事だ。その分ジイさんはずげえよ。あんな遺物をもう一人の自分みたいに使ってる」
「そうですね」
「.....ま、堅い話はここまで。呑気に行こうぜ」
ルキアは急に真剣な表情を崩してレイスに笑いかける
「あ、はい。そうですね」
レイスもはじめは驚いていたが、つられて微笑む
そうこうしているうちに馬車の速度が落ち、やがて止まる
「ルキア。着いたみたいですよ」
「そうか」
(チッ。クソめんどいわ)
内心愚痴りながらもルキアの足取りは軽く、初めて感じるユグドラシルの力に興奮していた