街道を行く馬車
2日後、精霊の森への街道
5台の馬車が列を作って道を進んでいく
「.....ぐぅ」
「相変わらずですね。ルキア」
先頭の馬車では、王国を出てからずっと不機嫌なルキアとそれをなだめる青年が幌の中で揺られていた
「あんのクソジジイ、っざけやがって」
「まあまあ、シドさんだってルキアを思って」
「ああん!?」
ルキアが怒声をあげる。いつもダルそうにしている彼とは別人だ
「貴族出身の御曹司は楽でいいよなあ!?。こちとらギャンブルで全財産溶かしたあげく年端もいかねえ5つのガキをたった一人残して逃げやがった親に、盗み働いて孤児院送りにされて、そして今に至る!。分かるか!?お坊ちゃん様よ!。それに昨日だって」
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「ゼェ、ゼェ、ゼェ。ちょっと、ジイさんタン」
言い終わるより早くルキアの脳天目掛けて巨大な剣が振り下ろされる
「この鬼があああ!!」
壁「ネバーダウンフォート」
両手を重ね剣に向けて詠唱すると、剣を受け止める形で青く分厚い壁が張られる
「いいぞ!。見せてみろ」
剣を持つ老騎士、シドはニヤリと笑う
壁と剣がぶつかり激しい衝撃波が狭い庭の雑草を刈り取る
「ぐぐぐ.....」
「はっはっはっ!。どうした?ルキア、体制がなっとらんぞ!」
「っんのクソ野ろ、うわぁっ!?」
壁を押す力に一層重みが増す。ルキアはその勢いに負け、地面に押し倒される
あまりの衝撃に意識が飛びかけるが、それも一瞬の事だ。全身を激しい電流が貫いていく
「ああああ!」
その衝撃で意識は現実に引き戻され、ルキアは緩んでいた剣を握る手に再び力を入れる
「いつまでも調子乗ってんじゃねーー」
その言葉は途切れる。うなじを強く殴られて、思わず剣を取り落としてしまう
ルキアが剣を拾おうと屈むより早く、その顎に銀色の刃が添えられる
「.....チックショオオオオ」
「はっはっはっ!。弱い!弱いぞルキア。お前日頃の修行を怠けすぎだ!」
豪快な笑い声が庭に響く。顎から剣が離れると、ルキアはそのままうつ伏せに倒れる
「それが....ゼェ。自分の....ハァ。子供にする仕打ちか」
「ん?。俺はお前の親ではないだろう?」
「くっ!」
痛いところをつかれ、ルキアは黙ってしまう
「よし。今日の修行はここまでだ。明日からは素振り3500回終わるまで飯抜きだからな」
シドはひとしきりルキアを笑うと、最後にそういい残して家に戻っていく
「鬼!悪魔!地下種族!」
「はっはっはっ!」
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「お前は毎日5時間の魔法のお勉強だけだろうが!。ああああ本当羨ましいわクソッ!」
「ただ椅子に座って魔法の式を書き続けるというのも疲れますよ?」
「ったく。そうかよ」
ルキアはいっそう不機嫌そうにしてそっぽを向く
「.....なあ、相棒」
「何ですか?、ルキア」
「良かったな。念願の世界樹だ」
「ああ、そんな話もしましたね。ええ、思ったよりなんてことなかったです。それもルキアの力あってこそですかね?」
「なっ何だよ急に、気持ち悪いな」
「そうですか?。いつもルキアにはお礼はしているつもりですが?」
「知ってるわ、そんなこと」




