妖精の森
馬車は妖精の森に入り、外の空気が涼しく感じるようになる
「もう少しですね、ルキア」
「そうだな。........国から6時間もあるってのに、随分と元気だな。昨日は楽しみで眠れないとか夜中に鳩送ってきたくせに」
「よく夜更かしはするので」
青年は苦笑する
「ふーん。てっきり貴族の奴は規則正しい生活をしてるもんかと」
「僕の家はそう厳しくないんですよ」
ルキアはあくびをすると、興味ないと言った顔で幌の窓から森の様子を見る
「......相棒。俺達は何をするんだ?。ユグドラシルの調査って必要なのか?」
「強力な戦遺物が見つかればフィオネの権力を誇示することが出来ます。そうすれば他国からの攻撃を未然に避けられますし、無駄な戦争が起きません」
「......そうか。なるほど、これを考えた奴は天才か」
それまで窓の外を見ていたルキアは急に青年の方を向く
「あはは、ルキアらしいですね」
「どういうことだよ」
「顔にでてますよ。戦争が減れば俺は戦わなくてすむ。仕事が減るじゃないか!って」
「なっ!?。相棒、お前も天才か」
「いえ、ルキアのことですから。それと、いつまでもその相棒って呼ぶの続けなくていいですよ。シドさんに言われたからってきにしなくても。完全にあの人のいたずらですし」
「は!?。おいレイス!、それどういうことだ」
ルキアが目を見開き、青年を見る
「シドさんがルキアをからかうために僕を使ったんですよ」
「じゃあ、お前が俺のガキの頃の事を全部知ってたのは......」
「すみません。シドさんに口止めされてたので」
「......レイス」
「はい」
「これが終わったら話がある。覚悟しとけよ」
「ほどほどにお願いしますよ」
完全に頭に来ているルキアとは対照的に、レイスと呼ばれた青年は静かに微笑むばかりだ
そんなレイスの顔を見ているとルキアも意味がないと分かり、機嫌悪そうに幌の外に目を向ける
(あのジジイ。なにが相棒だ!。人の弱みを握ってんのを良いことにさんざんおちょくりやがって。泣くぞ)
森を飛んでいく妖精が馬車とすれ違う度に、その楽しげな声が幌の中に小さく聞こえてくる
(チッ。どいつもこいつも楽しそうなもんで何よりだな)
森の中間に差し掛かった頃、周りの空気が一変する
「!?。何だ!」
ルキアが思わず驚きの声をあげる
「大丈夫です。ユグドラシルの魔力が広がってきているだけですよ」
「ユグドラシルの魔力だと?。まだユグドラシルまでは300キロ以上あるんだぜ?。そんな広範囲に届くはずがないだろ」
「ユグドラシルはルキアが思っているより強大です。実際に見てみればこれにも納得できます」
「はっ!。どうだかね」
ルキアはレイスの話を笑い飛ばす
(ユグドラシル。面白そうじゃねえか)
「もう寝るわ。疲れた」
「分かりました。着いたら起こしますね」
「おう。よろしく頼む」
「珍しい、ルキアがそんなこというなんて」
「叩き斬るぞコラ」
「これは失礼。つい本音が」
「まあいいや」
ルキアは目を閉じる
(.....けて......ら.....して)
「レイス。何か言ったか?」
「いいえ?」
「あっそう」
(気のせいか)




