青い勲章
話は現在に移る
2年後
【世界には人知を越えた不思議が溢れる】
【世界は世界樹が支配する】
【古代の記憶は形あるものとして現世に眠る】
【我々は世界に生かされている。いついかなる時もこの教えを忘れるな】
もう何度も聞いた言葉が巨大な広間に響く
ルキアは頭をかきながらその言葉を読み上げる
離れた王座には、肩まである雪のような白い髪の女性が座っている
「相変わらずですね。ルキア」
「そりゃそうっすよ。こちとらたまの休日だっつうのに朝からあんたに呼び出されたってじいさんが騒いで家から叩き出される始末。本当にあんたもひどいもんだよ、女王陛下」
「申し訳ありません。あなたがそういう人なのはわかっているのですが、今回は重要な要件でして」
「そういうのは俺である必要ないだろ。そこで顔真っ赤にして拳震わせてる馬鹿とか、うちのじいさんとか、レイスとか、他にもいくらでもいる」
「そうなのですが。これはあなたへの報告なので」
「......あんたにしちゃ珍しいな。いつもならじいさんに伝えておくはずだろ?」
寝ぼけていたルキアの表情が引き締まる
「何かはしらねえけどよ。仕事は勘弁だぜ?。図書室の資料整理、食堂の掃除、兵士の訓練、あとは.....まあいいや。とにかく内容だけ教えてくれ」
「あなたにこれを」
女性が立ち上がり、ルキアの元にやってくる
「陛下!。そのような者に」
広間にいた騎士の一人が声をあげる
「気にしないで下さい。レスト」
「.....申し訳ありません」
騎士は頭を下げる
女性はルキアに青い勲章を渡す
「....昇格ってことっすか?」
「はい」
「青の騎士。つまりユグドラシルの調査部隊への参加が可能になると」
「あなたの実力を持てば、世界樹に巣食う魔物達も容易く打ち倒せるでしょう」
女性は王座に戻ると、ルキアにそう告げる
「騎士っつうのは不自由なもんだよ全く。あんたの都合の良いように使われてるようなもんだろ。昔が懐かしいなあ」
ルキアは皮肉っぽく呟くが、暫くして、真剣な顔になると、ひざまずく
「このルキア=レイバーク。慎んでお受けいたします」
誓約の言葉を唱えると、彼は立ち上がる
「要件はそれだけか?」
ルキアは口調を元に戻して、女性に問いかける
「はい、以上です。それとルキア、私が何故あなたを呼び出してこの事を伝えたかですが、シドにこの事を伝えて、彼がまたあなたにスパルタ修行をさせるのを心配したからですよ」
早々と帰ろうとし、扉に手をかけていたルキアは一瞬で美しい半円を描いて180度回転すると、直角に頭を下げる
「女王陛下!貴女様の優しさには頭が上がりません。そのご厚意に心より感謝致します!!」
「ふふふ。お礼には及びませんよ。くれぐれも体には気をつけて下さいね」
「はい!。そうさせていただきます!」
ルキアは広間を出る際にも深々と礼をして城を去っていく
「ルキア=レイバーク。本当に面白い子ですね」
「陛下!。本気でそんな事を言っているのですか!?。あのような無礼な者を騎士にするなど、シド様は一体何を考えて」
「まあいいではありませんかレスト。私は彼のような人が好きですよ。誰にも分け隔てなく接する事のできる良い人です」
「陛下....」
騎士はため息をつく
ルキアの去った王城の広間には女王の優しい笑い声が小さく響いていた